仕事としてイラストを描く場合、料金ってどうやって決めたらいいの? これだと高いかな? 安すぎるかな? ぼったくりだと思われないかな?
と迷っている人向け【イラストの料金は①まず相場を調べて②修正回数や差分の追加料金を設定すると、依頼人に分かりやすくて親切かも。】という記事。
イラストの価格の決まり方はこの二通り。
- 相場を調べてみて、それを踏まえて自分で決める
- クライアントから「○○○円でお願いできますか?」と提示される
自分の場合は企業との仕事が多かったので先方から提示されることがほとんどだったけど、SNSやココナラなどで自分のイラストを出品するような場合は相場を見て自分で決めることも。
自分で料金を決める場合は、修正が発生したときの追加料金や差分をつける場合の追加料金も設定しておくと作業する上で負担が少ない。
この記事では、
- イラスト料金の相場の調べかた
- 差分、背景、修正回数などで追加料金の決めかた
について、自分の経験をもとに書いている。
相場の料金を調べて把握する
一言で「イラストの仕事」と言っても、サイズや用途、相手が個人か企業か、あとはデータの形式などによっても相場もまちまち。まずは自分のやりたい業務の相場を知っておかねば決められない。
※イラストの価格にまったく見当がつかない人向け、あくまでも最初の一歩として。
※「自分のやりたい業務が分からない」「イラストの仕事ってどんな業務があるの?」という人はまずそれを決めてからの話になる。
相場はどんどん安くなっていっており、全部合わせようとすると採算が取れないこともある。かといって無視することもできないし、難しい要素だと思う。
参考にした上で自分のキャリアや手間、絵柄、時間単価など考え合わせて、最終的な価格設定は自分で行っていくことになる。
『ココナラ』で相場を調べる
スキル販売ができるココナラ
たとえば「ゆるふわ系の絵柄でSNSアイコンを描く仕事をしたい」なら、カテゴリを「イラスト・漫画>アイコン作成」と絞っていき、さらにスタイルで「アニメ、ゆるふわ・ほんわか、ポップ、デフォルメ・ミニ、リアル、レトロ、シンプル・フラット、線画、アメコミ、スケッチ、ドット絵、その他」と絞り込むことができる。
ためしにスタイルの「ゆるふわ・ほんわか」で絞り込むと、SNSアイコン一枚の価格帯は1,500円〜8,000円といった感じ。同じ「ゆるふわ・ほんわか」でも、相場にもかなり幅がある。
これは絵柄やかかる手間、描く部位の範囲、オプション料金の有無によっても違ってきているのだと思う。(詳しくは後述)
『クラウドソーシング』で相場を調べる
また各種クラウドソーシングサービスのランサーズ
また、希望時間単価というのも設定できるので、自分の時間単価×業務にかかる時間で設定してもいい。(これがある意味、健全な価格の決め方のように思う。相場だけにとらわれるのではなく。)
自分はクラウドソーシングをメインで利用しているわけではないけど、リアルタイムで市場の感じを知りたいというのもあって、大手二つのランサーズ
相場と照らし合わせた上で料金を設定する
相場はだいたい分かったけど、自分のイラストの価格を決めるのは迷ってしまう……という人もいるかもしれない。
「このクリエイターさんはSNSアイコン用の似顔絵一つ30,000円か。でも上手いしこれくらい取れるんだろうな……一方こっちの人は3,000円か。まああんまり上手くないし、それくらいが妥当かもね。うーん、じゃあ、私の絵ってどれくらいの値段をつければいいんだろう? 私の絵ってどれくらい上手いの?」
みたいな感じで。(金額は例えばのものです)
上手い下手を客観的に判断して料金をするのは難しいので、そういうときは相場と合わせてランク(キャリア)とスキルを判断要素にして自分は決めている。
ランクに合わせた料金設定にしてみる
クラウドソーシングではたいていクリエイターランクのシステムがあって、たくさんの依頼をこなしていい評価を得ていればランクが上がる。
例えば『ココナラ』だとこんな感じにランクのバッジが付いている。
クライアントもまずはランクを見て相場を判断するので、自分は「迷ったら」同ランクの人に合わせた価格設定にしている。そこから実績を積んでランクが上がれば、それに応じて料金を上げていくというやり方もできる。
※自負や自信がある人は無理にランクやまわりの価格に合わせる必要はないと思います。「少々高くても絶対にこのクリエイターにお願いしたい!」と思ってもらう自信は自分にはないから、「自分は」まわりの相場を参考にするという話です。
所持スキルに合わせた料金設定にしてみる
「ここでは初出品でまだランクが低いけど、他のところではかなり実績を積んでいる。ソフトもいろいろ使いこなせるからそれに見合った報酬が欲しい」みたいな場合は、所持スキルを判断基準にしてみてもいいと思う。
Adobeソフトやクリップスタジオなど「使用歴が何年で、どれくらい使いこなせているか」というスキルの習熟度も、クラウドソーシングのプロフィールに書かされる。
自分は『ランサーズ』では実績が少なくランクはレギュラーだけど、イラレとフォトショが使えて印刷物データ作成の経験も長いので、イラレとフォトショを使う業務においては経験に見合った料金を設定している。
オプション料金を設定する
基本料金の相場を参考にだいたいの価格帯を決めたら、オプション料金も設定しておく。
オプション料金を設定するメリットとしては、
- 手間に見合った料金を受け取れて無理なく仕事を続けていける
- いちいち料金の説明をしなくてすむのでストレスが少ない
- 見積書のかわりになる
ということ。
たとえば「アイコン一つ10,000円です」だと「なんでそんなに高いの?」と感じるクライアントもいるかもしれないけど「アイコン一つ(顔のみ)の基本料金は3,000円。修正回数が2回以上の場合には1回につき1,000円の追加料金、複雑な背景の場合は追加料金です」みたいなことであれば内訳がはっきりするので、見積書がわりにもなる。
(金額は例えばのものです)
修正料金を決めておく
修正にかかる料金は必ず提示しておくようにしている。仕事でイラストを描く場合、最も精神的にくるのが修正作業だと思うので。
無料で何度も修正をさせられるとその間は別の仕事も請けられなくなるし、クライアントのほうもタダで何度も気軽にホイホイ描き直させるうちに正解がわからなくなってきて「あー……ごめんなさいやっぱいちばん最初のやつでいいや!笑」みたいなことも起こる。これは時間の無駄になるばかりか精神的にかなりよろしくない。
「○回までは無料で修正対応します」
よくある設定方法は「○回までは無料で修正、それ以降は一回につきいくら」みたいなもの。
ヒアリングの行き違いというのはどうしても起こりうるし、自分の場合は、ラフは2回まで、本データは1回だけ無料で修正対応する、みたいに決めている。(業務によって変わる)
もちろんクリエイターの中には「修正回数は無制限、納得いくまで無料で対応します!」みたいな人もいるのだけど、作業の許容量には個人差があるし「自分は」無理なのでしない。
※あと「何度でも無料で対応」と言ってしまうと「無料なんだから修正させなきゃソン!」みたいな気持ちになるのか、何度も直させてやっぱ最初のやつでいいやパターンにも陥りがち。食べ放題と言われると好き放題取りまくってきて結局残すみたいな。
「無制限で修正します」というサービスを売りにする場合、作業に入る前のヒアリングをきちんとすることで修正回数を抑えるというやり方もできる。
修正の規模によってさらに追加料金を取ることも
場合によっては、「大規模な修正は(さらに)追加料金」という設定をしておくこともできる。
たとえばラフでOKが出てデータを作成したのに「やっぱり顔の向きを変えてください」みたいな場合、「最初から描き直し」に近い手間がかかる。オプション料金で対応するのでは割に合わない。
「ラフOK後はポーズや顔の向きは修正・変更できません。もしラフOK後に大規模な修正・変更をする場合、さらに追加料金がかかります」ということもプロフィールやサービス内容に書いておく。
差分料金を決めておく
最近当たり前のようにサービスとしてついてくる【差分】。こちらも追加料金を設定するかどうか悩むところだけど、用途によっても決め方が違ってくる。
差分の種類としては、こういったものがある。
- 表情の差分
- 手の差分
- 小物の差分
- 文字入れの差分
※差分はデジタルなら簡単につけられるので人気のサービスだけど、もしアナログで仕事をしたい人の場合は手間がかかりすぎるので、どうしても差分サービスをつけたいなら労力と相談して決める。
最初から何点かセットにしておく方法
まず、最初から何点か差分をセットにして、それ込みの料金にしておく方法。
VtuberのキャラクターデザインやTRPGのキャラクター絵など差分ありきのものの場合、こういったセット販売はクライアントにとってもお得感がある。(というか、クライアントにしてみれば今や差分セットで当たり前みたいな感覚もあるかも……?)
前もってたくさん差分パーツのパターンを用意しておき(困り顔、笑顔、怒り顔、呆れ顔、ゲス顔などなど)、「この中からよりどり2点、お好きな差分データをお付けします」みたいな販売方法もよく見かける。たしかにこれならまるまる描き下ろしではないのでクリエイターの負担も少なく、お待たせすることなくデータのお渡しが可能になる。
必要な場合だけオプション料金で提供する方法
逆に、SNSアイコンなど基本的に表情差分は要らないものもある。むしろ無理にセットにしても割高感が出てしまうというか。
「表情差分は要らないけど、ゲーム実況用チャンネルのアイコンとお絵描きチャンネル用のアイコンで小物差分が欲しい」というような需要はあるかもしれないので、用途に合わせて差分サービスを考えていくことになる。
その他、必要に応じてオプション料金を決めておく
描く人数によって追加料金
当然だけど、人間を一人描くより複数人描く方が手間がかかる。でもクライアントの中には「せっかくだから複数人描いて。一枚の中に描いてもらうんだから料金は同じでしょ?」みたいな詰め放題感覚の人もいて「複数人だと追加料金になりますけど」と言うと「えー!! そうなの!? 何で!? 話が違うじゃん! ガッカリなんだけどー!」みたいになってしまう。
最初からしっかりと「人数を増やす場合は追加料金」を明言しておく。
追加の人間は別の絵として考えて単純に倍の料金にしてもいいし、まとめ買いだとちょっとお得システムで二人目からは8割の料金」とかでもいい。
背景の有無によって追加料金
これも当然だけど、背景を描くとなるとかかる労力がすごいのだけど「背景は城をドーンと描いてください。資料はコレ!」みたいな人もいる。描いたら描いたで「あーやっぱ背景無しで! 修正1回目は無料なんだよね?」みたいなことになったら泣くに泣けない。
「背景は別の絵だから、別に料金をもらう」と考えて「背景を描く場合は追加料金」、「複雑な背景ならさらに追加料金」などと設定しておく。
複数な背景オプションには人物の倍以上の料金を提示するクリエイターもいる。
あとは、「一つの依頼に時間をとられてしまうので」、「自分の絵柄には合わないので」などと理由を述べた上で「背景は一切描きません」と最初からお断りしているクリエイターもいる。これはとても良い方法だと思います。
印刷用データの有無で追加料金
例えばSNSアイコンを描くのでも、名刺にも印刷できる解像度の高いデータを含めてお渡しするとなると、かかる手間や経費は違ってくる。
もともと印刷用前提で描いているのか、印刷用データのためにわざわざIllustratorやPhotoshopに変換するのかによっても手間は変わるので、自分の環境に応じてオプション料金にする。
権利の譲渡の有無で追加料金
イラストを描いて販売しても、著作権はイラストを描いた人にある。なのでこのままだと、購入者は二次使用ができないことになる。たとえば結婚式のウェルカムボードで描いてもらったイラストをグッズやハガキにもしたい、というようなときには困ってしまう。
こういう場合「権利を譲渡する代わりに追加料金」を取ることもあるし、敢えてオプション料金という形にせずに最初から料金に含めて「グッズやハガキへの二次使用もOKですよ」とする人もいる。ウェルカムボードみたいなものの場合、二次使用を想定しておく方がスマートかもしれない。
※権利を譲渡すると厳密には自分のブログやポートフォリオにもサンプルが載せられなくなってしまうので、「サンプルとして自分のブログに掲載させていただくことがあります」というようにお断りをしておく。
こんな場合は値下げ価格にしてもいいかも
追加料金を設定するのも大切だけど「こういう場合は基本料金から値下げします」という値下げ設定をしておくのも有効だと思う。
- 得意な絵柄は値引きして、そのぶん数をたくさん請ける
- HPにサンプル掲載許可をもらえる場合は値引きする
- キャリアが浅いのでお試し期間は値引きする
これも客引きのために無理をして値引きするとかではなく、自分のできる範囲で。
今の主流のやり方を常にチェックしておきたい
今の時点ではこのような記事を書いたけど、主流のやり方というのはどんどん更新されていくもの。他クリエイターのやり方が見えるサービスに登録しておき、ときどき覗いてみるようにもしている。