「知り合いから『ちょいちょいっとイラストを描いてよ』と言われた。うーん、簡単に言ってくれるけど、時間も労力もかかるんだけどな……お金払ってくれる気あるのか無いのか不安だなあ」
とモヤモヤしている人向け【角の立たない断り方・お金の話のしかたについて】という記事。
※たいていの人には「イラストを描いてもらうことに対してお金を払う」という感覚がなく、描く側と描いてもらう側の価値観が違うだけだと思います。考え方が違うということを踏まえて対応すれば、モヤモヤすることも少なくなるのではないかと。
知り合いや友人、あとは会社の人などから「あなたイラスト描けるんだよね? だったらちょいちょいっと描いてよ」みたいに言われて困ってしまった……というの、絵を描く人なら経験があると思う。
自分も経験があるけど、中には腹が立つようなこともあった。
今はお仕事としてイラストを描くという経験もして無理なら断る・必要なら料金を提示するということもできるようになったので、自分のよく使う角の立たない対処法をいくつか挙げていく。
知り合いから「(ただで)イラストを描いて」と言われたときの対処法
"お金を払うつもりがない相手"を見極める
その前にまず、お金を払ってくれるつもりがない相手を見極めるポイントについて。
たいていの人は「イラストにお金を払う」という発想がない=たいていの人はお金を払うつもりはない。
そこを押さえておかないと、勝手に期待して勝手にがっかりすることになる。
※すべて自分の経験上の話なので、参考程度に。
「簡単でいいよ」「適当でいいから」←払う気がない(こちらに遺恨が残る)
お金を払うつもりがない人がよく言う言葉が「簡単でいいよ」「適当でいいから」。
考えてみてください。
それ相応の高いお金を出して例えば洋服を作ってもらうとき、「サイズとか適当でいいよ」「そのへんにある生地使ってちゃちゃっと簡単に作ってよ」とは言わない。
「高いお金を払うんだから真剣にオーダーしよう」と思って生地やサイズ、デザインもきちんと打ち合わせをする。
「適当でいいよ」「簡単でいいよ」と言われたら、「この人はお金を払うつもりがないな」と自分は判断・警戒しておくことにしている(ただの価値観のズレなので、くれぐれも腹を立てないように)。
そして断るなり料金について説明するなりしかるべき対応をする。(※詳しくは後述します)
でないと、こちらに「ただで描かされた」という遺恨が残るので。
「なんなら有償でもかまいませんけど」←払う気がない(向こうに遺恨が残る)
最近増えてきたのが、SNSのDMなどで声をかけてきて「なんならお金も払いますけど?」「なんなら有償でもかまわないですけど」。
考えてみてください。
カフェでオーダーするとき「コーヒーをホットで。なんならお金を払ってもいいんですけど?」とは言わない。
「本来はお金を払わなくていいことだとは思いますが、あなたが要求するなら払いますけど?」
こういった場合、こちらが請求したとおりに払っていただけたとしても「本来ただでいいはずなのに、お金を払わされた」という感じであちらに遺恨が残る。
「あんな程度のイラストのくせにお金取られてさー」とかなんかどこかでやなこと言われることもある。(自分はあった。)
こちらの説明不足でもあり価値観のズレに気付けなかったがゆえの事故でもあるので、「なんなら払いますけど?」というワードが出てきた場合は自分は慎重になることにしている。
「好きだから描いて」←払う気がない(人間不信・自己嫌悪が残る)
これがいちばん困るんだけど「あなたの絵が大好きなんです! だからただで描いて」というパターン。SNSからの依頼ってこういうのが多いのではないだろうか。
「あなたの絵が大好き!素敵です!だから絵を描いて欲しい」
たぶん、好意=対価だと考えているのかな? と思う。
「こっちはこんなに好きって言ってるんだから描いてくれていいはず。」ということなのだろうか。(分かりません)
知っておいてほしいのが、あちらに悪気はないということです。悪気もないし、悪意もない。好意しかない。
「私はこの人の絵が好き。描いてもらえれば幸せ。この人は絵を描くのが好き。私に絵を描くことで幸せ。Win-Winじゃん!」
絵を描くのにどれくらい労力や気力がかかるのかを知らなければ、そう考えてしまってもしかたない。まだ学生なのかもしれないし、大人でも対価を意識して働いた経験がない人なのかもしれない。
そこを理解しておかないと、「お金を払ってもらえなかった……きっと絵を褒めてくれたこともただで描かせるための嘘だったんだろう」と人間不信になったり、「私の絵を好きって言ってくれてる人に快く描いてあげられないなんて、自分はなんて嫌なやつなんだ」という自己嫌悪が残ってしまう。
「いくらですか? 他に必要な諸経費はありますか?」←払ってくれる(次にもつながりやすい)
「今、イラストの仕事は請けていますか?」「こういう用途で何点ですが、いくらでお願いできますか?」「ほかに必要な諸経費はありますか?」
こういうふうに言ってきてくれる人は最初から「お金を払って仕事として依頼したい」と考えていることが多い。
お金を払うつもりの人は、早い段階で金額を聞いてくれる。
相場のわからないような、例えば魚市場に行ったとき、「美味しそうなカツオだけど、値段の見当がつかないな……払えなくても困るし……すみませーん、このカツオ一本いくらですか?」とまず値段を聞くでしょう。
そのあと場合によっては「刺身に下ろしてもらう事はできますか? その場合手数料はかかりますか?」と聞くでしょう。
本当に必要なものを責任を持って買うときってそんな感じなはず。
こちらが責任を持って対応し、相手の納得いくものを納品すれば、自然といい評判が流れて次につながることもある。
「ただでもいいから描きたい」と思えないなら受けない
「たぶんお金払ってくれる気ないな」と判断したら、「ただでもいいから描きたい」と思えない限り受けないことにしている。
断り方としては、まずは本心を誠実に伝える。
例えば私は今までこんな感じで気持ちを伝えてきた。(口調は相手によってくだけ具合を変える)
「あなたが満足するような絵を描けないと思うから、依頼されての絵は描きません。」
「あなたのために描くなら、きっちりと打ち合わせやヒアリングをしたいけど時間が取れないでしょう? 中途半端なものを描いたところで『描いてもらったけど不満が残った』と思われたらやだなって気にしちゃうから、誰かの依頼で絵を描くのは私にはまだ荷が重いんだ。」
「いやいやそんなの気にしないってー! あなたの絵大好きだし不満とか絶対ないってー! 絶対使うから! もっと簡単に考えてくれていいからさー、適当でいいからさー」と言ってくる人もいるかもしれないけどそこで「簡単に描けとか適当でいいとかそういうこと言うから私は描きたくないんだっつーの!」とかキレてしまうとめちゃくちゃになってしまうので冷静に。
過去のトラブル・トラウマなどがあれば事情を話して、「あなたを疑っているわけじゃない、過去の事件が私を臆病にさせるの……」という『101回目のプロポーズ』の浅野温子方式で、きちんと相手の情に訴える。
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいけど、それが元であなたと気まずくなってしまうのがやだからさ。こういうの前もあったんだ……『大好きだから描いて!』って言われて描いたのに無かったことにされて、裏垢で晒されてて……だから依頼は受けないことにしたんだ」
「あなたのこと好きだし描きたいけど、前もそうやって描いたとき親しくない人まで『私にも描いて!』って次々きて、断りきれなくてつらかったことがあるんだ。だからごめんね」
誠意を持って全部伝えて、その上で「はあ? ケチ!」と思われるんだったらもうしかたない。
「お金を払ってもらえるなら描きたい」という場合は……
お金を払ってもらえるなら描きたい、けどお金の話を切り出すのが難しい……という人もいるだろう。
そういうときうまく使えるんじゃないかと思うのが『ココナラ 』『SKIMA 』『Skeb』などのコミッションサービス。
ネットで気軽にイラストなどのスキルを売り買いできるサービスだ。
イラストの依頼を断るにせよ、お金を払ってもらって受けるにせよ、
「今イラストの依頼は全部ココナラで受けてるんだ。ココナラから依頼してくれれば対応できるよ!」
の一言で済む。
「お金払ってもらえるの?」とか「料金はいくらだよ」とか「口座番号これ、ここに何日までに振り込んでね」とか、言いにくいお金の話を直接しなくて済む。
お金を払う気がない人は「あ、お金取るんだ、ならいいや」とやめるだろうし、お金払って描いてほしい人はサービスを通して申し込んでくれるだろうし。
仲介サービスが全部お金のやり取りをしてくれて手数料を引いた分をこちらの口座に振り込んでくれるので、相手に個人情報も渡らない。
手数料は取られるけど、直接お金の話をするストレスと天秤にかけて判断してみてください。
上に挙げたメジャーな3つのサービスのうちなら『ココナラ 』か『SKIMA 』がおすすめ。手数料も同じくらい。(※詳しくは確認してください)
※『Skeb』は打ち合わせやリテイク一切禁止という特殊なルールがあるので「どんな絵を描いてほしいか」とか打ち合わせしたい場合には不向き。逆に「詳しい要求に応えるのは難しいから好きに描いて描きっぱなしにしたい」という場合には向いている。
少しずつ、自分でお金の話ができるようになるのがいい
とはいえコミッションサービスの手数料ってバカにならないので、将来イラストの副業をしたいというなら少しずつ自分でお金の話ができるようになるのがいちばんいい。
自分もお金の話が苦手だったけど、フリーランスでイラストやデザインの仕事をさせてもらって少しずつ慣れることができた。
知り合い(友人と知人のあいだくらいの微妙な相手)から「(ただで)イラスト描いてよ」と言われたときも、角が立たないよう説明して断るなり支払いをしてもらうなりができるようになった。
私なりのちょっとしたコツを書いておきます。
すこしあらたまった感じを出して間合いをとると話しやすいかも
「ねえねえイラスト描いてほしいんだけど」
「え、全然いいよ〜!」
みたいに受け答えをしてしまうとお金の話がしにくくなる。
少しあらたまった感じというか、真剣さを出す。ビジネスの間合いに構え直す。
「絵を描くのにスケジュールを確保したいから納期を聞いておきたいんだけど、いつ頃までに必要なの?」
「用途によってデータ形式が変わるんだけど、データ形式は? 分からない? では何に使うイラストなのかと、サイズを教えてもらえる?」
ここで払う気がない人は「やっぱいいわ」となり、払って描いてほしい人だけ真剣に考えて答えてくれるはず。そしたら具体的な料金の話をする。
絵に関しては真剣なんです、という姿勢をきちんと見せることで、相手にも「真剣にとりくんでいるんだな、こっちも舐めてちゃいけなかったな」と思ってもらえる。
あらかじめ料金表を作っておく(基本+オプション料金形式にする)
仕事として受けるとは言っても、知り合いに対して「複雑な背景の場合は追加料金をいただきます」「修正は別料金です」とかってなかなか言いにくいと思う。
あらかじめココナラなどの相場を参考に基本料金・オプション料金ともに料金表を作っておくと、細かいお金の話をしなくて済む。
SNSで仕事の依頼が舞い込むこともある時代。
「仕事かと思ったらただ働きさせられた……」「自分はただで利用されただけだった」とモヤモヤしないために、少しずつお金の話を上手にできるようになると心強いと思います。