イラストを右脳で描くコツ→アウトラインと影を見て「面」でとらえる

右脳派は芸術家肌で絵が上手い、っていうけど本当? では右脳派じゃないと絵が上手くならないの?

と疑問に思っている人向け【右脳と左脳を意識して切り替えるのは誰にでもできる。たとえば→左脳:形や大きさを理屈で判断する 右脳:アウトラインと影をつかむ という感じ。切り替え方のコツについても考えてみた。】という記事。

ひと昔前に「右脳派は感覚や直感が優れているから芸術家肌、左脳派は理論派」なんてことをよく耳にした。「指を組んでどっちが上だと右脳派」みたいなことも、まことしやかに言われたりする。

さらに「私は左脳派だから、絵が上手くならないんだよね……」みたいなことを言う人もいる。

けれど、脳が健康な状態ならどっちかが使えないなんてことがあるわけないし、切り替えのコツさえつかめば誰でも右脳と左脳を使い分けて絵を描くことができるのではないか。

この記事では【意識して右脳と左脳を切り替えるコツ】について、自分が試してきたことを書いていく。

※脳に関する研究はまだまだ途上で、右脳、左脳というのも厳密に分かっているわけではないのだけど、ここでは便宜上『左脳:理屈』『右脳:感覚』として話を進めている。

イラストを右脳で描くコツってなんなのか

Mr.Childrenの『しるし』という曲がある。

左脳に書いた手紙 ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる

『しるし』Mr.Children

これはいわゆる左脳の特性をよく表した歌詞で、理屈に囚われて「あーでもない、こーでもない」とこねくりまわしているうちに、伝えたいことからどんどん離れて行ってしまう……そんな感覚が伝わってくる。

絵を描いているときにも、この感覚におちいることってけっこう多い気がする。

細部に囚われてあっちを直しこっちを直し、移動ツールでパーツをちょっとずらしてみては「うーん違うな……」とやっているうちにイラスト全体のまとまりが失われてくるあの感じ。

これって頭が左脳(理屈)先行になっていて、正しく対象物を見ることができていない状況なんだと思う。

このドツボを防ぐには、にっちもさっちもいかなくなるまえに適宜右脳に切り替えるという対策ができる。

自分が脳の使い分けを意識したのは、有名な『脳の右側で描け』を読んだのがきっかけだった。右脳への切り替え方のコツがつかめた気がして、実際ドツボにハマらなくなった。

(2021年10月に新装版が出ていました)

『脳の右側で描け』を買って読んだほうが分かりやすいしよっぽど早いと思うけど、ここでは自分用に噛み砕いた「右脳で描くコツ」について書いてみる。

右脳と左脳は使いどころが違う

絵は右脳も左脳も両方使い分けないと描けないけど、特に似顔絵はそれを上手く切り替えるのがコツだと自分は感じている。

例として、有吉弘行さんの似顔絵を描いていく。

右脳:アウトライン(シルエット)をとらえる

似顔絵というと「目はどんな形で、鼻はどんな形で、唇はどんな形で……」みたいなパーツの細部に目が行きがちだけど、最初からそれをやってしまうと左脳こねくりまわしループに陥る。

ので、まずは直感的に形だけをとらえるようにしている。

具体的に言うと、アウトライン(シルエット)を見る。

  • パーツを全無視し、輪郭(アウトライン)だけを見る
  • 線でとらえるのではなく、面でとらえる。

どうしてもパーツや細部に目が行ってしまうならば、

  • 内側ではなく外側を見てアウトラインを描いてみる。
  • 写真を左右反転・上下反転させて描いてみる。

左脳:パーツをとらえる

次に、さっきは置いておいた、それぞれのパーツの情報を見ていく。

頭蓋骨のアタリをとりつつ、「平均と比べて髪が多いな」「標準より目が寄り気味だな」「耳は正面から見える形なんだな」など、データや理屈と比べながら特徴をつかんでいく作業。

これは直感だけではできない作業なので、このときは左脳(理屈)優位になっている。と言えるのではないだろうか。

でもまだ「なんとなく特徴は出てきたけど、まだイマイチつかめているとまでは言えない……」という感じ。

右脳:立体感をとらえる

再び右脳で、今度はカゲや空間をとらえてみる。

線で描き込むのではなく、やはり面で。切り絵をする感じが近いかも。

パーツではなく、パーツとパーツのすきまの形を見る。

カゲだけで見ると、頬骨からほうれい線、あごのラインの"谷"がよく分かる。

目尻〜耳〜エラにかけての空間(広い)や、額の丸い広がり(広い)にも気付く。

あれこれ線で特徴を描いていたときより、ぱっと見、有吉さんぽく感じるのではないだろうか。

左脳:パーツの情報をプラスしていく

上の感覚を踏まえて、理屈でパーツをとらえ直す。

「小鼻は正面から見えない形だな」とか「笑うと上下の歯が見えるんだな」など、パーツの細部を描き込んでいく。

直感と情報を合成する

左脳でとらえたパーツのデータと、右脳でとらえたアウトラインや影のデータを合わせると、かなり有吉さんぽく見えてくるんじゃないだろうか。

自分なりにとらえることができたな、と感じたら、髪型や表情を調整して完成。

自分がやっている理屈と直感の使い分けは「いつ、どんな順序でするべき」みたいな決まりはなくて、適宜必要に応じて、という感覚。

説明のために敢えて手順を分析してみたけど、実際はいちいち意識してやっているわけではなく、無意識で切り替えて描いている。

「自分が今、右脳と左脳のどちらを使っているか」を意識してみる

どちらか一方では絵は描けないし、特に似顔絵のようなものは上手く似ない。参考にした書籍は『脳の右側で描け』というタイトルだけど、右脳だけで描くわけでもないよな……? と思う。

ざっくり言えば、

左脳:線でとらえる、パーツの特徴をとらえる、手持ちの情報と引き比べる

右脳:アウトラインをとらえる、面でとらえる、パーツとパーツの間をとらえる

というふうに自分は使い分けている。

左脳だけで描いてしまっているとき、右脳への切り替え方

右脳と左脳の働きを意識しているうちに「あ、今理屈だけに頼って描いちゃってるな」などと分かるようになってきた。

そういうときは意識的に右脳に切り替えればよいので、「あれっ、今日上手く描けない!」みたいにドツボにハマることもなくなった。

右脳に切り替えるために自分がやっていること
  • 面でとらえる
  • アウトラインとカゲを見る(切り絵の要領)
  • 資料を左右反転・上下反転させて描く

資料を左右反転・上下反転させて描くというのはこんな感じ。理屈が補助してくれないので、右脳だけで描くことができる。

右脳だけで描いてしまっているとき、左脳への切り替え方

逆に「今ちょっと感覚で描きすぎてるな」というとき、つまり右脳先行になりすぎているときもある。

そういうときは、少し理屈を取り戻すようにしている。

左脳に切り替えるために自分がやっていること
  • アタリを正確に取り直す
  • 線を引く速度を落として、ゆっくりにする

特に、アタリをしっかり取ることで感覚の暴走を抑えることができる気がする。

どんな人間もほぼ同じ骨格でできているので、そこを無視して感覚で描き飛ばすことはできない。

脳の感覚は日によって変わる

日によって感覚は違うので、全く同じコンディションで絵を描くことはできない。

描いてて「なんか今日しっくりこないな……」と感じる日って必ずある。それってたいていは、単に脳の感覚のブレだと思う。

だからむやみに「下手になった!? スランプだ!」とか「才能がないから描けなくなった!」みたいに取り乱すのではなくて、

「今、右脳か左脳のどっちが先行しているのか?」を判断する

どちらかが過剰になっているならば、意識して切り替える

こんな感じで調整してみたらドツボにハマりにくくなり、精神衛生上よかったです。

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