おじさんキャラを描くのがどうも苦手で、いつも適当にシワを描いてごまかしちゃってるけど不自然なんだよね……
と悩んでいる人向け【中年以降の人物を描くときは①シワを足すのではなくタルミを観察して足してみる②髪や眉を実物より淡い色で描く③瞳のハイライトを控える、などの表現方法を使うとそれっぽく見えるかも?】という記事。水谷豊さんの似顔絵を作例に、自分が【おじさま】を描くときに心がけていることについて書いてみる。
よくある不自然なおじさんイラスト
昔の少女漫画とかレディースコミックによくこういうおじさまが出てきたけど、自分も以前はこんな感じに描いてしまっていた。
シワを描くことで「これは中年以降のキャラですよ」とアピールしているわりに、妙に若々しい、いわゆる「リカちゃんのパパ」みたいな感じのおじさまになってしまっている。
シワ描いておけばおじさんぽくなるだろうと思ってシワを描いても「なんか違うな……」となり、必要以上にシワを描いてしまう。よけいな線で絵が汚くなるだけで、おじさんぽくはならない……。
単にシワを描いときゃいい、というわけではなく、こまかいポイントがあるように思う。
水谷豊さんに学ぶ【おじさま】を描くときのポイントとは
では【おじさま】を描くとき、どんなところに気をつければ【おじさま】っぽくなるのだろうか。
自分は似顔絵を描く絵描きなので、似顔絵を作例に考えてみる。
まずは水谷豊さんを描いてみた。
何歳から【おじさん】とか【おじさま】なのかは分からないけど、水谷豊さんは2020年現在で67歳。きちんと年齢相応の貫禄を描かねばならない。
輪郭がゆるむ
歳を重ねると輪郭がゆるむ。皮膚のハリがなくなってたるみ、下に落ちる。骨格は当然ながら変わらないので、頬骨から顎までのラインが「ゆるっ」と変わり、皮膚が下のほうにたまる。
それから、首もたるむ。「ゆるっ」として太くなり、スーツならワイシャツの襟にちょっと乗っかったりする人もいる。
耳たぶが大きい人は耳たぶも「ゆるっ」となる。
まぶたが下がって瞳のハイライトが変わる
皮膚は全体的にたるんで下がるのだけど、顕著に下がるのがまぶた。
水谷豊さんは若い頃(『熱中時代』とかの頃)はくっきり二重でいわゆる「バタくさい」顔立ちだったけど、今はほどよくまぶたが下がり優しげな目元になっている。
そして、まぶたが下がると瞳にハイライトが入りにくくなる。下がったまぶたが光を遮ってしまうため、中年以降になると黒目は翳っているほうが自然に見える。
目がキラキラしたおじさんキャラが不自然に見えるのは、そのせいだと思う。
髪と眉は薄く、細くなる
髪や眉は一本一本が細くなり、まばらに、薄くなる。また、若い頃に比べると毛の勢いもなくなる。
なので、青年キャラと同じつもりで黒々としっかり描いてしまうと生命力がアンバランスになり、どうしても不自然になる。
毛の柔らかさをタッチだけで表現するのは難しいので、自分はちょっとだけグレーにするなど色を淡くすることで毛の柔らかさを表現するようにしている。
※同様に、赤ちゃんの髪や眉も黒々と描いてしまうとアンバランスになる(おっさんぽくなる)ので、淡い色を使うようにしている。
シワは最小限にとどめる
シワを描いても描いてもなかなかおじさんぽくならないのでついついシワをたくさん描いてしまうと、よけいな線で汚くなる。また、顔の構造を理解しないままシワを描くと傷やヨゴレのようになってしまい、見る人に違和感を与えがち。
なので、輪郭のたるみをしっかりと描いたら、シワはその人の特徴の最小限にとどめるようにしている。(この記事で描いている水谷豊さんの似顔絵も、涙袋と鼻の脇のシワを入れるだけにとどめた。)
実際にリアル世界の【おじさま】たちをよく見てみると、言ってもそんなにシワって入っていない。
藤井フミヤさんに学ぶ【おじさま】を描くときのポイントとは
もう一人の【おじさま】の例として、藤井フミヤさんの若い頃(21歳)と現在(57歳)を描き比べてみた。
当然だけど、若い頃も現在も骨格は変わらない。並べると分かりやすいけれど、ほおの輪郭がゆるみ、下にたまっている。
それにつれ普通は口角が下がるけれど、フミヤさんはいつも口角を上げているため口の脇にシワができる。これが特徴的だと思ったので、描くシワはこの一つだけにしぼった。
また、眉や髪のボリュームも、実際よりも敢えて抑え気味に描くことで【おじさま】っぽさが出る気がする。
年齢による変化を魅力だと捉えて描く
どんな絵柄でも、年齢による変化を意識することで自分の絵柄に合った【おじさま】が描けるのではないかと思う。
コミック的な絵柄なら、パルミーのこちらの講座が参考になるかも。
書籍なら百舌まめも先生他、いいオジサンがそろった『オジサンの描き方 (廣済堂マンガ工房)』が好みでした。
「若々しくてカッコよいおじさんを描かなきゃ」と思ってしまっていた頃は、【おじさん】がうまく描けなかった。
年を重ねてさまざまに変化することで、若い頃の「若々しさ」「かっこよさ」とは違う魅力が出てくる。それをとらえることで【おじさま】が描けるのだと今は思う。
それがたとえばたるみやシワ。たるみやシワは、渋さであったり味であったり、深みだったりする。まずはそのたるみ一つ、シワ一つを愛しながら観察して描いていきたい、と自分は考えている。