二次創作と一次創作ってどう違うの? どっちが難しい?
今から絵を始めるなら、二次創作と一次創作どっちをやるべき?
と疑問に感じたり迷ったりしている人向け、【二次創作と一次創作の違い・共通点について。それぞれにいいところがあります。】という記事。
筆者自身は一次創作から二次創作に入り、今ではどちらもしている。どちらかを持ち上げたり貶めたりではなくて、シンプルに自分が感じたそれぞれのいいところについて。
※【一次創作】というのは【二次創作】の対として作られた言葉だそうで【オリジナル】と同義。この記事では【二次創作】と比較する意味で、敢えて【一次創作】という言葉を使っている。
「絵を描きたいけど、二次創作と一次創作(オリジナル)どっちをすべき? どっちが得? どっちが効率よく上手くなれる?」と迷っている人をたまにお見かけする。
自分が答えるなら「どっちをやってもいいし、どっちもやってもいいじゃないの」。たぶん多くの方もそう考えるのではないだろうか。
それでもなお、こんなお悩みがあるようだ。
どっちにどういうメリットがあるの? 早く絵が上手くなって、早くまわりからも評価されたいんだけど、最短距離はどっちなの? やっぱり二次創作の方が有利? でもオリジナルの方が高尚だと思われるかな?
オリジナルやってもあんまり見てもらえないよね? 本当はオリジナルやりたいけど二次創作でファンを作って人を集めてからの方がいいかな?
私は将来的にプロを目指してるから、オリジナルをやるべきでは? 二次創作なんてやってたらオリジナルが描けなくなって、まわり道になってしまうのでは?
※この記事の最後に、それぞれについての答えを自分なりにまとめています。
こういった悩みはどれもそこに本質がないというか、「絵を描きたい、上手くなりたい」という同じ山に登るのに登山口を迷っているだけなのかもしれない。登りやすいのはどのルート? 早く頂上まで行けるのはどのルート? みたいな感じで。
登山と違って、一つのルートで途中まで登ってもいったんそこでセーブして他の登山口からも登り始めることができるので、安易にいろいろな方向から登っていいのではないか。
この記事では、自分が感じてきた【二次創作と一次創作(オリジナル)の違い・共通点・それぞれのいいところ】について整理してみている。
二次創作を描くことと一次創作を描くことの違い
まず大きな要素として、人に見てもらう場合の環境が違う、ということは言えると思う。
すでにみんなの中に共通認識があるかないか
二次創作だともうすでにキャラや世界の設定が知られているので、描く(書く)方もそこをすっ飛ばして描くことができる。
そして、読むがわもそこをすっ飛ばして、もう知っている世界の話としてサクッと読むことができる。必ず推しキャラが出てくるし、なんならキャプションにあらすじやオチも書かれているので、自分がある程度楽しめることは確約されている。
一次創作の場合は、キャラや世界の設定を自分で一から積み上げて行くという楽しさがある。
読むがわにとっても、自分にハマるかどうか分からない未知の物語に触れていくという喜びがある。個人的な話をすると、自分は20代頃まではそのワクワクが好きで本や映画にたくさん触れていた。一次創作もしていたし、人様の一次創作も楽しく読んでいた。
※のだけど、リアルでしんどいときにフィクションにまで心が揺さぶられるのがしんどく感じることが増え、新しい物語に手が伸びなくなってきた。新しい物語を一から楽しむ気力も減ってきているのかもしれない。それにつれて一次創作もあまり読まなくなった。
見てくれる人の規模が違う
当たり前のことだけど、二次創作だとすでにたくさんいる原作のファンが見てくれるので、そのぶん閲覧数が増えやすい。
ルールやマナーが違う
オリジナルでも投稿するSNSによっては残酷表現や性的表現についてガイドラインがあるので、全く自由というわけではない。
二次創作はさらに、みんなの中の大切な作品やキャラを使って創作するのだから界隈によってルールやマナーが存在することがある。
二次創作を描くことと一次創作を描くことに、共通するもの
創作とは"伝えたいことを絵(文章)で表現する"ということ。
より伝わるような表現を選んだり、そのために自分に足りない技術があれば磨いたりしながら、創作していく。これは、一次創作でも二次創作でも同じようにたいへんなことだと自分は感じている。
「二次創作なら既存絵を見て描けばいいんだから美術解剖学なんて知らなくても大丈夫」というわけにはいかないし、逆に「オリジナルだから美術解剖学なんて知らなくてもオリジナルの人体として描けば骨折絵でもOK」というわけにもいかないので。
「見る人に伝わるもの」を作れるまでにたいへんな労力がかかるのは、一次創作でも二次創作でも、絵でも文章でも音楽でも、すべての創作において同じなんじゃないかなと思う。
二次創作を描くことと一次創作を描くこと、それぞれのメリット
自分の引き出しにないものを描く機会になる二次創作
二次創作をすることで得られるものがあるとしたら、自分の引き出しにないものを描くチャンスになるという点だと思う。
自分の話をすると、オリジナルだけを描いていたころは「線の細い少年少女の学園モノ」みたいなのばかりで、それ以上のものは描けなかったし描こうともしていなかった。
絵を描きたい、絵が上手くなりたい、と思っても、自分の引き出しにないものはなかなか描く機会がない。
「少年少女キャラは得意だけど青年キャラやマッチョなキャラは描き慣れていない、上手く描けないから作品には登場させない」ということも、オリジナルならできる。少年少女しか登場しない話を描けばいいわけだから。けど、ずっとそれ以上のものは描けないままということになってしまう。
けれど数々の作品にハマって二次創作を始めてから、マッチョな青年や老人、中年世代のおじちゃんおばちゃんなど、今まで描いたことのないようなモチーフを描く機会が発生した。
ハマったら、描かざるを得ない。「無理だよ描いたことないし、ここの筋肉とかどうなってんの? ちょっと! 美術解剖学のおすすめ書籍どれ!?」と言いながら体が勝手に描いてしまう。
そうするともうあとは自動で(自動じゃないけど)マッチョなキャラが描けるようになってしまう。
これが二次創作のいいところなんじゃないかな、と自分は考えている。
ゼロから作り出す喜びを感じられる一次創作
自分でもオリジナルを書いたり描いたりした経験から、"ゼロから何かを作り出す"というのはこの上ない喜びだと思っている。
もちろん全くのゼロからではなく、今まで触れてきた作品のエッセンスをもとに創作しているわけだから、自分の性癖集大成とも言えるんじゃなかろうか。
自分の性癖集大成を作り上げることによって、自分の「好き」や「描きたい」がよりいっそうハッキリする。創作にも喜びが増すし、好きなものに対するアンテナの精度が上がれば好きな作品に出会う確率も上がる。
それが一次創作のいいところであり、はかりしれないパワーだと考えている。
「一次創作はゼロから作り出さなきゃいけないからたいへん」とよく言われるけど、何と言ってもそこがいちばん楽しいので、趣味でやっている自分としては"たいへん"というふうに感じたことはない。(プロでやっているひとは"たいへん"が多くあると思います。)
やりたいと感じたらどっちもやればいい
二次創作も一次創作も「楽しいほう、やりたいほうをやればよいじゃないですか! やりたければどっちもやってもいいじゃないですか!」に尽きる。
最後に、上に挙げた疑問に対して、自分の経験をもとに自分なりに答えを出していこうと思う。
早く絵が上手くなって早くいいねがたくさんほしい。二次創作の方が有利?
伝えたいことを表現するまでには労力がかかり、それは二次創作でも一次創作でも同じこと。絵が上手くなるためには、どちらも楽ではない。
ただ、二次創作だと単純に見てもらえる数は増えるので一次創作に比べるといいねは増えるかもしれない。けれど人によっては「流行りのジャンルの二次創作でさえいいねがつかないなんて、私は相当ダメなのでは……?」となる可能性もあり、いいね目当てで考えていると傷が深くなる。
将来プロを目指している自分にとって二次創作は遠回りでは?
果たして、「プロになるために創作をする」のが本当に近道なのだろうか?
二次創作でさまざまな絵柄に触れることで振り幅ができ、自分の絵柄が確立していくこともあると思う。二次創作を夢中で楽しんでいるうちにいつのまにか画力が上がっていた、ということもあるし、それもある意味近道と言える。
本当はオリジナルやりたいけど、二次創作でファンを作って人を集めてからの方がいいかな?
集まった人のほとんどは原作のファンであって二次創作者のファンではないので、一次創作を描いても読んでくれるとは限らない。
結局のところ二次創作だっていいし一次創作だってよくて、とにかく「描くのが楽しくてたまらなくて描きまくっていたら、いつのまにか技術や技法が身についていた」というのが理想なのではないだろうか。
やってみる前から頭でメリットを考えるのではなく、どっちもやってみて楽しいほうに夢中になれば、それが結果的には近道になっているのだと思う。
やってみてどちらも楽しくないということもあるけど、自分の場合、それは単にタイミングではない場合が多かった。
「こんなに好きな作品なのに、二次創作を描く気しないなー。私は二次創作って得意じゃないのかも?」とか思っていても、何か別の作品にすぽーんとハマれば勝手にいっぱい描いてしまう時期って来るし。
「すっかり二次創作ばかり描いて、もうオリジナルなんて描くことないかも」と思っていても、なぜか急にむしょうにオリジナルを描きたくなる時期が来たりもするし。
「描いていて心の底から楽しい気持ちがわきたってくる」という感覚を忘れないようにしたいと思っていて、あの感覚が来ないときは無理をしない。
エアポケットに入ったら、焦らずタイミングを待ちながら、楽しいことをあれこれ探っていくことにしています。