リアル似顔絵は描けるけどデフォルメ似顔絵が描けない……
デフォルメするときのコツってないかな?
という人向け【デフォルメのしかたが分からない場合、敢えて太い線で描いてみることで感覚をつかめるようになるかも? 太い線で描くことで不要な線を強制的に省略せざるを得なくなり、自動的にデフォルメすることになる】という記事。
※この記事では「デフォルメ=省略」という意味で使っています。カリカチュアのような「強調して変形する」という意味ではありません。
「写真を見てじっくり模写する"リアル似顔絵"は得意だけど、デフォルメ(省略)のしかたが分からない」という人ってけっこういる。
それってたぶん、「どの線を省略すればいいのか分からない」「省略することに慣れていない」からだと思う。
あれこれ悩まず自動的に線を省略するためには、「太い線で描く」という方法がある。千鳥の大悟さんを作例に、いつも自分がやっているデフォルメの感覚について書いてみる。
「特徴をつかむため」にスケッチ
まず自分は、画像や映像などを参考にして特徴をつかむことだけを目的にスケッチをする。写実的な上手い絵を描こうとか、これを完成させようみたいなことではなくて、「鼻ってこんな感じなんだ」「あ、下まつげ長い」みたいな覚え書き的な練習という感じ。
デフォルメが得意な人はこの時点で線を省略してデフォルメ似顔絵が描けてしまうんだろうけど、自分はそうはできないので、まずじっくりスケッチしながらご本人の顔立ちに忠実に特徴を確認している。
デフォルメ似顔絵にしていく
特徴がつかめたら太い線で拾っていくのだけど、「下書きの線をなぞる」というよりも「これだな、という線を拾う」という感じ。
太い線なので細かい部分が描き込めず、イヤでも線が省略され、デフォルメ絵柄になる。
自分の場合、線の太さの目安は、二重まぶたの線を描けないくらいにしている。目の特徴って描き込もうと思うといくらでも描き込んでしまいがちだから、それを阻止するため。
(自分はこのとき「もっと"らしい"表情にならないかな」と修正したりする。この場合、大悟さんが本当の笑顔じゃなく、目が笑ってないときの笑顔にしてみた。)
塗りはベタ塗りのほうがデフォルメ感が出るかも?
塗りは好みだけど、デフォルメ似顔絵の場合、自分は陰影をつけずにベタ塗りにすることが多い。生々しくならないので。
逆に、「もうちょいリアル寄りにしたい、もうちょいしっかり描き込んだ感がほしい」というときは彩色のとき影を入れると、よくある感じの、似顔絵屋さんが描いているような似顔絵っぽくなる。
もっと太い線で拾うとさらにデフォルメできる
もっとデフォルメできないかな? ということで、試しにさらに太い線で拾ってみる。
これくらい太い線だと、大悟さんの下まつげの線はもう拾えないし、目もアーモンド形なのをさらに省略して楕円に描くしかない。
太い線で描くと「あ、これ省略してもいいな」「ここ描かなくても大丈夫だな」ということに気づきやすいというか、強制的にデフォルメすることになっていく。色も一色のベタ塗りのみにすると、「消しごむハンコにできるくらい」にデフォルメできた。
デフォルメ絵柄が描けない場合、画材を制限してみる
細い線だといくらでも描き込めてしまうし、どうしても細部に目が行きやすい。
絵が得意な人ほど細部に気を取られてつい夢中で描き込んでしまい、全体の印象がぼやけて「ラフのときは似てたのに、完成したらあんまり似てない」みたいになるのではないかと思う。
また好きな対象ほど細部にまで目がいって、描き込みたくなって、"がんばったわりに似てない現象"を引き起こしてしまう。
絵が上手い人ほど、デフォルメ似顔絵となると苦戦する……ということが多いようだ。
(自分は絵がたいして上手くないので、どちらかというとデフォルメ似顔絵のほうがあまり苦がない。)
脳筋的な考え方だけど、制限が加わることで表現が絞れるということってあると思う。
幼稚園のときクレヨンで描いた母の日の似顔絵はけっこう似てたのに、小学生になって先を尖らせたクーピーペンシルを使うようになったらクオリティは上がったけど似顔絵は似なくなった……みたいな記憶がうっすらとある。
精度のいい画材にかまけて、本質を見失ってテクニックに走ろうとしてしまったというか。
できることが増えすぎて、自分の技術が追いつかなくなったというか。
絵に関するスランプがこんな感じの場合は、画材に制限を加えてみるのも良いかもしれません。