イラストを描くときに手が上手く描けないから練習したい。どんな参考書籍を買えばいいかな……?
と迷っている人向け、【手を描く練習に役立つ参考書籍は①手っ取り早く上手く描きたいなら手の「イラストポーズ集」、じっくり練習したいなら「写真のポーズ集」を選ぶようにしています。】という記事。
手はとても複雑で難しいパーツ。
ネットで絵の描き方講座をしている人の中でも「手を描く練習なんかしなくてOK! 上手く見せるために大事なのは表情と塗りだけ!」という考え方もあるみたい。実際いわゆる神絵師と呼ばれる人たちの作品でも、注意深く見ると手が上手いことごまかされて描かれていたり、手を絶妙に隠せる構図になっていたりするものもあって、それでも十分に魅力的な絵はたくさんある。(ごまかすというと言葉は悪いけど、悪いことではないと思う)
でも、神絵師になりたいとかじゃなく、手を描きたいから描きたいんだよ……。
推しを描くときにはその手の表情まで描きたいし、漫画を描いていると手に心情を語らせたいようなコマもある、そこを表しきれなくてもどかしいから手をもっと練習したいんだよ……という自分のような絵描きも、特に趣味で絵を描いている人には多いと思う。
そういう絵描きさん向けの記事です。
20年ほど同人活動をしてきて手を描くことにはずっとうっすら悩んできた自分が、今までどんな参考書籍が良かったかということについて書いていきます。
イラスト集と写真ポーズ集を使い分ける
手の描き方の参考書籍といってもたくさんあって、どれを選んだらいいかが難しい。自分も「張り切って買ってみたけど使いこなせず、途中で挫折してしまった」ということが何度もあった。
そこで学んだのが、イラスト集と写真ポーズ集を使い分けたほうがいいな、ということだった。
なぜ実物や写真を見て描くと挫折したのか
写真ポーズ集を参考に描くのは、初心者〜中級者ではだいぶ骨が折れる。
写真を見ながら、もしくは自分の手を見ながら一生懸命描いても、「どこの線を拾えばいいのか分からない……」とか「指の奥行きを描き表せないよ」とか「このふくらみ、どうやって描いたらいいんだろう?」などと混乱してしまい、結局形にならない……みたいな経験が誰しもあると思う。
三次元を二次元に変換することが絵を描く上でもっとも難しく、一生訓練し続けていく必要があるような部分で、絵を描く上でのキモみたいなもの。いわゆる【デッサン】がこれにあたる。(厳密には写真も二次元だけど)
初心者や中級者が手を描くために毎回これをやっていたのでは、そりゃあ途中で挫折してしまうよ……。自分が挫折したのもこのせいだった。
イラストポーズ集ならば三次元を二次元に変換済み
その点イラストポーズ集というのは、プロの手によってすでに三次元を二次元に(写真をイラストに)変換してくれてある! いちばん困難な部分をすでにやってくれてある!
なので、
- 手っ取り早くつかみたいなら手のイラスト集を
- じっくり練習したいなら写真のポーズ集を
という感じで使い分けるようにしてみたところ、だいぶ無理がなくなった。
自分が使ってみて良かった【手】の描き方の参考書籍
イラストポーズ集ならば『手のしぐさイラストポーズ集』
自分が使ってみて良かったのは『手のしぐさイラストポーズ集』。
自分が使ってみて「良い!」「助かる!」と感じた点は、
- 作例がほどほどにリアル
- 絵柄にクセがない(指が細すぎたり長すぎたりみたいなジャンルの偏りがない)
- 線がシンプルだから見て真似しやすい
- 手だけではなく、上半身の動きも付随している
イラスト集の場合は自分の絵柄との齟齬が発生しがちだけど、これはどんな絵柄の人にとっても参考にしやすいのではないかと感じた。
初心者から中級者まで使えそうで、さらに手だけではなく上半身のポーズ集としても助かる。
複合的な『加々美高浩が全力で教える「手」の描き方』
ちょっとずつ模写して使ってみているのが『加々美高浩が全力で教える「手」の描き方』。
プロのアニメーターが無意識にやっていることを、ていねいに言語化して説明してくれているというのが、この書籍の最大のありがたさだと思う。(たとえばアタリをとるときに、図形アタリ、シルエットアタリ、ブロックアタリの三種類でとる、というとらえ方など)
タイトル通り、全力で教えてもらっている感じの熱量がすごいので一度に受け止めきれず、少しずつ模写して使っている。心強さがある。
これは「描き方本」でもあり「イラスト本(スケッチ本)」でもあるけど、加々美氏が監修した手のポーズ写真もダウンロードできるので「写真ポーズ集」としても複合的に使っている。
続編がもっと全力で来るらしいです(『加々美高浩がもっと全力で教える「スゴい手」の描き方』2022.1.21発売)
突き詰めていくと『人物を描く基本 使える美術解剖図』
ある程度描いていくと「ここの骨どうなってるんだ?」みたいなところまで興味が突き詰められてきて、今度は美術解剖学の要素が欲しくなってくる。
自分が使っているのは『人物を描く基本 使える美術解剖図』(作例は女性の体のみ)。
手首はどこまで曲がるのか、指はどこまで曲がるのか、関節はどう動いて爪の向きはどうなっているのか、など美術解剖学的な方向から"手の描き方"を理解したくなってくるというか。
※この一冊で全身をカバーしているので、手の項目のボリュームとしては物足りないかもしれないです。
美術解剖学とかデッサン本は骨とか筋肉なので、これを選ぶ段階であればもう作例が好みかどうかで選ぶのがいちばん良いような気がする。これは自分の好みです。
デッサン本として『やさしい顔と手の描き方』
『やさしい人物画』でおなじみ、ルーミスの『やさしい顔と手の描き方』。
美術解剖学的な要素のあるデッサン本、という感じで、自分は『やさしい人物画』と合わせてたびたび回帰している。
男性の手、女性の手、子どもの手、お年寄りの手と、色々なバリエーションが掲載されているのが他にあまりない特徴。
どの書籍も模写して使っています
ポーズ写真集や実物(自分の手とか)を見て模写するのは「三次元から二次元の変換」という絵を描くにおいての最大難関がはさまるので、どうしても効率が悪い。難しくて当たり前だし、挫折する。苦手意識があったりするとなおのこと、いやになってしまう。
なので「三次元から二次元への変換」がすんでいるイラストポーズ集を使ってみたら楽しく練習できたという話です。
あとはとにかく「作例が好き」と思える参考書籍を選ぶことがいちばん肝要だった気がする。なぜならどれも模写して使うから。好きだと思えない作例は模写するのがイヤになってしまう。
「この作例うめ〜! すげ〜!」と言いながら模写する時間が自分は楽しいです。だからルーミスは長いこと使い続けています。