似顔絵を描くときに、鼻が苦手で変になってしまう……
マンガっぽい絵で鼻を描くときに、どうやってデフォルメしたらいいのか分からない
という人向け【鼻の特徴をとらえデフォルメして描くには、鼻すじ・輪郭・小鼻の三点を意識して省略すると描きやすいかも】という記事。松岡昌宏さんの似顔絵を作例に解説しています。
人間の顔を描いていていちばん難しいのが、複雑な立体である"鼻"ではないだろうか。リアルタッチの絵でも鼻を描くのは難しいけど、特にデフォルメ絵ではどこをどう省略するかが悩みどころになる。
自分は似顔絵を描く絵描きなのだけど、いつもどんな感じに鼻を省略してとらえているかについて、自分のやり方を書いてみる。
描きたい人物の、鼻の特徴を観察する
ここでは松岡昌宏さんの似顔絵を作例にしてみる。
まずは顔の特徴を観察するのだけど、自分は写真ではなく、動画など動いている状態のものを観察するようにしている。正しく立体的に形をつかむには、いろいろな角度から見る必要があるから。
(今回は『家政夫のミタゾノ』を見ながら描いていた。)
特徴としては、
- 鼻すじが広くて平ら(とがっていない、険がない鼻である)
- 鼻の付け根は低い(ので、くっきりした顔立ちでありながら幼さも残している)
- 小鼻が張っている(小鼻が張っている顔は人相学的に強運とされる)
- "人中"(上唇の上のくぼみ)がくっきり(鼻と合わせて特徴的)
鼻というのは何とも複雑な形のパーツなため、特徴を押さえようにもどこを見ていいか分からなくなりがち。だから自分はポイントを絞って見るようにしている。
- 鼻すじ(太さや長さ、高低)
- 正面からの輪郭(アウトライン)
- 小鼻(張りの有無、角度など)
松岡さんの場合は、
- 鼻すじ:広くてなだらか
- 輪郭:シュッとして横に広がらない、小鼻だけが張り出す
- 小鼻:斜め上に張り出す、下向き矢印型
こんな感じ。
特徴を押さえたら、線を減らしていく(デフォルメ)
「写実的に描くのはまあできるけど、マンガ絵っぽく描きたいときにデフォルメの仕方が分からない」という場合もあると思う。(自分も絵を描き始めの頃はデフォルメするのが難しくて悩んだことがある)
そういった場合、鼻を輪郭(アウトライン)だけで描いてみると、特徴を残しつつ線を減らすことができると思う。
アウトラインだけで鼻を表現するときも、小鼻の張りと上がり具合を意識して残してみている。
※「輪郭(アウトライン)だけで描くって言われても難しいんだけど、どういうこと?」となる場合、いわゆる「右脳で描く」という練習方法をかじってみると「なんとなくこういうことかな?」というのが実感できるかもしれません。
※デフォルメがどうしても苦手な人は、太い線で描いてみることでデフォルメの感覚がつかめたりするかも? と思います。
鼻の穴を描いた方がいいか、描かない方がいいか
鼻の穴って必ず誰にでもあるものなのに、どうしても描きにくいというか、変に描くとマヌケな仕上がりになってしまうことがある。(『みどりのマキバオー』的な感じになってしまう。)
かと言って自分の場合は似顔絵だから、鼻の穴を省略してしまうと特徴が消されて似なくなることもしばしばあるので、
- 正面から見て鼻の穴が目立たない人は省略またはデフォルメする
- 特徴として目立つ人の場合はきちんと描く
という感じにしている。
たとえば、ブラッド・ピットさんは鼻の穴が丸くない(小鼻の張りが強く、鼻の穴も引き上げられて細長くなっている)ので、鼻の穴は"線"で表現してみた。
一方、内野聖陽さんは鼻の穴をしっかり描いた方が似る気がする。
さらにたとえば、前澤友作さんは鼻の穴だけ描くと雰囲気が出たりするかも?
鼻は思い切って一本の線で一息に描くようにしています
「鼻だけ描けない」という人って、苦手意識から迷い線でごまかしごまかし描いてしまうことが多い気がする。というか、絵を描き始めた頃の自分がそうだった。
鼻ってほんと誰の鼻でもそうだけど、なんともみょうちくりんで描いてて不安になりやすいパーツで、「こんなおかしなパーツを描いて私の絵は変にならないだろうか?」とおっかなびっくりになってしまって、シャッシャッとなんか無駄な陰を入れてごまかしたくなってしまう。
でもそうやっておそるおそるモタモタ描くことでよけいに鼻が変に見えてきて、よけいに分からなくなってくる。
今はこんな感じで描くようになって、苦手意識がなくなった。
- 多線を重ねたりせず、一息に一本の線で描く
- 一度で似せようと思わずに、何度もUndoをして数パターン試す
「上手く描けないから、鼻を省略しちゃダメ?」
自分が絵を描き始めた中学生の頃、マンガ絵でも写実絵でも鼻がうまく描けなかったので省略していた。「省略しても自分の絵はそれで上手いからこれで良いんだ」と悦に入っていたのだけど、あるときクラスの子に「変なの! 鼻が無い! おい、こいつの絵全部鼻が取れてるぞー! キモい!」と言われて恥ずかしくなってしまったことがあった。
描けないからというだけの理由であるべきものを省略したことで、不自然な「違和感」になっていたんだと思う。特に鼻は顔の中心なので、それが省略されるとなんともマヌケな仕上がりになってしまう。
絵柄的に「バランスを見て不要だと判断したため描かない」という省略ならアリだと思うけど「鼻が難しくて描けないから省略する」というのは見る人の違和感につながるんだな、と、強烈な恥ずかしさの中で反省した思い出です。
また、バランス的にあったほうがいいのに省略してしまうと、「この人鼻描けないんだな……」という感じがありありと出てしまう。こういうのがつまり「デフォルメは逃げ」と言われてしまう所以なのかも……。
私の絵を「鼻が無くてキモい!」と糾弾(?)したクラスの子も、私が鼻を描けなくて省略している(くせにドヤ顔をしている)ことを見抜いて、晒し上げたくなったんだと思う。
私自身も「鼻は描けないから省略してるけど私の絵はそれでも上手いでしょ?」みたいなドヤ意識があったから、見抜かれたことで強烈な恥ずかしさを味わった。良い薬でした。
思い入れのない人物の鼻をたくさん見て、鼻の引き出しを増やす
アニメ絵やマンガ絵だけだとどうしても鼻の表現は限られてくる。絵柄によっては誰の鼻でも「ちょん」と点を描くだけで良かったりする。
自分もその簡略化したアニメ絵的な鼻の表現しか持ち合わせていなかったため、リアルの人物を描くときに鼻が描けなくて行き詰まってしまっていたのだ。
自分の場合は似顔絵を描くようになったことで、表現の引き出しが増えた気がしている。
まず、たくさんの顔を見比べないと違いは分からないし、表現のアイデアも浮かばない。
テレビで映ったタレントさんや電車の中の知らない人など、特徴的な鼻を見るたびに「この人の鼻を描くならどんな線で描くと似るか?」と頭の中でシミュレーションしたり、または実際に描いたりしている。
最後に、推しの顔だけで練習すると「推しの顔はもっとかっこいいですフィルター」とか「推しにはマヌケな鼻の穴なんてありませんフィルター」がかかってしまうので、思い入れのない人物の鼻をたくさん見てたくさん描くのが良かったように思います。