【センスとは】たくさんの人に刺さるものを察知し、それを描く力【磨き方】

私なんか生まれつき絵のセンスがないから、もう仕方ないんだよなあ……

絵のセンスってどうやったら磨けるの?

っていうかそもそもセンスって何なんだろう?

と悩んでいる人向け【センスとは何かを具体的に定義してみたら「だったらどうやったらセンスが磨けるのか」という具体的な方法が分かってきた気がした】という記事。

絵のセンスについてググるとたいてい、

  • 結局はインプットが大事!
  • 結局はたくさん描くしかない!
  • 結局、センスとはよく分からない感覚のこと!

みたいな感じになってしまって、得るものがない。

それぞれ全部正しいと思うんだけど、頭で理解するためにはこれだけだとどうにも言葉が足らず「結局は才能ってことでしょ?」「私はそのよく分からない感覚とやらを持っていないから、どうせ生まれつきダメなんだ……」みたいにそこで思考停止してしまう。

自分も絵を描く人間なので、センスというものを強く欲している。そこで、

  • センスって結局なんなの? 具体的にどういうことなの?
  • センスを磨くには具体的に何をどうすればいいの?

ということについて、なるべく理屈で、なるべく具体的に、凡人の自分でも理解できて行動に移せるように、考えてみた。

センスは「神に選ばれし者だけが持つ特別なもの」ではない

一般的に絵を描くことにおいて「センスが良い」というのって、

「天から降ってきたようなインスピレーションによって、無意識で大勢の人を惹きつけるイラストが描けちゃう」

みたいなイメージではないだろうか。

そう、【無意識で、たくさんの人に刺さるものが察知できる】ということ、これがセンスなんだと思う。言葉にすると曖昧になり「神から選ばれし者だけが持つ特別なもの……自分には縁がない……」みたいにぼんやりとしてしまって、それがよくない。

さらに厄介なのは、たいてい、いわゆるセンスがいい当人が無意識でやっているところ。(意識的にやっている人もいる)

だってセンスいい人に「そんなイラスト、どうやって着想を得たんですか!?」って聞いたところで、当人は無意識だから「え? 分からない。適当……」「なんとなくやってたらできた」って言うもんね……。こんなふうに言われてしまうと下々のわれわれには一生コツがわからない。「あー、やっぱりセンスって神から選ばれし人だけが持つ特殊能力なんだな、私なんかとは違う特別な人なんだ……私はどうせ生まれつき"持たざる者"なんだ……」と、どんどん卑屈になってしまう。

別にこれはお高くとまっているわけでも意地悪をしているわけでもなく、意識してやっていないから説明できないだけなのだと思う。

しかし、当然だけど、インスピレーションは空から勝手に降ってくるわけではない。

その人が生まれたときから偶然持っているわけでもない。

インスピレーションなんて、全部その人の経験や知識からしか湧きようがない。

センスのいい、神から選ばれし絵描きみたいに見えるその人も、人生の中でこちらの知らぬ経験や知識をせっせと蓄積していて、そこから無意識にカードを切っているだけの話。

となると、自分にも何かやりようがある気がしてくる。

よし、では知識や経験というのはどうやって積めばいいのか。

センスを磨くために"具体的に"何をするか

くまモンのアートディレクターである水野学氏は、"センスとは物事を最適化する能力"だと言っている。

センスにはまずたくさんの知識が必要で、さらにそれらの知識の中から最適なものを選び出せること、それこそがセンスである。(これは自分の解釈なので、気になる方は読んでみてください)

たとえば茶器の知識が豊富で、季節やシチュエーションによってどんな茶器を使うかを知っていて、たくさんのお茶会を経験していれば、「こういうときにはこの茶器がぴったり」という最適なものを選んで相手の心に響くもてなしができる。センスがいいわってことになる。

逆に、茶器のことも知らず、お茶会に出たこともない人はそうはいかない。最適な茶器で相手をもてなすことは難しいと思う。不作法だけど気持ちはありがたいとか、一生懸命もてなそうとしてくれたことが嬉しいわね、みたいなことはあるかもしれないけど、センスがいいかというとそうではない。

絵を描く人だって「何のインプットもせず何の練習もせずいきなり鉛筆を持っただけですごい絵が描けちゃう」なんてことはなく、今まで生きてきた過程で何らかのインプットとアウトプットを(意識的に、あるいは無意識的に)繰り返してきて、その結果として自分なりの絵が描ける。

絵を描く人の場合に置き換えると、センスというのはこういうことなんじゃないかと思う。

  • たくさんの人に刺さるものが自分の中に蓄積されていて
  • それをこう描いたらいいぞという勘を働かせることができて、
  • それを実際に描くことができる

たくさんの人に刺さるものを、いろいろ見聞きする

まずは"たくさんの人に刺さるもの"を理屈なり肌感覚なりで知らなければならない。切っていくためのカードをせっせと溜めなければ、出しようがない。

たくさんの人に刺さるものというのは、分かりやすい基準で言えばたくさんの人に売れているもの・長いこと売れ続けているもの。

  • 今流行っているもの
  • 人気のもの
  • 定番のもの(ロングセラー)

「流行っているもの」というと拒絶反応を起こす人もいる(自分もそうだった)けど、定番のものや基本をきちんと押さえた上で流行を取り入れれば、そんなにイヤじゃないかもしれない。

茶器の例なら「定番だったら白磁のセットか有田焼のセットかな。でもランチはアジア料理だから、もうひとひねり欲しいな……そうだ、最近流行っているベトナムのバッチャン焼を使おう! これなら料理の雰囲気にもぴったりだ」みたいに、そのときそのときで最適なものを選び出すことができる。

使えるカードが多いというのはそういうことだ。

もてなされた相手はたとえ白磁や有田焼やバッチャン焼を知らなくても「この鮮やかな器、アジア料理にぴったりで素敵! この人ってセンスいいな」と思うのではないだろうか。

話題になっている作品に触れる

絵の場合だったら、映画や漫画、小説、アニメなど、それぞれ定番の人気シリーズ、今まさに大流行している作品、一部でブームが起こっている作品などを観て、知識としてたくわえていくことができる。

自分は長らくこれを「流行ってるものを参考にしろ、真似しろ、取り入れろ、お前もそうなれ」という意味だと誤解して反発を感じていたんだけど、そうではなくて、世の中の平均をつかむために観るということ。カードをたくさんためるほど「こういうものか」というのが見えてくる。

世の中の平均をつかむために観ると言っても別に構える必要はなく、ホイホイ安易に観ればいいだけの話です。

むしろ「何か私が楽しめそうな作品はないかな」「センスを磨けそうな作品はないかな」みたいに探すと「自分の好きフィルター」がかかってしまうので、有無を言わさず新着や人気順で雑に気楽に観ていくほうが自分にとってはよかった。

これが要するに、よく言われる「センスを磨くにはインプットが大切!」論なのだと思う。

pixivのランカーのイラストをチェックしてみる

自分はpixivのランキングを見るのが好きなんだけど、ある程度見続けていくと流行りが移り変わる様子が分かるようになって面白いし楽しい。

目の塗り方、まつげの表現、線の色トレス、よく見るポーズなど、手法がめまぐるしく変わっている。

昔の自分は「そういう絵柄が好きじゃないから!」「ランキングなんて興味ないから!」と拒絶していたから興味を持たず、むしろ敵意を持っていたくらいなんだけど、今はたまに覗いて「この塗り方どうやってるんだろう」「あ、このまつげの表現が共通しているな、自分の絵でやってみよう」みたいなことをやっている。これも気楽に、好奇心でやってみている。

以前に描いた深田恭子さんの似顔絵を今っぽい表現で描いてみたもの

自分の絵の描き方が日々アップデートされ、自分の絵になんらかの新しいエッセンスが残るかもしれないし、残らないかもしれない。

"自分ならどう描くか、どう直すか"

もちろん話題の作品をただ見るだけではなく、"自分だったらどう描くか、どう直すか"ということを意識するとよいそうです。

映像関係の仕事をしている知人は「家でもCMを見ると、自分ならどこを直すか考えて黙り込んじゃって家族に引かれる」と言っていた。

お世話になった文学部の教授も「他人の小説を読んでると、もっと他にいい表現ないかなと頭の中でいろいろ言い換えてみてしまって小説の続きが頭に入ってこなくなる」という症状があった。

他の人のアウトプットや流行の作品を目にして「好き」「嫌い」「良い」「悪い」で振り分けようとすると苦痛になってしまう。

けど「つまらんな、へたくそ!」と思う作品に対して「ここが気に入らないから、自分だったらどう描いてやろうか」「どう描いたら越えられるか」と考えることってできる。

これが「自分だったらこう描くかな? こう描いたらいいのでは?」という勘が養われるということだと思う。

カードをたくさんためていくと「もっとこういうカードが欲しいな、でも無いみたいだから自分で作っちゃおう」と、オリジナルのカードができていき、より自分好みの手札が充実してくる。

「pixivで見たあの塗り方、私の推しでやるとどんな感じになるだろう」とか。

また日々のニュースやペットのしぐさ、Twitterのトレンドワードなどを「自分だったらこれをイラストでどう表現するだろう」と考えてみるとか。

こういうことをいちいち考えていると、「なんか描きたいけど、描くものが思いつかない……」ということも少なくなってきた。

自分が思い描いた通りのものを、実際に描く

さて、いくらたくさんの人に刺さるエッセンスが蓄積されても、それを実際に形にできなければ見てもらえない。

ここで冒頭の「結局はたくさん描くしかないよ!」に行き着く。

ばくぜんと「絵をたくさん描いてセンスを磨こう!」なんて考えたらたいへんだけど、そうではなくて、「たくさんインプットした結果、頭の中に生まれたコレをなんとか形にしたい!!」というモチベーションでたくさん描くといいよ、ということなのだと思う。(絵を描く人なら「たくさんインプットするといてもたってもいられず、自分でも描いてみたくなる」という衝動に駆られた経験があるのでは……)

「センスを磨いた結果、たくさん描きたくなって絵が上手くなる」ということかも

これって「絵が上手い人はもともとセンスがあるんだよ」ではなくて、「いろいろなものを楽しんでいたらいろいろ思いついてしまい、思いついたものをどうにか形にしたくて四苦八苦していたらいつのまにか絵も上手くなった」ということなのでは? 逆の話だったのでは?

センスのいい人に「どうやってセンスを磨いたんですか?」と具体的なことを聞いても、そりゃあ本人には分からないわけだよなと思う。

夢中でいろんなものを追いかけて楽しんでいたら、いつのまにかセンスがピカピカになって、いつのまにか絵も上手くなっていったのだから……。

ということは、誰でもセンスは磨ける

センスがいい人というのは、決して神に選ばれた人でもなければ特殊能力を持った人でもない。

たくさんの作品を見聞きし、たくさんの人にウケてるものを感じ取った上で、その中から生まれる「自分だったらこう描く!」というインスピレーションを実際に形にしている人のことなんじゃないかな……。

つまり、才能はもとより年齢も性別も関係なく、誰でもセンスは磨ける、ということになる。

「センス欲しいけど無理……」とか言う人に限って「自分のセンスを大切にしたいから流行に流されたくないし、定番なんて古臭いものは参考にしたくない」みたいな人って多い気がする。というか、自分がそういう考えだった。

今になって考えてみると、それは違ってたなと感じます。

センスを磨くための秘訣は、絵描き以外に学ぶ

余談として、「センスを身につけるための参考書籍ないかな」と思ったら、絵描きじゃなく別ジャンルの人の話を参考にするほうがいいと感じている。

なぜなら、絵描きはノウハウを言葉で説明するのが苦手な人が多い気がするから。

絵が上手くてセンスがある人は「なんとなくやってたらできるよ」とか「直感でやるといいよ」みたいに言ったりして(もちろんご本人たちに悪気はない)、「そんなこと言われたって凡人の私にはわかんないよ! あーどうせ私はダメですよ!」となってしまい、しょんぼりするだけで終わってしまう。ムダなモヤつきが生じる。

デザイン畑・広告畑の方の本は理屈が通っているので素直に読めて納得しやすかった。(上にも挙げた水野学氏の本が自分には分かりやすかったです)

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