私も絵を描いてみたいけど、絵ってどうやって始めたらいいのかな? どんな道具で何を描いたらいいの?
『好きに描けばいいんだよ』と言われたけど、それが分からないんだよなあ……
と途方に暮れている人向け、【たとえば私のまわりでは、こんな道具で・こんなきっかけで・こんなモチーフから絵を描き始めている人々がいます。】という記事。
自分も子どもの頃から絵を描いていたタイプだから、「絵ってどうやって始めればいいの?」と聞かれても「どうって……好きに描けばいいのでは?」と答えていた。
けど最近になって、「今までまったく絵を描いたことがない人にとっては、本当に見当がつかないのかもしれない。難しく考えて最初の一歩に迷ってしまうのかもしれないよな……」と考えるようになった。
自分のまわりでも大人になってから絵を描き始めた人はたくさんいるので、彼らがどんなふうに描き始めたかについて書いていこうと思う。
きっかけもスタイルも描くものもそれぞれまったくバラバラ。
共通するのは「とりあえず」と「なんとなく」。
何から始めたらいいか本当に分からないことってあると思う
自分が演劇サークルに体験入部したとき「はい声出してー!」と言われて「え? 声を出すって? どうやって? なんて音を発すればいいの? アメンボアカイナとか? え?」とおろおろしたことがある。
まわりはみんな思い思いに「むーーーーんーーー」「はー」「あっあっあっあっあーー」「プルルルルルルル」って発声練習を始めたけど、自分は「え? えっと……あ……」と最後までモジモジしてしまい、心細くなって「ちょっとやっぱり私には無理みたいだな」とそのまま行かなくなってしまった。
「絵を描いてみたい!」と興味を持った人も、もしかしたら自分と同じような気持ちになってあきらめちゃうのかもしれないな、と思い至った。「好きに描けばいいんだよ」と言われて描き始められる人もいれば、そうでない人もきっといるよなあ、と。
そこで、「たとえば、参考までに、私のまわりではこんな感じで始めた人がいるよ」という記事を書くことにしました。
「道具は何を用意したらいいのか」
まず「道具は何を用意したらいいのかな、やっぱり鉛筆? シャープペンシル? 芯は?」みたいに迷ってあれこれ調べてみているかもしれない。
結論から言えば「道具なんて何でもいい」んだけど、迷っている人にとっては「何でもいいっていうのがいちばん困るのよ!」だと思う。
そこで、「こんな絵描きに憧れてる」とか「こんなスタイルで描いてみたいな」というイメージがあれば、遠慮なくそれを真似してやってみる。と楽しいです。
つまり、最初は形から入るのがいいんじゃないか。
という例を挙げていきます。
スケッチブックと柔らかめの鉛筆
「美大生が主人公のマンガを読んで、自分も絵を描いてみたくなった」という知人の話。
絵を描いてみたくなったというよりは、「大きなスケッチブックと4Bの鉛筆を持って公園に行って絵を描く」というのになんとなく憧れたのだそうだ。
ただ、思い立った時期が夏だったので、公園は暑かろうということで行き先はカフェになった。したがってスケッチブックはバッグに入る程度のサイズのものになった。鉛筆へのこだわりもけっこうすぐにひるがえして、早々にシャープペンシルに……と、こうして彼のスタイルは、より自分らしい方向へ固まっていった。
何年も経った今でも、彼は「スケッチブックを持って外に出て絵を描く」という行動を楽しんでいる。
コピー用紙とシャープペンシル
二次創作をしたくて絵を描き始めた友人は、「ジブリのドキュメンタリーを見て、とにかくじゃんじゃん紙に描きまくっている感じをやってみたい」と言ってコピー用紙とシャープペンシルから始めていた。
とりあえずコピー用紙をどさっと500枚買って、書くのは普段使いのシャープペンシル。芯も入っているそのままHB。
しだいに「HBだと描いたところが光って見えにくいことがあるし、芯が硬くて描いていて肩がこる気がする」と言って2BやBを使ってみたりしていた。
アナログお絵描きを20年経て、今は線画から全部CLIP STUDIO PAINTで描いている。
コピー用紙を使って描くのは私も好きです。
クロッキー帳とモレスキンとロットリングのシャープペンシル
これは私なんですけど、大人になって何度目かのスタート時は、クロッキー帳とロットリングのシャープペンシルだった。
幼稚園〜小学生はじゆうちょうにクーピー、中学生〜高校生はケント紙につけペン、マルマンのスケッチブックに6Bの鉛筆。美大受験を経験したあと普通の大学に入って「もう二度と、一生絵を描かない」と決めて過ごして、そのあと同人活動に舞い戻ったときの話。
クロッキー帳とロットリングのシャープペンシルは、高校時代、デザイン科を目指す憧れの先輩が使っていたから。芯は0.35mmの2H(見えづらいです)。
クロッキー帳とロットリングが机の上にあるだけで気分が上がったし、つい手に取って描きたくなった。
絵を描いている自分を好きになれたし、「もうスケッチブックで描いていた頃の自分とは違うんだ」と思えたし、絵柄もデザイン性を意識したくなってシンプルな感じに変わった。
しかし0.35mmの2Hはあまりにも絵を描くのに向いてない気がしたので(そもそも製図用)、そのあと0.5mmのものに買い替えて芯も2Bにした。
さらに、クロッキー帳よりもっと格好つけてみたくなってモレスキンを使ってみたりしたんだけど、描くスペースが狭すぎて緊張してしまい、またクロッキー帳に戻ったりした。
一日1ページの手帳とボールペン
好きなキャラとのコラボをきっかけに初めてほぼ日手帳を買った友人がいて、「手帳なんて初めて買った! 一日1ページも書くことないから、絵でも描いてみようかな」と言って、おまけのボールペンで描いていた。
だから画材はほぼ日手帳とジェットストリームのボールペン。
カバーを見ながらキャラクターを描いたり、友人の似顔絵を描いたり、日記がわりに食べたものの記録を描いたりして、気が向いたら写真に撮ってSNSにアップしていた。
初めて描いたというわりに絵自体にも味があり、本人が新鮮な気持ちで楽しそうに描いているせいか、まわりもだんだんSNSにアップされるのが楽しみになっていた。
そのうち「ボールペンじゃ手直ししたいときに消せない」と気づいて、複雑なものを描くときはシャープペンシルを使うようになって、一年くらい続けて手帳が終わると同時にいったん終わりになった。
iPad ProとApple Pencil
いきなり「デジタルイラストを描いてみたい!」と思い立ってiPad ProとApple Pencilを買った友人もいる。
「iPadはもともと買おうと思ってたし、Apple Pencilもあればあったで便利そうだし」ということで、「デジタルイラストを描きたい」と思ったタイミングとたまたま合ったから買った、らしい。
pixivの『sensei』というオンライン講座の動画を見ながら『pixivスケッチ』で一通り描いてみていて、「今日はセンセイの講座をやらなきゃいけないから忙しいんだ〜(なぜかちょっと得意げ)」と学生ごっこみたいな感じを楽しんでいた。
ひとしきりやってみて気が済んだようでぱったりとやめ(無事卒業したんだろうね)、iPadは今は動画観たりゲームしたり他の用途で重宝しているみたい。
「自分にも絵って描けるんだ! と体験できて面白かった。また絵を描きたくなったらいつでも描けるんだと思うとずっと気分が良い」というようなことを言っていた。ひととおりやり遂げたという満足感・達成感の気持ち良さもあったのかもしれない。
- 憧れのスタイルを「とりあえず」「なんとなく」やってみた
- やってみただけでもワクワク楽しくて満足した
- 自分に合わない部分があればどんどん変更
- 続けてもいいし、やめてもよい
こんな感じで、「道具は必ずこれとこれを用意すべし」「推奨はこれ」というのはなくて、自分がやってみたいスタイルによって無限にバリエーションが考えられる。
だから絵描きの先輩がたはみんな「道具なんて何でもいい、好きにすれば良いんだよ」としか言いようがなくて、そう言うのだと思います。突き放しているとかではないのです。
「何を描いたらいいのか」
「紙と鉛筆はあるけど、何を描けばいいのか……」という疑問もあると思う。
こんなことを聞いたらそれこそ「そんなの、好きなものを好きに描けばいいんだよ」と言われてしまいそうで、なかなか聞けないんだよね……。
自分もちょっと前までは「好きなものを好きに描けばいい」と答えていた。
でも発声練習のときに「たとえばなんて発声すればいいんですか?」と勇気出して聞いて「そんなの好きにすればいい!」と言われたら、きっと私は途方に暮れてしまうよなあ……。「たとえばこんな感じ」っていうのをもうちょっとなんかこう、教えてもらえたらありがたいよなあ……と思ったので。
だから、「たとえばこんなものを描く、とかね。」という例を挙げてみます。
飼っているネコを描く
ネコと暮らしている知人は「毎日そこにいて目に入るから、とりあえずネコでも描く」と言って手帳にネコを描いていた。
「別に、なんとなく、とりあえず」とか言っていたけど、最高では?
毎日手帳に「今日のネコの記録」が積み重なっていくの。
だって、同じような格好で丸まっている絵が続いてもいい。
なぜなら昨日のネコは昨日のネコで、今日のネコは今日のネコだから。自分とネコが生きてる証。描くことに意義がある。
推しを描く
前述の、二次創作がしたくてコピー用紙とシャープペンシルで絵を描き始めた友人の場合、推し(好きなキャラクター)を描くことから始めたということになる。
これは自分もそうだったけど、小学生のとき高橋留美子先生が大好きで、一時期単行本の表紙の絵やマンガの1ページを丸ごと模写したりしていた。マンガ1ページ丸ごとって今思えばよくやったなと思うけど、当時どんな気持ちで描いていたのかは記憶にない。ただ夢中だったのでしょう。
推しというのはアニメや漫画だけでなく実在の人物でもいい。俳優さんでもいいし芸人さんでもいいしミュージシャンでもいいし、会社や学校にいる人でもいいし。
他にも、「これ大好きなんだ!」というものなら動物でも食べ物でも神社でも推し。
描いてて楽しくなったらそれは推し。
推しを描くってすごいパワーが湧いてきてしまうので、そこからお絵描きに対してギアチェンジが起こったりします。(のめりこんだり、本格的に練習始めちゃったり、上達したりする)
日記がわりに描く
ほぼ日手帳に描いていた友人の場合は、描く絵も日記的な要素が強かった。
モチーフ(絵の題材)は食べたものや買ったもの、街で見かけた変なものなど。
自転車の鍵が折れたとか、友人の頭にこういう寝癖がついていたとか、スーパーの店員さんがこんな姿勢で品出ししてたとか。
いかにもな「作品」みたいにはならないけど、こういう覚え書きみたいなのも絵の楽しさ。日常のクスッとなる出来事を描いた絵って、見るがわにとっても身近で楽しい。
「特に描きたいものがない」という人の場合、日記的に考えると気軽に描けると思います。
似顔絵を描く
私は似顔絵を描くのがとても好きで、ここはそもそも似顔絵についてのブログなんだけど、似顔絵を描くのも楽しいですよ。
「絵を描き始めたばかりでそんなすぐに似顔絵なんて無理!」と思うかもしれないけど、似顔絵ってそんな大それたものではない。
まるとぼうでもなんとなく似顔絵は描けるし、またそれくらいのゆるい似顔絵は描いていて楽しい。似顔絵を描いているとその人のことがもっと好きになれるのもいい。人に見せるとけっこう面白がってもらえるのもいい。
「描きたいものを描くべし!」「好きなものを好きに描こう!」と言われても、描きたいものがハッキリとある人ばかりじゃない。私も時期によってすごくムラがあります。
「これが描きたい!」というものがなくたって、目の前のものや日常のできごとを「とりあえず」「なんとなく」てきとうに描いてみることだってじゅうぶんに楽しい。
- 「とりあえず」目の前にあるこれ描いてみるか
- 人物に限らず好きなもの……人物描くなら似顔絵も楽しい
- 「描きたいものないよ」という場合は日記感覚で
「とりあえず」と「なんとなく」で形から入ってOKなのです
「とりあえず」「なんとなく」って最高だよなと思いました。
なんとなくスケッチブックを持って歩いてみたかった、とか、ネコがそこにいるからとりあえず、とか……。すごくいい。
これから絵をずっと描いていって、もし「もっと上手くなりたい!」と思えば、楽しいをちょっと超えて、努力とか熱意とかが必要になるのかもしれない。
でもそこまで行かなくてもいいし、楽しいだけでもいいし、飽きたらいつやめてもいい。
一年の手帳が終わったから、ひとしきり描いたら気が済んだから、実家を出て目の前からネコがいなくなったから。そんな理由でぱったりやめても、また何かのきっかけで描くかもしれないし。描きたくなったらまたいつでも描けるので。
とりあえず、なんとなくで気軽に描き始めて、気軽にやめる。
そんな感じがちょうどいいのかなと思います。
ちょっとだけのつもりが、意外と続いたりもします。