「絵が上手い人って、絵が上手い人同士でしか交流しないよね……なんで?」
「底辺絵師やROM専は相手にされてないってこと?」
という人向け、【絵が上手い人は絵が上手い人同士でしか交流しないように見えるけど、けっこうそうでもないのでは。】という記事。
「絵が上手い人って、絵が上手い人としか仲良くしないよな……どうせ私みたいな下手くそは相手にされないですよねー」とちょっと寂しく感じて卑屈になった経験が自分もある。
なぜ絵が上手い人は絵が上手い人としか交流しない(ように見える)のか、というと、答えはシンプルなんだと思う。
- 絵を描く人は絵を描く人同士の方が刺激的で話が合うから。
- もっと言えば、絵が上手い人は絵が上手い人同士の方が刺激的で話が合うから。
逆に言うと、刺激的で話が合うならば絵を描く人同士じゃなくてもいいし、絵が上手い同士じゃなくてもいいってことになるんじゃないか。
絵描きが絵描きと仲良くなる理由ってなんだろう
絵描きがSNSをやる目的はいろいろあるだろうけど、
- 描いた絵を残せる場があるといいな
- (二次創作などの場合)他の人が描く推しを見たい
- 新しい技術や、自分にないセンスに出会いたい
という感じなんじゃないかと思う。少なくとも、自分の場合はそんな感じ。
他の人が描く推しを見たいから
特に自分はモウレツに人の二次創作を見たい・読みたい絵描きなので、そのためにTwitterもpixivもやっているし、常に好みの二次創作を探している。
だから当然、創作しない人よりも創作する人に目が行く。「この人の描く推しがすごく好みだ!」と思えば勇気を出して「好きです!」と言ってみたりする。勇気が出なくて言えなかったりもする。
ROMだろうが絵描きだろうが、このあたりは共通なんじゃないだろうか。
ただ、絵描きの場合、勇気を出して「好きです!」と言えたときに「こちらこそあなたのマンガが好きでいつも読んでるんです!」と言ってもらえる確率がゼロではない。
大して絵が上手くない自分でも、そんな感じで好きな絵描きさんと仲良くなれたことも何度もある。(これはジャンルの規模にもよると思う)
絵描きとROMの違いは、単にポートフォリオを持っているかいないかなのだと思う。
※ポートフォリオ…自分をアピールするために作品をまとめたもの
絵は描いていなくても、最高な小説を書いていたり考察が達者だったりすればそれもポートフォリオになるだろう。二次創作と関係なくても、ご飯の写真がいつもめちゃくちゃ美味しそうだったらそれがポートフォリオになることもあるだろう。
相手と仲良くなるには、まず相手を知らないと話にならない。
お互いの持ってるものを見せ合いっこして、お互いに好きだと思えば仲良くなれる、それだけの話。当然、お互いに好きだと思わなければ仲良くならなかったりもする。
「自分はこういう人間ですよ」というのをアピールする手段をまったく何も持っていない場合だと、知ってもらえるきっかけがないから難しい。もちろん、自分のポートフォリオが相手の好みではなかった場合も発展はしない。お見合いみたいなもので。
刺激を受けてもっと上手くなりたいから
人によっては「他人の描く推しにはさほど興味がない」「むしろ自分の知らないジャンルの上手い人の絵をいっぱい見たい」という人もいるだろう。
自分はそういうタイプではないから分からないけど、たぶん「新しい刺激をたくさん受けたい、インプットしたい、もっと上手くなりたい」ということなんじゃないか。
そのためには、他の人の作品や製作過程、創作に関する考えなどを知りたい。ブラシツールの種類や構図の取り方、色の選び方など、興味は無限にある。
当然、絵を描かない人より絵を描く人に対して強い興味を持つし、「仲良くなりたい」と思う。
もっと言えば、自分が知らないようなことを知っている相手や、自分よりもスキルが上の相手に強い興味を持つ。
アスリートだってアスリート同士でしかできない話があるし、分かり合えないこともあるだろう。
最新のトレーニングの方法とかおすすめのジムの話とかは、アスリートじゃない人とはできない。トレーニングが生活の9割を占めているような状況なら、どうしてもアスリート同士でばかり交流することになる。
これがいわゆる「絵が上手い人は絵が上手い人としか仲良くしない」という現象なんだろう。考えてみればもっともな話だ。
だけどアスリートが一生アスリートとしか交流しないかというとそんなわけはない。
ROMと仲良くなりにくい理由があるとしたらなんだろう
個人サイト時代の20年くらい前、こんなメールを受け取ったことがある。
「私はあなたの絵が好きだと思ったから絵の感想を送ってあげてるのに、お礼の返事が遅い。絵描きは感想もらうと嬉しいと聞いたから送ってあげているのに感謝が足りない。私が絵を描けないからってバカにしているのか。」というような感じだったと思う。
キャパオーバーすぎて、このメールによって傷ついたり嫌な気持ちになったりはしなかった。内容自体も、うすうす普段から感じ取っていたことなので意外でもショックでもなかった。けどそういうことを相手に伝えてしまう思い切りのよさに驚いた。次に「なんかこの人、リアルでやなことあったのかな……こんなメールを送って、あとで恥ずかしくならないかな」と思った。
ちなみに毎回返事のメールは送っていた。文章の量が少ないことやペースが遅いことに腹が立ったようだ。
コンプレックスのせいで間違った思い込みをしている
メールの中で「私が絵を描けないからってバカにしているのか」というふうに書かれていけど、私はそんなこと一切思っていないので、彼女は自分が絵を描けないことに対してコンプレックスがあって、「絵を描けないせいで相手に軽んじられている」と勝手に感じてしまって怒っているということになる。
自分のコンプレックスとひとり相撲をとっているだけ。
あ、これ昔の自分もそうだったな、と気づいた。
絵が上手い人に相手にされていないように感じたとき「きっと私の絵が下手だからバカにしてるんだ! あー絵の上手い人は人間性が悪いね!」と思ってしまって憎しみを募らせていた。
「絵が上手い人は上手い人としか仲良くしない、だから自分は相手にされない」と思ってしまったとき、それは自分のコンプレックスによる勝手な思い込みなのかもしれない。
「感想を送っているんだから感謝してほしい」と言われると感謝しにくい
もし万が一、私が彼女を軽んじてしまったとすれば、彼女が絵を描けないからとかではなくて「感想を送ってあげてるから感謝しろ」みたいなその態度に対してだと思う。
人は当たり前に「誰かの役に立ちたい」「感謝されたい」という社会的な欲求を持っているのだけど、その欲求を満たすために何かをしても不思議と相手には伝わってしまう。押し付けがましさがにじみ出てしまう。
自分も彼女のメールから常々「感謝してほしい」「役に立つと思われたい」みたいなニュアンスを感じていた。そうするとどうしても感謝の気持ちは抱きにくくなってしまい、それが彼女の逆鱗に触れたんだと思う。
趣味で描く場合、受け手の反応があまり気にならない人もいる
あと「絵描きは感想もらうと嬉しいと聞いたから送ってあげている」という部分。
たしかに感想をもらったら嬉しい。もちろん私も嬉しい。
でも、嬉しいの度合いは人にもよるし、「泣いて喜んでます! これで10年はがんばれます!」くらい嬉しい人もいるだろうし、「わー嬉しい、ありがとうございます」くらいの人もいる。(たまに「感想もらっても嬉しくない」という人もいる。)
また、仕事で描くときと趣味で描くときでも違う。
仕事で描くときは受け取り手に喜んでもらうことがいちばん重要なので、感想をもらえるとそれこそ泣くほど嬉しいし10年くらいがんばれそうな気持ちになる。
けれど趣味で描くとき、自分の場合は楽しんで描くこと自体がいちばん重要になる。
「あなたの絵が好きです」「描いてくれてありがとう」とか、そういう反応は副産物というか目的外のものなので、さらっと受け取ってしまうことが多い。これが先の彼女から見ると「一生懸命褒めてるのに喜んでくれない。何様なの!?」ということになったのかもしれない。
過去にROMから傷つけられた経験がある
あとは、過去にROM専の人から心ないことを言われたりして、距離を取っている、という絵描きもいるかもしれない。
自分の場合も前述のようなメールをもらって、食い違いそうな相手とはちょっと距離を置きたくなった時期がある。
あれ以外にも、「なんかいやだな」と感じた経験はある。
立場が違うから食い違うのは仕方ないことだと重々分かっているけれど、でもちょっとおっくうになる、慎重になる、そんな感じ。
ROMの人と絵描きが仲良くなるパターン
ではROMと絵描きの交流は成り立たないのか? というと、そんなことはない。
(たぶん。)
上手い絵描きとそうでもない絵描きは仲良くなれないのか? というと、これもそうでもない。
(実際、自分も上手い人と仲良くなれたことは何度かあるのでこれは本当です。)
絵が上手くなくても刺激になる存在はいる
大して絵が上手くもない自分の話で申し訳ないけど、他人の描く推しを見るときって絵の巧拙って気にしたことないかもしれない。
もちろん上手い人を見たら「上手いなー!!」と思うし、上手いってことはその分表現力も高いので、その絵から摂取できる栄養素も多い気がする。栄養素が多いというか、他の絵からは摂取できない貴重な微量栄養素(オメガ3脂肪酸とかみたいなもの)が含まれているというか。
だけど、たとえオメガ3脂肪酸が含まれていなくても、推しを描いてくれているというだけで美味しいし栄養があるのでモリモリ食べてしまう。
ファンアートや二次創作などの場合は、そこにある愛がいちばんの美味しさや栄養素なんだと思うわけで。
人によってはクセのあるのが美味しいこともあるし、素朴な味が何より好きな人もいる。逆に、人気があっても自分には合わない味もある。これは好みとしか言えない。
好みにあって美味しいなと思ったら刺激を受けるし、仲良くなりたくなる。
たくさんの人に出会えば出会うほど、相性がいい誰かに出会える可能性は上がる。私はオタク歴がかなり長く、ずっと描き続けていたので、こんな大したことない自分でも素敵な人といっぱい出会えて仲良くなれたりした。これは確率の問題です。
絵を描かなくても刺激になる存在はいる
新しい刺激をたくさんインプットしたくてSNSをやってる絵描きもいるだろうけど、新しい刺激が絵とは限らない。
例えば私の場合だと、SNSに載せてる写真が素敵な人、犬を飼っていて犬あるあるで盛り上がれる人、RTするツイートがことごとくツボな人。絵は描かない人たちだけど、そんなの関係なく好きだし刺激を受けるし、「すごいなあ」と思っているし、「もっともっと話してみたいな」と思っている。
そういう尊敬する人たちに絵の感想をもらうと、幸せな気持ちになる。
もちろん相性もある
SNSに写真を載せてても犬を飼っていても、私はその全員に心惹かれるわけではないので、相性もあるのかもしれない。逆に「これ載せてる人はどうしても好きになれない」という相性もあるだろう。
「絵描きは絵描き同士のほうが話が合う」と冒頭で書いたけど、絵描き同士だって気が合わないこともあるし、話が合わないこともある。
なので、誰かと交流が噛み合わないことがあったとしても、他の誰かとはなぜかめちゃくちゃ惹かれ合う、みたいなこともある。
「絵描きなんか(ROM専なんか)みんなこんなやつなんだ」とお互い断定してしまわず、気の合う人に出会うタイミングを楽しみに、ゆるっとSNSをやっていこうじゃないですか。と思います。