
このブログでは「似顔絵を描くコツを知りたい」という人向けに、自分なりの方法論をまとめている。
自分の上達のためにブログを書いているが、それが誰かのヒントになればと思う。
私の考える似顔絵のコツは、3つある。
狩野英孝さんを作例に紹介していく。
写真ではなく「動画」で観察すること
似顔絵が描ける人は、絵が上手いというよりは観察が上手いのだと思っている。
上手く観察するには、写真ではなく動画をおすすめしたい。
いろいろな角度から観察しなければ特徴はつかめない
絵は「よーく観察して描きましょうね」なんて言われるけど、たった一枚の写真をよーく見ても意味がない。情報量が少なすぎる。
例えば明石家さんまさんの顔を観察する際、正面からだけではチャームポイントの前歯がどれくらい出ているのかがつかめない。
エラや耳の形も正面からでは見えないし、鼻の高さや頬骨の高さも分からない。
その点、動画ならさまざまな角度から対象を観察することができ、立体的に骨格や造形を把握することが可能だ。
「正面から描くんだから正面の写真だけ一枚あればいいのでは?」思うかもしれないけど、いざ描いてみると情報量が不十分で、しっくりこないことが多い。
今まで一枚の写真だけを見て似顔絵を描いていて「なんかイマイチ似ないな」と感じていた人は、もっとたくさんの写真を参考にしたり、動画や映像で観察して再トライしてみて欲しい。
動いているときにこそ個性が出る
「実物はすごく可愛いのに、写真だとそうでもない」とか「写真で見るとカッコいいのに実物を見るとそうでもない」みたいな現象を経験したことはないだろうか。
人は動いているときにこそ個性が出る。
写真を撮られるときってどうしても(自分なりの)決め顔をしてしまい、せっかくのその人らしさや個性が薄れてしまいがちなのだ。
動画ならずっと決め顔でいるわけにもいかないので、その人の素が見える。
表情筋も動くので顔の造形もより正確に掴むことができるし、その人らしい表情を捉えやすい。
狩野英孝さんの動画を見ながら似顔絵を描いてみる
動画ならなんでもいいかというと、ぜいたくを言えばそうでもない。
MCもゲストも座ってトークするだけのバラエティ番組なんかは動きが少なく、また照明も固定で顔の立体感が分かりにくいからだ。
今回参考にしたのは、『狩野英孝の行くと死ぬ肝試し』。
屋外(夜)のロケなので照明も固定ではなく、ホラー系コンテンツなので動きも多い。
出演者が地上波よりもいい感じにリラックスしていて素も見えやすい。
動画なら正面顔だけではなく、横顔、後ろ姿、耳の形、毛の生え際などまで観察することができる。
また、その人らしい表情やクセも観察できる。
「この人笑うと頬骨が上がるな」「でも頬骨が上がるほど笑うときは顔を逸らしちゃう。シャイなんだな……」などなど。
自分は妄想が入るくらい観察するので、描いてるうちにその人のことをちょっと好きになってしまう。

「あなたはここがチャーミングです!」と伝える気持ちで
もう一つ似顔絵のコツは、描かれた人が「へえ、自分ってこんなところがチャーミングなのか」と新たに気付いてもらえるような絵を目指すことだと思っている。
まずは相手の自己イメージを察する
相手はどんなふうに描いてもらいたがっているだろうか。
つまりその人は、どんな自己イメージを持っているだろうか。
例えば狩野さんなら、ひょうきんな表情よりおすましな表情を自分らしいと考えているのではないか。
素が出てる顔よりカッコいい決め顔を描いてほしいのではないか。
その自己イメージ通りに描いてあげることが、相手の満足につながる。
相手の自己イメージを敢えて外して描いてみる
でも動画で観察した結果、実際はシャイで人がよく、気さくなおとぼけにいちゃんであり、それこそが狩野さんのチャームポイントだと自分は感じた。
なので、相手の自己イメージを敢えて外して、決め顔でもおすまし顔でもない狩野さんを描くことにする。
「自分では気付いていないかもしれないけど、こういうところがチャームポイントですよ!」と伝えたい。そのために似顔絵を描きたい。
その結果、相手が自分の新たな魅力に気付いたら嬉しいなと思う。
その人の自己イメージとは外れるので、「えー、自分はこんなんじゃないけど」と不満に思われることもあるかもしれない。
でも「私はあなたのここが好き!」と思って描いたなら、ご本人に怒られることはあまりないはず。
自分の絵柄に落とし込む
そして最後のコツは「自分の絵柄に落とし込む」ということ。
自分の絵柄を決めると効率が上がる
絵柄を決めておくと、たくさんの人を描くうちに「こういう鼻は自分の絵柄ではこう描く」みたいなのが決まってくるので、グッと描きやすくなり効率が上がる。
例えばNintendoの「Mii」という、自分の似顔絵を作るやつがあるでしょう。
あれは目や鼻、口などパーツごとにそれぞれバリエーションがあって、そこからチョイスして似顔絵を作るので、絵が苦手でも簡単に短時間で自分の顔が作れる。
そんな感じで自分の絵柄の引き出しにパーツのバリエーションを増やしておくことで、短時間で悩まず描けるようになってくるのだ。
自分の絵柄を認知してもらいやすい
例えば『ワンピース』の登場人物はみんなそれぞれ全然顔が違うのに、尾田栄一郎先生のタッチだと分かる。
自分のタッチや絵柄をつかんでいくことで、「このデザイナーと言えばこの絵柄」と認知されやすいのもメリットだろう。
似顔絵師の中には複数の自分のタッチを持っていて、クライアントの好み、要望に応じてタッチを選んで描く人もいる。
逆に、中途半端になりがちだからと絵柄は一つに絞っている人もいるし、自分のやりやすいスタイルでいいと思う。
絵柄の決め方、例えば私の場合
絵柄を決めると言っても自分の場合は決めようとして決めたわけではなく、長年描いているうち自然に収束した。
自分の絵柄はこんな感じ。
- 目は点で瞳だけ描く
- 色はベタ塗り、フラットに
- 線は一本、強弱をつけない

目は点で、というのは、目を似せて描くのに重要なのは瞳の位置だから。
つり目も垂れ目も、瞳の位置さえ正確に押さえれば似せることができる。
線は重ねず単線で、色もベタ塗りにし、シンプルに、似顔絵と言うよりはデザインやマークに近い感じで描くことを心がけている。

似顔絵はその人のいいところを見つけることができたり、そしてそれを伝えられるツールだと考えている。