右向きの顔を描くと歪む…歪まないアタリの取り方と、歪んだ時の修正方法

右向きの顔を描くと歪んでしまう……

右向きの顔が苦手で上手く描けない!

と悩んでいる人向け、

【右向きの顔でも歪まないためのコツ】

  1. 正しくアタリを取る
  2. 描きにくい方向のカーブを描き慣れる

【歪んでしまったときの修正方法】

  1. 少し直して済むなら移動ツールで
  2. どこが悪いか分からないなら潔く描き直した方が早い

という記事。

自分も長年「顔の向きによって描きにくいことがあるな」と感じてきて、自分なりに改善する方法を考えてみたときの話です。

この記事では、

  • なぜ右向きを描くと歪むのか
  • 歪まずに描く方法について
  • 歪みを直すにはどうすればいいか

この3点について書いています。

なぜ右向きの顔を描くと歪むのか

そもそも右利きの人は左カーブを描きにくいから歪む

「左向きの顔はうまく描けるのに右向きの顔が苦手」「右向きの顔を描くと歪んで変になっちゃう」というお悩みは、右利きの人に多いんじゃないかと思う。(自分も右利きだから分からないのだけど、左利きの人は逆なのかもしれない?)

と言うのは、意識して描いてみると分かるけどそもそも手の関節の構造上、右利きの人は左カーブを描きにくいから。

右カーブは親指の力でスムーズに描ける。でも左カーブを描くときは鉛筆を動かす人差し指や中指に無理な力がかかるし、肩もこってくる。なので、右向きの顔を描くと歪みがちなのは自然なことなのだと思う。手が無理してるのだから。

※ペンの持ち方が普通と違う神絵師ってけっこういるけど、それって人差し指や中指の負荷を減らして全方向にきれいな線を描くためにそうなったんじゃないか説を、自分は推している。(ちなみに私は普通の持ち方の凡才絵描きです)

アタリをきちんと取っていないから歪む

もちろん「左カーブは描きにくいから、ペンの持ち方をヘンテコにすれば歪みを克服できる」というものではなく。

自分の場合、アタリをきちんと取っていないからという理由が九割だったと思っている。

丸書いてシャッシャッと十字を入れるだけの、おまじないみたいなアタリでは何の意味もなかった。

左向きは手の関節の構造上描きやすくて手癖でたくさん描くので、適当な「おまじないアタリ」でも手癖でなんとなく描けてしまう。

けれど右向きは手の関節の構造上描きにくくほとんど描かないため、手癖に頼れない。「おまじないアタリ」では全然アタリの意味を成さない。だから当然、歪む。

では、意味のあるアタリってどんなものなのか。これは自分は少しだけ美術解剖学をかじってみたことでなんとなくつかめた気がしている。

アタリの取り方を変えてみた

円のアタリではなく球のアタリをとるようになって、自分はどちら向きの顔もじゃっかん安定して描きやすくなった気がする。

目の位置、鼻の位置を決めるだけのアタリではなく、頭蓋骨全体をとらえるための補助線としてアタリを取るということ。

これはルーミスの『やさしい人物画』の模写なのだけど、頭蓋骨の骨格を把握するために球の補助線を入れて描かれている。

頭蓋骨の構造やパーツの位置というのは全人類だいたい同じで、アタリを取ることで正しい位置にパーツを収めればどんな向きの顔も歪まずに描けるということになる。

(人種などによって細かい違いはあり、それが人種の描き分けのコツでもあるのだと思う)

美術解剖学の本(自分の場合はルーミスの『やさしい人物画』)を一冊模写してみることで「アタリってこういう意味があったのか!」と感じられたのがよかった。

日本人モデルが多い『人物を描く基本』も良かったです。

こんなふうに頭蓋骨を球でとらえた補助線を入れて描いてみることで、「あ、今まで耳の位置を前に描きすぎてた……」とか「今まで描いてた絵、鼻が長すぎたな」みたいな発見もあり、たくさん自分の絵にアラが見えるようになった。

アタリもシャッシャッじゃなくてゆっくりと丁寧に、補助線を書いているんだと意識しながら描くようになりました。

アタリについてもう少し掘り下げて考えてみた記事

左カーブを描く練習をしてみた

左カーブの曲線は手の関節の構造上少し引っかかりがあって描きにくいけど、ある程度は慣れなので描いていればだんだん自然な左カーブも描けるようになってきた。

自分は、絵を描く前に2、3分、すみっこに円や渦巻きを描く準備運動をしている。

歪んでしまったときの修正方法

デジタルなら左右反転、アナログなら裏から見てみる

右向きの顔を描いていて「なんか変だな」と思ったときは、おなじみの左右反転をするとどこがどう歪んでいるかが浮かび上がってきますよね……。

改めてアタリを取ってみると、どこがどう歪んでいるかはっきりと把握できる。

この絵の場合の歪みはこんな感じ。

  • 鼻の位置が引っ込んでしまっている→もっと前に出す
  • 顔の中心が逸れてシャクレ気味になっている→鼻、口、アゴを中心の位置に整える
  • 耳の位置が下すぎ・前すぎ→もっと上に・後ろに
  • 後頭部がえぐれている→もっと後頭部にボリュームを出す

「なんか変だけどどこがおかしいか分からない」だと直しようがないけど、「どこがどう歪んでいるか」が分かれば修正できる。

※「読者は左右反転なんかしないんだから、描き手も左右反転なんかしなくていい!」という意見(確か、マンガのプロの編集者のかただった)も拝見したけれど、それはたぶん「微細なズレを左右反転してまで重箱の隅をつつくみたいに見つけなくていいよ」ということなんじゃないかと思う。自分で自分の絵に違和感を感じていて、それを直していきたいという場合は反転して直してもいい。はず。

ピンポイントなら移動ツールで修正してもいいのでは

「移動ツールでちょいちょいっと修正なんて絵が死ぬ! 絶対ダメ!」という人もいるかもしれないけど、デジタルで描いていて「ピンポイントで目の位置だけ数ミリ直したい。他は問題ない」みたいなときは移動ツールでもいいのではないかと個人的には思う。

特にシンプルな絵柄だったりIllustratorなどパーツの配置で構成するような絵の場合、移動ツールでちょっと修正する効力って大きい気がする。また仕事の納期や原稿の〆切などがあると、そうそう全部描き直しというわけにもいかないので、このあたりは個人のこだわりに拠る。

ただ、目をずらし鼻をずらし、あれ? あれ? とやっていると、だんだん「おかしいのは分かるのに、どこを直していいか最終的に収拾つかなくなった……」みたいになって混乱し、絵も死にがちになってしまうというのは確かにあるので、頼りすぎず、ほどほどにするように気をつけている。

アナログの場合は、裏からアタリを取って、直したいパーツを消して描き直すしかない。

アタリを取り直して一から描き直す

「いろいろ歪んでいて移動ツールじゃ埒があかない、パーツを移動させすぎて福笑いになっちゃう」みたいな感じなら、改めてアタリをとって一から描き直すほうが早いこともある。

上の例の場合はアタリとのズレが複数あり、頭蓋骨も歪んでいるので一から描き直すほうが早そう。という判断ができる。

一度描いた絵を全部無しにするのは勇気がいることなんだけど、まわりを見ても絵が上手い人ほど惜しまず潔く描き直しているように自分は感じるので、なるべく潔く描き直す判断をしている。

後から歪みを修正するよりも、最初から歪ませず描く

デジタルだとつい「少々歪んだって、左右反転して移動ツールでちょいちょいっと修正すればいいんだよ」と楽なほうに流れがちで、それだといつまで経っても正しい位置にパーツを描くという訓練にならない……。時間も無駄にかかる。

※もしかしたら「デジタルだと上手いのにアナログで描いたら全然ダメ……」みたいな人は、このパターンが多いかもしれない。

そう感じたので、まずは最初から歪ませないように描く描き方を模索してみたという話です。

歪まない描き方
  • どちら向きのカーブもスムーズに描けるよう手慣らししてみた
  • 意味のあるアタリを取るようにしてみた

それでもやっぱり同じ作業を続けていると脳はバグるので、100%歪みが防げるわけではない。そんなときでも、意味のあるアタリを取ることですぐに修正できるようになった。

自分の場合、意味のあるアタリを取るようになってどちら向きの顔も描きやすくなり、結果的に絵を描くスピードが上がったことと、「あー、また歪んでる!」みたいなストレスが減ったことが良かったです。

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