転載はイヤだけど、二次創作のイラストに自分のサインを入れるのって自意識過剰みたいで恥ずかしい。こんな絵なんか誰も転載しないよね……それに人様のキャラを描いて自分のサインを入れるってのもなんかなあ……
とモヤモヤしている人向け【自分の場合、IDなどのサインは「創作物に責任を持つ」という意味で入れています】という記事。
ネット上でイラストを描く人にとって、転載は大きな問題になる。
「100%防ぐことは難しいけど、絵にサインを入れることで転載は減らせますよ」みたいな論もあり、サインを入れている人も増えてきた。
けど、
「だけど、私の下手な絵なんか転載する人いないだろうし……こんな絵にサイン入れてたら自意識過剰だと思われちゃって恥ずかしい……」
「二次創作だし、人様のキャラを描いた絵にサインを入れて権利を主張するのってなんだかなあ……」
みたいに感じてしまって、サインを入れることに対して戸惑ったり、サインを入れている絵描きに対してモヤモヤしたりする人もいるかもしれない。
それは少し誤解な部分もあると思うので、自分が二次創作にもサインを入れている理由について詳しく書いてみた。
※あくまでも、自分の場合です。
「人様のキャラを描いてサイン入れるっておかしくない?」
自分も以前は「二次創作なのに自分のサインを入れるって、盗んだものに名前を書いて権利を主張しているみたいで抵抗があるな」と感じていた。
でもネットで長く絵を描いていると、サインってそういう意味合いではないんだということが分かってきた。
もしどこかで転載されていたときに連絡してもらうため
少なくとも自分や自分のまわりでは、二次創作イラストにもサインを入れているのは「もしどこかに転載されていたとき、自分に教えてもらうため」。
「この創作物に関して何か問題があったときにはこちらまで連絡してください、対応します」という意味で、自分は連絡のつくTwitterやpixivのIDだったりサイトのURLだったりを入れている。(「何か問題があったとき」とはどういうことかについては後述)
TwitterのIDやサイトのURLを入れているからと言って「フォローしてね!」「サイトにも来てね!」「お仕事の依頼はこちらまで!」というアピールでもなければ宣伝なわけではない。
つまり、大げさに言えば「責任を持つために」サインを入れている。
ガイドラインはいつ変わるか分からない
そもそも、どうして二次創作絵を転載されたくないのかというと、「二次創作イラストが自分の管理外に行ってしまうと、何か問題が起こったときに対応できなくて困るから」。
「何か問題があったとき」というのはどういうときか。
今はジャンルの公式から「この範囲なら二次創作してかまいませんよ」というガイドラインが出ていることも多いので、たいていの人はこのガイドラインを確認してその範囲内で二次創作を行っている。
けれど、ある日突然ガイドラインが変わることもあり得る。
たとえば、悪質な業者が違法なコピー商品で荒稼ぎして取締りきれないとか、作品のイメージを著しく損なうような害意のある二次創作が出てきてこのまま捨て置くことができないとか。そんな場合、最悪「今日から二次創作は一律で全面禁止です」みたいにガイドラインが変更される可能性もある。
ガイドラインは変わらなくても、著作権者個人の意向が変わることもある。(たとえば、推しのVtuberさんが「こういう系のファンアート、今までは黙認してきたけどやっぱりやめてほしい」と表明したり、みたいなこと)
もしそういう事態になったら、我々二次創作をする者たちは今までの創作物を速やかにネット上から削除することになるのだけど、無断転載されてしまっていると対処できない。それが困る。
まとめサイトの管理人やまとめ動画のアップロード主や転載ヤーは「おっ、このジャンルのガイドラインが変更されているな、じゃあこのイラストはガイドラインに抵触するおそれがあるから削除せねば! ルールは守らないとね!」とか絶対やってくれないので、ガイドラインに違反した二次創作物が、ネット上に半永久的に残ってしまうことになる。
それが困るので「私の管理が及ばないところに転載するのはやめてください」という旨を主張しておき、連絡のつくサインも入れているということ。
絵描きが「転載しないで」と言っているのはケチやイジワルではなくて、「自分の管理が及ばない範囲に行っちゃうと責任が持てなくなるからやめてください」という意味。
※とは言えやっぱり100%防ぐことは難しいので、今では自分は二次創作をすべて非公開アカウントで行なっています。
「サインなんか入れて自意識過剰と思われたくない……」
「上手い人はサイン入れて自衛するほうがいいかもしれないけど、私の下手な絵なんか誰も盗らないよ……こんな絵にサイン入れて自意識過剰と思われたら恥ずかしい」と感じてしまう絵描きのかたも多いのではないかと思う。
自分も以前はそう感じていたのだけど、数は少ないながらも何度か転載された経験から「転載するかどうか決めるのは転載する人のほうであって、絵描きではない」ということを思い知った。
100万円と100円が落ちていたとして、じゃあ100円が盗まれないかというとそんな保証はない。
前述のように二次創作が転載されることで著作権者やジャンルに迷惑がかかることもあるし、自分一人でヘンに謙遜しててもあまりいいことはないのかもな、という気がしたのだった。
パンツに名前を書くのだって「私のパンツはすっごくいいパンツだから盗む奴がいるかもしれない! 盗まれないように名前を書いておこう!」ではなくて、もし更衣室でうっかり落としたときなどにそっと届けてもらうためだったり、似たようなパンツの取り違えがうっかり起こらないようにするため、だと思う。
サインを入れないことで巻き起こるめんどうのほうが多い気がするので、自分はサインを入れることにしている。
自分の創作物にできる限り責任を持つという意味でサインを入れています
自分もそうだけど、絵描きさんが絵にサイン(IDなど)を入れているのは権利を主張するためではなくできる限り責任を持つため、という理由が大きいと思う。
「転載されるのはイヤだけど、サインなんて自意識過剰っぽくて恥ずかしい」と感じてしまう人は、そう考えると心の抵抗が少なくなるかもしれない。
あと、バーンと入れるのではなく薄いグレーで入れると目立ちにくいなど、自分の主義に合わせていろいろ工夫もできるように思います。