絵が上手くなるためには「絵の描き方」を知ること…「絵の描き方」とは?

『絵が上手くなるためには絵の描き方を知ること』とか言うけど、じゃあ『絵の描き方』ってどういうこと?

という人向け【絵を描くというのは三次元(現実)を二次元(紙の上)に写しとることであり、そのコツを知ることが『絵の描き方』を知るということなのではないか?】と考えてみた記事。

あくまでも筆者の場合であり、「そういう考えもあるかもね」程度の話です。

「絵の描き方」とは、三次元(現実)を二次元(紙の上)に写しとるテクニック

絵を描くというのはすべて、

三次元(現実)をデフォルメして二次元(紙の上)に写しとること

であると筆者は考えている。

※どんなにリアルな絵でも、三次元を二次元にするときにはなんらかのデフォルメ(変形)が行われている。精密に描き写しているデッサンでも、なんらかのデフォルメはしている。ギャグっぽい絵柄をデフォルメと言ったりするけど、それは狭義のデフォルメ。

つまり、しかるべきデフォルメ(変形)のしかたを体得することで絵が描けるようになるのだけど、そこには当然、たくさんのテクニックが必要になる。

これは誰もが最初から簡単にできることではないため、絵が上手い人と絵が上手くない人、またはまったく絵が描けない人と分かれてしまう。

「絵の描き方」を知るというのは、その「デフォルメのテクニック」を知るということなのだと思う。

※「私の考え方を、私の言葉でまとめるとこうなった」という話です。

「デフォルメのテクニック」とは、数学の公式みたいなもの

絵を描く上でデフォルメの「定石」みたいなものがある。

たとえば人の鼻を描くのに「く」みたいに描けばそれっぽく見える、みたいなのは、マンガの歴史の中で生み出された「定石」であり「デフォルメのテクニック」だと思う。

こういったある程度決まった描き方というか一般的な描き方というか「こう描いておけばそれっぽく見える」みたいな、言ってみれば公式みたいなものを丸覚えしておけば、とりあえずそれっぽい絵は描ける。

こう‐しき【公式】

1、おおやけに定められた形式。

2、数や式の間に成り立つ関係を、数学上の記号を用いて表示した式。

『公式』-デジタル大辞泉(小学館)

※ここで言う「公式」は2の意味です。

だったらその公式の数々をどう覚えてどう練習すればいいのか。

たくさんの上手い作品に触れてそれぞれの作者のデフォルメのテクニック(数学で言う公式)を盗み、自分の絵を代入して描いてみればいい、ということになる。

それがよく言われる「インプットが大事」であり、他人の作品を見て面白がる・興味をもって楽しむことの意味というのはそこなのだと思う。

アニメなりマンガなりイラストレーションなり、他人の作品に興味があって見まくっている人は自動で無意識のうちにたくさんの公式を収集している。自分の絵を描くときも、たくさんの公式の中からいちばんしっくりくるものを(これも無意識で)使って代入するだけで、すぐにそれっぽい絵が描ける。そうこうしているうちに自分のオリジナリティが生まれ、どんどん絵が上手くなっていく。

対して「他人の作品なんか見たくないから見ません! 一切学びません!」というのは、「数学の公式なんて覚えて意味あるんですかぁ〜」「俺は天才だから既存の公式なんて使わなくても解けるし!」とか言って最初から全部自力で解こうとしているようなもので、そういうのってたいてい途中で挫折してイヤになってしまうんじゃないかと思う。(昔の自分がそうでした)

なにも一生他人の公式に頼るわけではなく、描いているうちにさまざまな公式の真の意味が分かってきて、そうすると自分なりにアレンジしたりできるようにもなってきて、無限に応用が効くようになってきて、そうするとかなり絵を描くのが楽しくなるんじゃないか。数学が面白くなる過程と同じような感じ。

他人の作品から公式を盗む方法

では、公式、つまり「デフォルメのテクニック」をどう覚えてどう練習すればいいのか。

数学の公式も教科書を見て繰り返し唱えるだけではなく、実際に自分の手を動かして書く・解いてみることで覚えるように、デフォルメのテクニックも実際に自分で手を動かしてみることで体得しやすいように思う。

見ただけで体得できる超天才もいるのかもしれないけど、自分は凡才なので手を動かします。

ここでよく言われる「模写をするのが大事」が出てくるんだと思う。

「え、他人の絵の模写なんてしたら、そんなの他人の絵じゃん?」と思うかもしれないけれど、自分が模写をするのは公式を抽出するためであり、完コピするためではない。

好きな作品の模写をしたりする

自分の好きな作品の模写をしたり、ある程度描けるようになったら今度は見ないで描いてみたり、好きな表情やポーズをさせてみたり、作品の絵柄でオリジナルのキャラを描いてみたり……という、「この作品が好きで好きでたまらんから真似して描いてみたい!」のすべてが練習になるのではないかと思う。

好きで好きで夢中で描いているうちに、鼻をどんなふうにデフォルメして表現しているのか、目をどんなふうに描いたら魅力的か、髪はどう表現すると自分好みの絵になるのか…‥みたいなことが、無意識で自動的に体得できる。「好きで描く」に勝る練習は無いのかもしれない。

少なくとも自分のまわりの絵が上手い人は、そんな感じで絵を描いてきた人が多い。

作画本・描き方本を模写する

また、「自分は好きな作品も無いし、描きたいものもないからなー、でも絵は上手くなりたい。でも何を描いたらいいか分からない。絵が上手くなるには何を描いたらいいのかな?」という人もいるかと思う。

「は? 描きたいものがないのに絵が上手くなりたい……? こいつ何言ってんだ?」って感じかもしれないけど、自分にはそういう時期があった。

そういう時期は「真似して描きたいくらい好きなものがない=練習方法に特にこだわりを持たなくてすむ」ということなので、アニメーターなどの監修した描き方本をあれこれ無節操に模写してみることができた。

アニメーターの監修した描き方本というのは、プロによってすでに三次元→二次元のデフォルメが済んでいる、いわば公式集と言える。模写することで、とりあえず必要な公式を効率よくあれこれと詰め込むことができる。

自分が使っていたのは『最速でなんでも描けるようになるキャラ作画の技術』。

「効率よく詰め込むなんて、そんな無味乾燥なことしたくない!」と昔の自分は反発もおぼえたのだけど、描きたいものがないのならどんな練習をしたって無味乾燥なもの。だったら効率よく詰め込むような時期があってもいいんじゃないか……と考えて、スケッチ本などを黙々と模写していた。

詰め込んでいくうちに描きたいものに出会ったりもして、「あのときの詰め込みが今役に立ってる!」みたいなこともあった。

二次創作をする

「絵が上手くなりたい!」という人の中には、「好きな作品にハマって創作意欲が湧いてきた。二次創作をしたいから絵が上手くなりたい」「絵が上手くなったら二次創作したいんだけどな……」という人もいると思う。

自分も今までに何度かそういうパッションに突き動かされた時期があり、そのたびに夢中で描いたりしてみて、今は「二次創作をするために絵の練習をする」のではなく「二次創作をすることで絵の練習になる・絵が上手くなる」だと考えるようになった。

「どうしても描きたい」があると、いつのまにか知らないうちにいろいろなところから学んで手を動かしてしまう。

※二次創作をする場合はガイドラインをきちんと守る必要がある、とも自分は考えているので、その点も気をつけています。

公式を覚えまくったら、その先は?

公式をいろいろと知って使いこなしていくことである程度それっぽく描けるようになって(脱初心者レベル)、そこから停滞して悩んでいる人も多いんだと思う。もちろん自分もそうで、その先を模索している。

自分が使っていた公式が古臭く感じたらアップデートする

デフォルメのテクニックというのは時代によっても絵柄によってもさまざま。

鼻の描き方一つとっても、古い少女漫画っぽいデフォルメやらいかつい劇画デフォルメやら最近のシュッとしたデフォルメやら、無限にある。

そのうちのどれを取り入れたいかは、自分で自由に、好きなように決めることができる。

ただ、昔の教科書と今の教科書では違うところがあるように、「あの時代はこれが主流だったけど、今はこっちが主流」「あの頃はこれがカッコよかったけど、今はこういう表現がカッコいい」みたいなものもあり、それをアップデートせずに昔覚えた公式だけを使っていると、いわゆる「絵柄が古臭い」になることがある。

古い公式だって間違いなわけではないから大事に使い続けてもいいし、今もっといい公式があるなと思えばそっちにアップデートしてもいい、程度のことだと思う。

自分の場合は「私の絵柄は古臭いな……イヤだな、恥ずかしい。でも今っぽい絵柄ってどう描くのか分からないから直せないよ……」と悩んだので、新たに今の時代の公式を覚え直す、覚え足すようにしている。

好きな作品を模写してみたり、最近のアニメーターさんの書籍を模写してみたりと、昔にやったことをもう一度やってみている。

年齢を重ねたせいもあるのか、子どもの頃みたいにどハマりして夢中になることも減ったため、プロのスケッチ本を模写する比重が増えたかもしれない。

オリジナリティを生み出したくなったらデッサンなどをする

みんなが大嫌いなデッサンというものがあるけど、これは三次元(現実)を二次元(紙の上)に変換する練習である、と自分はとらえている。

絵を描く上でいちばんのキモであり、難しい部分。

上で挙げてきた練習は、そこの超難関部分を省略していかに手っ取り早く「絵の描き方」を体得するか、というものだった。先人たちがそのプロの力ですでに三次元を二次元にしてくれたものを見て真似していた。言わば綺麗に頭と内臓を取って下ろしてサクにしてくれた切り身を買って、あとはおうちで自分で好きな厚さに切るだけの作業だった。

けど「いろいろ食べてきたらどんどん舌が肥えて、他人のサクの取り方にどうも不満を抱くようになってきた。もっとこうしてみたい、ああしてみたい」と思い始めると、自分でも魚を捌いてみたくなるかもしれない。

その、自分で一から魚を捌く作業がデッサンにあたる。

最初からデッサンをしようとするとまあまあ挫折するけど、そこそこ分かってきた頃にデッサンをすることで初めて面白かったり身になったりするのかもしれない。

「絵の描き方」を知るということ

「絵の描き方」は言語化しにくいし、人によっても違う。

筆者が考える「絵の描き方」は……

  • 「絵の描き方」とは「デフォルメのテクニック」を知ること
  • 好きな作品を模写しまくって公式(デフォルメのテクニック)を抽出する
  • 好きな作品がなければ「描き方本」を模写する
  • 新たな公式を仕入れて随時アップデートする
  • 自分でデッサンしてみて、公式を掘り下げる

ざっくりまとめるとこんな感じになる。やっていることは数学の勉強と似たようなもの。

「絵が上手くなるには模写をやるべき」「いいやデッサンをやるべき」「とにかくインプットすべき」みたいな答えの出ない「べき論」があって、1日でも早く上手くなりたい人はそれに振り回されてしまう。

そうではなくて、「公式を知って使いこなして深めていく」という感覚だと自分は思っている。その過程で適宜、模写やデッサン、インプットが効果的だったりするかもね、くらいの話なのではないかと。

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