お絵描きが苦手な子どもには、どうやって絵の練習をさせたらいいのか

「子どもが、絵が苦手で悩んでいる。どうやって練習させたらいいのかな……?」

「子どもに、絵の苦手意識を持たせたくない。おすすめの練習方法はある?」

と悩んでいる親御さん向けに、【私が小学校の先生だった頃、絵の授業で心がけていたこと】について書いていく。

小学校では1年生を受け持っていたのだけど、6歳程度ですでにもう「絵が得意」または「絵が苦手」という意識は芽生え始めているように感じた。自分自身を振り返っても、幼稚園ですでに「私は絵が得意」という意識を持っていた。

それはまわりの大人の些細な一言で決まってしまったりする。

子どもの頃に先生の一言で「自分は絵が下手だ、苦手なんだ」という意識が植え付けられてしまい、大人になってもなかなか苦手意識が払拭できなくていまだにコンプレックスになっている……という人もいるだろう。

逆に、私自身は小さい頃に大人たちから褒めてもらって上手いこと乗せられたために「自分は絵が得意だ」という思い込みを持ったまま生きてきて、途中でちょっと自信を失うこともあったけど結局デザインやイラストの仕事をするようになった。根底にある「私は絵が得意なんだ、私は絵を描けるんだ」という成功体験に支えられたのだと思う。

得意不得意って、子どもの頃に植え付けられた根拠のない思い込みによるものが大きい。

だったら、せっかくなら子どもには「私はお絵描きが得意だ! 楽しい!」という体験をさせてあげられるといいよなあ……。

そのためには、どういうことを心がけるのがいいのだろう。

※あくまでも私の経験上、私がこう考えた・感じたという話です。

お絵描きが苦手な子どもには、どうやって絵の練習をさせたらいいの?

「うちの子、どうして絵を描かないの?」

「うちの子、スケッチブックや色鉛筆を買ってあげても全然絵を描かないんだけど。絵が苦手なのかな……? どうやったら描いてくれるかな? どうやったら得意になるだろう?」と悩んでいる親御さん、けっこういらっしゃる。でもそれ、ちょっと誤解なのかもしれない。

絵を描いたことがない子どもは、そもそも「自分に絵が描ける」という発想がないだけ、ということも多い。

自分の姪(当時7歳)がそうだった。家の中で遊ぶより外で体を動かすのが好きな子で、お絵描きも読書も一切しない。勉強も好きじゃない。(両親もそんなタイプで、そのかわりいろいろなスポーツをさせていた。)

叔母の私と二人でお絵描きをしていると、私にばかり「あれ描いて、これ描いて」とリクエストをして、自分では描かない。

「外遊びが好きな子はそんなもんなんだろう。陽キャって子どもの頃から陽キャなんだな。いたいた、こうやって人にばっかり描かせる子……」と陰キャの私はちょっとうんざりしてきて「一緒に描こうよー」と言ってみた。

そしたら姪は、

「え? だって私は描けないもん(まっすぐな瞳)」。

これは別に苦手意識でサボっているとかズルしているとかではなく、本気で「自分には絵が描けない」と思い込んでいるんだな、と、そのとき気づいた。

この根拠のない思い込みを抱えたまま年齢を重ねて、図工や美術の時間がユウウツになってしまうとかだとつまらないな……なんとかうまいことその根拠のない思い込みを払拭できたら、そのほうがいい。

人生において「苦手なもの」は少ないほうが生きやすいと思うからだ。

トレースして描く経験をさせてみる

そこで自分は「あ、そうだ! マリオを写して描こうっと」と、マリオの下敷きに紙を乗せてトレースして見せることにした。興味が湧いたらしい姪は真似をしてトレースし、「すごい! マリオが描けた!」と大興奮していた。

心がけたのは、「なぞって描いてみなさい」と指示するのではなくて、大人が勝手に楽しんでみせること

「すごい、私にも絵が描けるなんて思わなかった……絵って描けるんだ……」としみじみ言っていた姪の言葉が忘れられない。

やっぱり「絵は自分が描くものじゃなくて、誰か他の描ける人に描いてもらうもの」みたいな謎の思い込みがあったみたい。

その後はピーチ姫やアリエルをトレースせずに描こうと挑戦していた。たぶん無意識のうちに「もし自分が絵を描ければお姫様の絵を描いてみたい」という気持ちがあったんだと思う。

まあ最初からピーチ姫やアリエルを上手く描けるわけがなかったんだけど、「絵って、私にも描けるんだ!」という新発見の事実は揺らがないようだった。

「描けない」ではなく「ピーチ姫は難しいから今はまだ描けない」と言うようになったし、私に「描いて」とも言わなくなった。

大人から見れば「トレースなんて絵が描けたことにならないじゃん」「ズルしないで最初から自力で描くべき」と思うかもしれない。

でもトレースって逆上がりの補助板みたいなもので、体の使い方のコツを感じるための最初の一歩になり得るんだな、と、姪を見ていて感じた。

絵も逆上がりも「できた!」という感覚や喜び、成功体験がいちばん大事なんじゃないだろうか。

ズルしないで(補助板なしで)最初から自力で逆上がりの練習を3時間させても、「やっぱりできない、自分はこれが苦手だ、できないんだ」という疲労と挫折感と手のマメしか残らない。

だいたいの場合、ここを履き違えてしまって取り返しのつかないことになるケースが多いように思う。

※もちろん、トレースしたものを自分で描いたと言い張ることの恥ずかしさなどについては別途認識してもらう必要はある。

大人が描いていると真似をしたくなる

あとはまわりの大人が絵を描いていることで興味を持ったり真似して描いてみたくなる、というのはあると思う。

だって両親とも絵を描かない場合、「自分で絵を描く」という発想自体がそもそも生まれない。

姪の場合も両親ともに絵を描かない家庭だったから、生まれて初めて絵を描ける人間である私(叔母)に出会ったことで初めて絵に興味をもって、絵を描く楽しみを知ったわけだ。

子どものお絵描き能力、どうやって伸ばしてあげたらいいのか

誰かまわりに絵を描ける大人がいるならば、まずは大人が勝手にお絵描きを楽しんでみせるのって効果大だと思う。6歳、7歳くらいまでだと、大人が楽しそうにやっていれば素直に興味を持つ。(男女差や個人差はあるのかも?)

ただ、「そんなこと言われても、私も絵が苦手だしな……でも子どもにはこんな苦しみを味わってほしくないんだ」というなら、この機会に自分も絵を始めてみるとか。

なぞって練習できるようなドリル教材もあるので、親がそんなのやっていたら子どもも「なにそれ! 自分もやりたい!」とならないかしら。

子どもが絵に興味を持つようであれば、まだ新しいサービスで『ATAM ACADEMY』というオンラインのキッズ向けイラスト教室もある。

(※小学生コース中高生コース大人コースそれぞれ無料体験あり)

このイラスト教室の最大の特徴は、絵を描くだけでなく、作品として販売するところまで体験させてくれるという点。絵の上達だけを目的とするのではなく、子どものうちに「社会への参画」を体験することで将来の生き方の幅を広げよう、というコンセプトのスクールだそうだ。

私自身「絵を描くのが好き」から「絵を仕事にする」までに何十年もかかってしまい挫折もひどかったので、子どものうちに「仕事として絵を描く」という経験ができるのはすごくいいんじゃないかと思う。

「絵を描くのが好き」の芽を摘まないために

好きなもの、興味のあるものを描かせる

受け持っていた小1のクラスに一人、絵を描くのが大好きで、休み時間も外へ行かずせっせと絵を描いている男の子がいた。

本当は長い休みには外遊びが原則だったんだけど、自分も外で遊ぶよりお絵描きが好きな子どもだったので、彼が教室に残っていても口を出さずそっと目こぼしをしていた。

彼はとにかくずっと好きな子ども向けアニメの絵を描いていて、「よく飽きないな」とこっちが感心するほど。

その中でも好きなキャラは固定しており、一人のキャラだけをひたすら描いていた。

そのキャラのことはお手本を見なくてもスラスラ描くことができて、それが「僕は絵を描くのが好きで、得意なんだ」という意識の強い裏付けになっているように思えた。

あるとき他の先生が「すごーい、上手いじゃん、もっと他のキャラは描けないの?」と口を出して、彼の手が止まってしまったことがある。その先生も悪気はなく、「これだけ描ければもっと他のキャラも描けるだろうに」とか「もっといろいろ描けば画力が伸びそう」と考えたんだと思う。

でも大人が口を出してしまうと、大人に乗せられて描いてみたら別のものは描けなかった……とせっかくのいい思い込みが失われてしまう。

「せっかくこの子は絵が得意なんだから、いろいろなものを描けばいいのに」「もっと絵の能力を伸ばしてあげたい」と大人はウズウズすると思うけど、それは大きなお世話 描きたいもの、好きなものを描かせてあげるだけで十分だと思う。特に、まだ小学生のうちは。

自分は小学生とともに学んでみて「大人ができることなんてない」というのを痛感した。

できることと言えば、

  • 子どもの前で自分が楽しそうに絵を描いてみせること
  • 子どもの「自分は絵が得意だ」の芽を摘まないこと

興味を持つきっかけだけは作って、あとは好きなものを好きなように思いきり描かせてあげる。

他人と比べない・他人を引き合いに出さない

また大事なのは、他の人と比べないことだと思う。これは気をつけているつもりでもついやってしまいがち。よけいなことを言ってしまいがち。

たとえば図工の時間に教諭が「ほらみんな見て、◯◯さんの絵は上手いですよ! お手本にしましょう」と言ってしまうと、子どもたちが「それが正解なんだ」「そういうふうに描けばほめられるんだ」または「ほめられた○○ちゃんは絵が上手い、ほめられなかった私は絵が下手」と思ってしまう。

比べて言っているつもりはなくても、ばっちり比べて優劣をつけてしまっている。

褒められたほうの子どもにしてみても、「私の絵って上手いのかな? 下手なのかな?」ということにとらわれて、毎回ほめてもらわなければ自信が持てなくなる。

ただ他の人の作品から学べることもたくさんあるので、他人の絵をシャットアウトしろということではない。

他人の絵を引き合いに出すなら、描いた人間や作品を上手い下手でほめるのではなく、作品の中の"表現方法"に対して「ここが面白いと思った」「ここがすごいと思った」と一人の鑑賞者としての感想を自分は述べるようにしていた。

「ツノが大きく描いてあって、おおー大迫力! とゾクっときた!」とか「ここよく見るといろんな色が混ざってる! 離れて見ると複雑な色に見えてすごい!」とか。実際子どもの描く絵は驚きに満ちていてすごいところがたくさん見つかるので、おべんちゃらなどではなく素でリアクションしてしまっていた。

そうすると子どもたちも上手い下手ではなく素直にその"表現方法"に目を向け、真似したいと思えば取り入れたり、自分なりに工夫してさらなる独自の表現を生み出してくる。集団で絵を描くことの良さっていうのはこれだと思う。

過剰にほめる必要はない気がする(私の考えです)

「ほめて伸ばす」みたいな考え方ってあるけど、私自身は過剰にほめる必要はないように感じている。

上の例も「ほめている」というよりも「すごいところを見つけて共有している」だけ。

姪が初めてマリオを写して描いたときも、姪自身が一人で深く感動していたので、私が下手にほめる必要がなかった。ただ姪が「私にも絵が描けた!」と興奮している隣で「だねー」と自分の絵を描き続けていた。同い年の友達みたいな感覚で。(心の中では私もガッツポーズをしていたけど。)

一人のキャラだけを描き続けていた小1の男の子も、大人にほめられようとして描いていたわけではなかった。「先生も描く?」と言ってくれて、一緒にただ絵を描いていただけだった。

自分の中の喜びや「描かずにはいられない」という気持ちがあればほめられなくても描く。

逆に大人が変にチヤホヤすることで「ほめられるために描く」みたいになってしまうと、「ほめられなければ描く意味がない」になってしまう。これはかなりよろしくないループ。

子どもが絵を描き続けるために必要なのは、「大人が興味をもって自分を見守ってくれている」という安心感なのではないか。

絵が苦手な子どもだけでなく、大人にも応用できる

正直、絵なんか描けなくても別に全然生きていける。

ただ「私は絵が苦手だから」「絵は描けないから」と思い込んでしまうと、背負わなくてもいい苦手意識を背負って生きていくことになる。

自分は歌が苦手で、歌を歌わされるような局面ではいつも「あー無理無理! 苦手だから! 苦手だから!」と逃げ回って、たびたび、すごくムダな、イヤ〜な気持ちを味わった記憶がある。

そういうムダな苦手意識ってただの損だし、できれば得意とは言わないまでも苦手意識なんてないほうがいい。どの子どもも、なるべく苦手の少ない人生が送れるといいよなと思うのだ。

私の場合は相手が6〜7歳の子どもだったけど、その前後の年齢でも応用できる考え方なんじゃないかと思います。もちろん大人でも。

上に挙げた『ATAM ACADEMY』には小学生コース中高生コース大人コースがあって、どの段階からでもイラストやデザインを学ぶことができます。

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