「絵柄が安定しない」?それ「仕上がりにムラがある」だけじゃない?

絵柄が安定しない。描くたびに絵柄が変わっちゃうんだけど、どうすれば絵柄が安定するんだろう……?

と悩んでいる人向け【これって「絵柄が安定していない」のではなくて「画力が足りていないために仕上がりにムラがある」のでは? と思ったので、自分は線をていねいに描くことから始めてみました】という記事。

「絵柄が安定しなくて……」という悩みってよく目にするし、自分もよく言っていた。

「絵柄が安定しない」って具体的にどういうことなのかというと、自分の場合、「普段から複数の絵柄を描き分けていて、なかなかこれで勝負していこうと思える自分の絵柄が決まらない」みたいな素敵なものではなくて、「なんとなく描いちゃうので仕上がりにムラがあり、いつも絵柄が違って見えてしまう」という感じ。

昨日は誰々さんの絵柄に寄っちゃって、今日は別のあの人の絵柄に寄っちゃって、みたいな。意識して寄せているわけではなく、なんとなく寄っちゃうだけ。

自分もそうだったから敢えてぶっちゃけて言うと、それって「絵柄が安定しない」のではなく「画力が低くて仕上がりにムラがある」ということなんだと思う。それをいくら「絵柄が安定しないんだけど、どうやったら安定するのかな?」とGoogle検索したって解決するはずがないんだぞ過去の自分よ……。

この記事では【今の画力のままでも、ちょっとだけイラストの仕上がりを安定させるために自分が気をつけてみたこと】について書いていきます。

「仕上がりにムラがある」のを「絵柄が安定しない」って言いたいだけだった説

「絵柄が安定しなくて……」というのは自分はつい言ってしまうのだけど、上にも書いたように「単に仕上がりにムラがあるだけ」だったと気づいた。

「あーわたし絵が下手だから描いたイラストにばらつきがあるわ〜」って思うとなかなかしんどいので、つい「絵柄が安定しなくて……」と心にダメージを負わない言葉に置き換えてしまっていた。

趣味で楽しく絵を描いているだけなら、思い通りに描けなくても「絵柄が安定しないわ〜」ですませても全然かまわないと思う。でももっと上手くなりたいなら言葉を置き換えたりしてごまかさず、欠点を直視する必要があるのだろうな……。

薄目で直視してみたら、自分の場合はこんな感じ。

  • 仕上がりをはっきりとイメージできていない
  • イメージ通りに描くには画力がまだまだである
  • 思いつきでなんとなく描いちゃう
  • なんとなくだから作業が雑でやっつけ

これを「絵柄が安定しない」ですませてしまったら、そりゃいつまで経っても解決しないわ……TLで「絵柄が安定しないわ〜」と言い続けるハメになってしまう。

なので一つ一つ、思い当たったことを(なるべく)意識するようにしてみた。

※自分の場合は絵を描くのは完全に趣味であり自分が楽しむためなので、「なるべく」程度です。

「仕上がりのムラ」を減らすために意識してみたこと

描き始める前にワンテンポ置いて仕上がりをイメージしてみた

まず「パッと思いついて描きたいところだけガッと描く」みたいなのをとりあえずひかえて、何をどう伝えたいか、どんな感じに仕上げたいのか、見た人にどんなふうに受け取ってほしいか、みたいなことを一瞬だけは考えるようにしてみた。

※見た人にどんなふうに受け取ってほしいか、というのはウケを狙うという意味ではなく「客観的に自分の絵の仕上がりを意識するために他人の立場になってみる」程度の話です。

とは言え、ワンテンポ置くってけっこう難しいので、絵を描く前にキャンバスの余白に丸を描くやつをやるようにした。思い通りに線を描く準備運動。これをやると数分は無になるし、脳と指先がつながる感じするし、「パッと思いついてガッ」を予防できるのでいろいろよかったです。ベジファーストみたいな感じ。

「パッと思いついてガッ」もまあ楽しいのだけど、自分の表現したいことをじっくり表現できるのも絵の楽しさだから「イメージした通りに慎重に描こうとしてみること」がより楽しいのは当たり前なのかも。これを発見できたのは自分にとってすごくよかったです。

ただ、いくらはっきりイメージしても全部その通りには描けないので「少なくともこれは表現したい」というポイントを3つくらいイメージして、1つでも表現できたらヨシ、くらいにしています。

作業をなるべくていねいにしてみた

「イメージした通りに慎重に」描こうとすると、おのずと作業もていねいにならざるを得ない。今まで勢いで描き飛ばしてごまかしていた部分にも、じっくりと向き合わざるを得ない。

自分はこれがめんどくさくて「絵柄が安定しないわ〜」でごまかしていたかったのかもしれないな……。

アタリをきちんととるようにしてみた

まず、アタリをきちんと取るようにしてみた。たとえば頭部を描く場合、○の中にやっつけで十字を入れるだけではなくて、頭蓋骨をとらえるための補助線としてアタリをとるなど。

今さらルーミスの『やさしい人物画』の模写をしてみて、アタリってこういう意味があるのかと感じた。目や鼻、耳など、常に適切な位置にパーツを描けるようになるので、顔が安定する。いつ描いても同一性のある顔が描ける。

特に「描くたびにいつも顔が違っちゃう」という場合、アタリをとるだけでかなり安定する気がする。

線をていねいにゆっくり描くようにしてみた

これは自分が絵うまの友人から指摘されて直すようにしたことだけど、線を勢いまかせに描き飛ばさないことも仕上がりを安定させるために重要だなと感じている。

ペン入れはもちろんだけど、下書きの段階からていねいにゆっくり線を引く。

以前はシャッシャッと線を勢いで複数描いてしまってたんだけど、それだと仕上がりは運任せみたいなもの。DIYでも寸法をきっちり測って木を切るわけで、のこぎりで出たとこまかせに切っていったのでは仕上がりが安定するわけがない。

線を丁寧にゆっくり引くようにするだけでも、だいぶ絵の安定感は変わってきていると思う。

画力がそれほど高くなくても、線をていねいに描くだけできちんと仕上げたように見える。

線をゆっくり描くってどれくらいのスピード感かというと、「勢いでごまかさず自分の思い通りの線が描ける程度のスピード」を意識してみている。

絵柄は生き物、変わっていって然るべき

絵柄って一生変わっていくものだと思う。だって、インプットとアウトプットを繰り返していくのだから。食事を摂って、栄養を吸収して、不要な部分を排泄する。人の体の細胞が変わるようなもので、絵柄も新陳代謝しながら成長を繰り返す。

で、たぶん、そんなふうに健全に絵柄の新陳代謝ができている人は「なぜか絵柄が安定しない……」なんて悩んでいないと思うのだ。

英語で「安定しない」は「unstable」。

これは「今にも崩れそうな」「落ち着きのない」「情緒不安定な」という意味。

「絵柄が安定しない」と言うとなんだか「私はいろいろな絵柄が描けてしまうので、一つに決まらないんですの」みたいにゼイタクでカッコいい悩みみたいにごまかせてしまうけど、だからつい自分もそう言ってしまっていたけど。

「今にも崩れそうに不安定である」という意味なんだよなと考えると、要するに画力が足りていないんだ・作業が雑なんだ、ヤバイよな……ということになる。

※本当に「私はいろいろな絵柄が描けるので一つに絞れないんだ」という人はそれでいいと思う。うらやましい悩みだし、存分に悩むことで、さらにいい絵になっていくんだろうなと思うし。

自分のように「いや……もしかして私の絵、単に仕上がりが不安定なだけかもな……? ちょっとこれはどうにかしたいな」と感じるならば、

  • アタリの取り方を見直してみる(美術解剖学の本を模写してみる)
  • 線をていねいにゆっくり描くようにしてみる

この二点を試してみるだけでも、だいぶ安定を感じるんじゃないかなと思います。

あと、意識的に絵を描いてみることで、いっそう絵を描く楽しさとか喜びを感じられている気がします。

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