「ファンアートを本人に送るのって迷惑?」似顔絵描きが考えてみた。

ファンアートや似顔絵って、額装して贈ったりネット上でご本人にリプして送ったら迷惑かな? まわりの他のファンからも、非常識な行為だと思われてしまうかな?

と悩んでいる人向け【こんな理由で喜ばれることもあるかも&こんな理由で困らせる場合もあるかも】ということを、似顔絵描きをしていた経験から考えてみた。

自分は三次元にも推しがいて、SNSで他の人の描いたファンアートを見るのも好き。

でも、「ファンアートって描かれた本人はどう思ってるんだろうね」「自分の顔を描かれて嬉しい人ばかりじゃないのでは?」「私の下手な絵じゃ喜ばれないかも……」みたいな不安の声も目にする。

たぶん、答えはこれしかない。

「もらった人による」。

ではあるんだけど、なかなかそうも割り切れない。

この記事では、【こんな理由で喜ばれることもあるかも&こんな理由で困らせる場合もあるかも】ということについて、仕事で似顔絵を描いていた経験をもとに考えてみた。

ネット上で、デジタルで送る場合

SNSに公式のファンアートタグがあるならそれを使う

SNSに公式のファンアート用ハッシュタグがある場合は、

  • ファンアートを描くことを公式に許諾してくれている
  • ご本人がファンアートを見てくれている(かもしれない)
  • ご本人がファンアートを歓迎してくれている(かもしれない)

ということで、話が早い。

たとえばVtuberやTRPG界隈などでは公式タグがあることも多く、人によるけど、すごく熱心にチェックしてくれる人もいる。中には気に入ったものを動画のサムネにしてくれたり、動画内で紹介してくれる人もいる。

自分が観ていたとあるドラマにも公式のファンアートタグがあって、SNS担当のスタッフさんが巡回していいねをしてくれており、キャストさんたちも「タグのイラスト見てます」と公言してくれていた。

公式のファンアートタグがある場合、そこにたくさん画像が投稿されることはファンの多さの指標になり、コンテンツの盛り上がりを示すことにもなる。

リプで送ったり画像にタグ付けするのは、人による

「SNSの公式タグなんてないよ……でも絶対に本人に届けたい! 絶対に本人に見てほしい!」ということで本人のアカウントにリプで画像を送ったり、画像にタグ付けをしたり、「#ご本人のフルネーム」みたいなハッシュタグを使う人もいる。

これが喜ばれるか迷惑になるかは、ご本人のSNSの使い方にもよるので一概には言えない。リプで送られたり画像にタグ付けされたりすると、メンション欄が煩雑になってしまうからだ。

※そもそも最近のTwitterだと、リプがスパムと判断されたりするとメンション欄に表示されないことも、自分のアカウントではあります。

ただ、ファンとの交流メインでSNSをこぢんまりと活用しているようなかたの場合だと、喜んでくれる人もいるみたいだなーという印象がある(個人の印象にすぎません)。

インディーズのアーティストのかたにハッシュタグでファンアートを送ったことをきっかけに、自主制作音源のジャケットを描くことになった絵描きさんも何人か知っているし、リプやタグ付けがどうなのかは、とにかく「人による」としか言えない。

アナログイラストを紙で(あるいは額装などして)送る場合

意外と多く目にするのが、「アナログで描いて額装して贈りたいけど、これって迷惑じゃないかな?」という悩み。

「保管場所には困る、飾れるかどうかも好みやデザインによる」

自分が似顔絵の仕事をしていた時期に、描く機会が多かったものの一つが結婚式のウェルカムボードだった。

これは、華やかな結婚式場や二次会パーティー会場などで飾る分にはいいけど、家に持って帰るとなるとけっこうな存在感があるし、飾るにも収納するにもちょっと……となるようだった。

なので「のちのち部屋に飾れるような、シンプルなデザインのものを」という要望が多かった。小さめのサイズにプリントして、フレームに入れて飾ってくれたりしているようです。

たとえすごく上手いファンアートや似顔絵でも、それを部屋に飾れるかどうかというとまた別の問題になる。

描かれるがわの本音としては、「思い出として大事にはしたいけど、物理的に保管場所に困る。部屋に飾れるかどうかも、好みやデザインによる。」という感じなのだと思う。

困っても大丈夫な場合もある

置き場所に困っても大丈夫な例外もある。事務所に所属している俳優やアイドル、売れっ子のYouTuberなど、自宅以外の事務所なり仕事場なりがあって十分な保管場所が確保されている場合。

元スーパーアイドルのかたにお会いする機会があり「すみません、昔トチ狂って額装したファンアートを送ったことがあって……あとから正気を取り戻してハッとしたんですけど、ああいうのって困りますよね」と謝ったところ「ぜんぜん! 事務所に全部、大事に保管してありますよ!」とさわやかに答えていただいたことがあった。

どう考えても全部保管は無理だろうしテンプレのやさしいウソなんだろうとは思うけど、とにかく"ご本人の生活のジャマにはなっていなかった"と分かって心底ホッとしたことがある。

(でも自分は懲りたので、もうアナログの額装ファンアートはやめておこうと考えている。)

自分が「意義深いファンアートだな」と感じたケース

自分が以前に見かけて「おおー! これは絵にしないと伝わらない、絵にする意義を強く感じるファンアートだな!」と感じたものがある。

ある俳優さんが長丁場の舞台に出ていて、それを全通したファンが「○日のこの表情がすてきでした」「△日はここの演出が変えられていてグッときました」という細かい感想を絵にして、ご本人に贈っていたものだ。(送る前に見せてもらった。)

表情の違いや身振りの演出の違いなど、絵にしたほうが伝わりやすいことってある。

ご本人にしてみれば自分では自分の舞台を観られないわけだから、あとから自分の演技を思い出すことができる貴重な記録でもあると思う。

おいそれと誰にでも描けるものではないけれど。

ファンアートを「ファンレターの追加要素」と考えてみる

「私は絵が下手だし、こんなファンアートを贈るのは迷惑かも……」とためらってしまう場合、シンプルにファンレターの追加要素・補完要素だと考えてみるといいのかもしれない。

「上手い絵を贈らなきゃ」と思うから迷ってしまうのであって、「ファンレターとして自分の感じたことを伝えたい」と思えば、絵の上手さにこだわる必要もないのではないか。

上に挙げた全通舞台感想アートのように、絵の力も借りないと伝えきれないファンレターってあると思う。

けっこう長い間絵を描いてきているけど、絵に込めた気持ちって自分で思うより意外としっかり相手に届いている気がしています。上手い下手を超えて。

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