条件の良くないイラストの仕事を断りたいけど、メールでどう伝えればいいか悩んでしまう……
せっかくイラストの仕事をいただいたのに予算が合わない・スケジュールが難しいので今回は受けられない。印象を悪くせず断りたい……
という人向け、【誠実に正直にお断りするためのメールの文面】についての記事。
イラスト業に限らず、フリーランスで仕事をしているとどうしてもできる業務とできない業務が出てくるし、また自分の請けられる量やスケジュールにも限度がある。来る仕事を全部請けていっぱいいっぱいでやっているとクオリティも下がるし、納期も守りにくく自分の心身の健康的にもしんどい……。
自分も無理をしてしんどかったことがあったので、自分のキャパシティを把握した上で断るものはきちんと断るようにしている。(断るようにしたい。)先方に対しても、結果的にそれが誠実な対応になると思う。
とは言え断り方って難しいので、自分もまだ試行錯誤中ではあるのだけど【どんなふうに断ればこちらの気持ちが伝わるか】ということについて備忘録 兼 自戒として書いておく。
※「ビジネスメールの書き方がよく分からなくて、なんて書いたらいいか分からない」という声があったので、「自分だったらこんなふうに書くかな」という簡単な文面も添えて説明してみています。
※イラストの無償依頼を上手にお断りするにはこちらの記事が参考になるかもしれません
お断りする場合に自分が心がけていること
基本的に、お仕事をいただける(作成物に対してお金を払ってもらえる)というのはとてもありがたいこと。でもどうしてもお断りしなければならないという場合、自分はこんなことに気をつけている。
- 声をかけてもらったことへのお礼を伝える
- お断りする心苦しさを伝える
- 簡単でいいので理由を伝える
- またあなたと仕事がしたいという意志を伝える
「そんなの当たり前でしょ」と思うことばかりだけど、メールではきちんと文面にして伝えないと伝わらないので自分の気持ちを意識して伝えています、という話です。マナーとかルールではなく。
声をかけてもらったことへのお礼を伝える
まずは先方がこちらに仕事を頼もうと考えて連絡をしてくれたことへのお礼を自分は伝えたい。なぜなら、声をかけてもらえなかったらこちらは仕事はできないわけだから……。
「ご連絡いただきありがとうございます。」
「お声をかけていただいてありがたく思います。」
これは長くフリーランスで仕事をしてくるにつれ、年々強く感じるようになってきた。
お断りすることへの心苦しさを伝える
また、断ることへの心苦しさや申し訳なさを強く感じていても、それもきちんと伝えないと相手には分からない。
「もったいないお話をいただき、たいへん心苦しいのですが……」
「せっかくすばらしいお話をいただいたのに、申し訳ないのですが……」
以前は「そんなことをわざわざ書くの白々しいのでは……」と感じていた。けれど逆の立場(自分が断られる立場)もたくさん経験してきて、やっぱりクッション的な言葉があるほうがお互いに気持ちがいいなと感じたので自分も意識して書くようになった。申し訳なさや心苦しさをきちんと言葉にすることで、先方にも「むげに断られた」という印象は与えない。
簡単でいいので理由をを伝える
「申し訳ないのですができません」の一点張りでは先方も「こちらに落ち度があるのかな?」みたいな気分になってしまう。
場合によっては、できない理由を簡単に挙げることも必要になる。
「今現在スケジュールが空いておらず、その納期ですと難しい状況です。」
もし理由が家庭の事情や病気などデリケートなものだったりしたら正直に全部言う必要はない。
あとは「スケジュールも合わないし、そのギャラだとこちらの持ち出しになってしまうし、しかもいつも担当者が無茶苦茶なこと言ってきて、データを無くされるし、支払いも遅れるし、信用できない上に割に合わないからイヤだ」みたいに理由が複数ある場合も全部バカ正直に言う必要はなく「多忙なので」という理由がいちばん角が立たないのかなという気がする。
また「スケジュールに空きがない」と伝えることで、次のときにはもう少し余裕を持って声をかけてくれる(ようになることもある。)(かもしれない。)
「またあなたとお仕事をしたいです」という意志を伝える
「今回は仕方なくお断りするけど、このクライアントとはこれからもお仕事をしていきたい」という場合は、率直にその意志を表明するのも大切だと思う。
「次の機会がありましたら、またよろしくお願いいたします。」
「どうかぜひ、またお声掛けいただければと思います。」
先方が「うちとは仕事したくないってことだな、選択肢から外して別の人を探そう」と思うのか、「じゃあ次もまた声をかけてもいいってことだな、選択肢として残しておこう」と思うのかでは、かなり与える印象が違ってしまう。
社交辞令みたいだけど、本当にそう思っているからそう伝える。
スケジュールや予算を交渉してみることもできる
多忙でスケジュールが合わない場合
スケジュールに余裕がなくて「この案件、受けたいけどキツキツだな……」というときってある。
案件によってはだけど、納期がそれほどシビアではなく「担当者がちょっとタイトめに言ってるだけ」みたいなこともあるので、ダメでもともとの気持ちで交渉してみることもある。
「ご提示の納期ですと難しいのですが、◯月◯日まででしたら可能です。いかがでしょうか」
結果として今回はお見送りになったとしても、「やる気があります」という印象を与えることができる。
条件が合わない場合(ギャラが見合わないなど)
またフリーランスにとっては、「そのギャラだと使用ソフトや素材、フォントにかかる経費が厳しい……」ということもある。ギャラをもらってもソフト代とフォント代払ってなくなっちゃった、ではタダ働きになってしまう。
「お金もっとくれ」ってメールでは書きにくいよ……という人は見積書を作ることもできる。
見積書をメールに添付して、
「詳細は添付の見積書をご確認ください」
で済む。
もちろんメールで「お金もっとくれ」を言える人はそれでもよい。というか堂々と言ってよい。ビジネスでは当然のことであって、先方はこちらが気にするほど気にしない。
番外編:友人・知人から頼まれたイラストを断りたい場合
番外編として、知人や友人からイラストを頼まれたけど断りたい、という場合。
結婚式のウェルカムボードとかSNSの似顔絵アイコンとか、「うちの店の看板のデザインしてよ」とか。
「(タダで)ちゃちゃっと描いてよ〜」みたいな軽い感じの頼まれ方をした場合、
「えっ、お仕事くれるんですか!?」
というと流しやすい、というのをTwitterで見かけた。実際に面と向かって話している場合とか、LINEなどで軽く頼まれたような場合にはこれいい! 私も使おう……!
ただ、ちょっと改まったメールで依頼された場合(改まった感じのメールで「タダで描いてくれ」と依頼してくるのがいちばん断りづらい)などはこの手が使いにくいので、自分は逆に少し距離を取った感じでビジネス感を出すようにしている。
「使用ソフト代が持ち出しになってしまうので……」
「納期の目安は? ああ、そのスケジュールだと今まとまった時間が取れないので……」
「納品データの形式とサイズを教えてください。データ形式によってはお請けできないこともありますが……」
みたいな感じで「仕事でやっているんです」というポーズを見せるというか。だいたい「え? 納期っていうか……データ形式って言われても分からないけど……、あ、じゃあまた改めてお願いするかも!」みたいになって立ち消える。
知人や友人から「描いてくれない?」「描いてほしいんだけど」みたいな感じで頼まれている時点で、それはノーギャラ(相手に払う気はない)だと考える。自分の経験上、相手にお金を払う気がある場合は「お金を支払うからお願いしたい」「依頼をしたいんだけどいくらで請けてくれる?」など最初からお金の話をしてくるから。(ただし最初に「お金を払うから」と言っていても最終的には払わない人もいる。)
結婚式のボードなど「ノーギャラでもぜひ描きたい!」と思えない限り、自分はすべて断るようにしている。「あわよくばいくらか払ってもらえるのかな」みたいに甘いことは絶対に考えない。あとで自分がモヤモヤするだけだから。
ビジネスメールに慣れておくと心強い
誠実に自分の都合や気持ちを伝える、これだけの話だと思う。
全部当たり前のことなのだけど、それをうまく「ビジネスメールことば」にできないから断り方に悩んでしまうんだと思う。
自分もフリーランスで仕事を始めた頃、ビジネスメールに慣れていなかったのでやりとりがかなり苦になった。今思うとたくさん恥をかいたけど、なんとか慣れてきたという感じ。
私みたいに恥をかいたり時間をかけたくないという場合は、ビジネスメールのマナー本みたいなものを一冊サラッと読んでおくといいんじゃないかと思う。
マナーがうんぬんというよりは、言い回しのバリエーションが身につくので助かる。
たとえばこの本『メール文章力の基本』はガッチガチのビジネスマナーではなく、分かりやすく伝わりやすいメールの文章術がサラッと読めてよかったです。
「ビジネスメールことば」を使い慣れると、ネットで仕事をするのにもだいぶ心強い。