絵柄って、なぜか描いた人の顔に似るよね……それってなんでだろう?
オフ会で絵描きさんに会ったら、なんとなく絵柄の雰囲気に似ていた。やっぱり絵って本人に似るのかな?
という疑問について【絵柄が描いた人に似る現象について、心理学な根拠を考えてみた】という記事。
「絵柄は絵描き本人に似てくる」「絵描き本人に会ったら、絵柄の雰囲気に似ていた」なんてことがTwitterでたまに話題になる。
自分自身も「そう言われてみればそうかも」と感じることが多い。
二次創作で同じキャラを描いているのに、どこかそれぞれ描き手の顔立ちや雰囲気に似ている気がする、というか。
ちなみに自分はゆるくてシンプルな顔立ちだけど、やっぱりゆるくてシンプルな絵柄だと思うし、美形キャラを描いてもどこかゆるくてシンプルになる。
それってなんでだろう? と思ったので、自分なりに心理学的な根拠を探してみた。
絵柄が描いてる本人に似ちゃう理由、その心理学的な根拠について。
「なぜか絵柄って本人に似ちゃうんだよね」というのって別に神秘的なことでもなんでもなくて、きちんと過程と理由がある、と自分は考えている。
【類似性の法則】で自分と似たものに惹かれる
人は自分と似たものに惹かれやすいと言われる、いわゆる【類似性の法則】というものがある。
例えば出身が同じとか、年齢が近いとか、醸し出す雰囲気が自分と似ているとか、何か共通点があるものに親しみを持って惹かれていく。逆に、未知のものをゼロから知っていくのはめんどくさいし不安もあるし労力が大きいしカロリーも使うので、脳が親しみを感じることを避けたがる。
さて、自分の絵柄を確立するくらいまで絵を描くというのは、たくさんのインプットが必要になることと思う。
全く誰の影響も受けていない絵柄なんて不可能で、小さい頃観たアニメや思春期にハマった漫画、付き合いの長いフォロワーさんのイラストなど、たくさんのものをインプットしてきて、そこから影響を受けていることになる。
もしかしたら、その段階で無意識に自分に似た要素に惹かれることが多く、無意識に自分に似た雰囲気のものを多くインプットしてきているんじゃないか、という仮説を立ててみた。
インプットしたそれらが熟成され、ブレンドされて、例えば目尻のまつ毛や笑うときの口角の上がり方、髪の流れ、手指の所作、細かい細かいそれぞれの部分に自分と似たエッセンスが反映され、「どこがと言われると困るけど、どことなく似てる気がする……」みたいになるんじゃないだろうか、と。
どんな人にもナルシシズムはあるという説
こういうことを言うと「いいえ、私は自分の顔が大嫌いだしあり得ません!」「私はブサイクだから自分に似た顔に惹かれるわけない、私には当てはまらない」と感じる人もいると思う。
もちろん例外はあるかもしれないけど、美醜に関わらずナルシシズムは誰しもある程度は持っていると言われている。
とある実験で、他人の顔に自分の顔がちょっと混ざっている顔(セルフモーフ)を魅力的だと答える人が多かった、という結果があるそうだ。
※モーフィング…二つの画像をゆっくり少しずつブレンドする技術のこと。
自分に似た顔を好む〜パートナー選択と顔の好み〜(講演のPDFです)
ナルシシズムと言ってしまうとちょっと限定的なので「自分と似た顔は既知のものだから安心し、親しみを持つ」と言い換えたほうが近いのかもしれない。
「自分の顔が嫌いだから」「ブサイクだから」と自分の顔そのものには拒否反応があるとしても、多くの場合、脳は無意識でどこか自分と似た顔には惹かれる、もしくは親しみや安心感を抱くようになっているみたい。
「生物学的には似た顔を避けたがるのでは?」
ここまできて、
「いやいや、優秀な遺伝子を残すために自分と正反対のものに惹かれるって説もあるよ」
「生物学的に言えば自分と似た顔は避けたがるはず、近親交配のリスクがあるから」
という意見もあるだろう。
ただ絵柄と子どもを作るわけではないので、そのあたりはまたいろいろと考えようがあるのかなと思う。
個人差はいろいろです
個人差はいろいろだし、例外もあると思う。
たとえばプロとして長く描いているような人で、インプット量がもの凄くて「どんな絵柄でも貪欲に吸収して40年!」みたいな新陳代謝のいい絵描きさんは、また一周まわって加減が変わってくるかもしれないし。
あと、単に絵を描き始めてまだ間がなくてインプット量自体が少ない、今はただキャラを見て描いているだけで自分の絵柄がまだ確立していない、という人にもこの説は当てはめることができない。まだ「似ている要素」を構成するような素材が集まっていない段階なので。
「10年なり20年なり趣味でアニメや漫画を見ながら描きたい絵を描いてきて、なんとなく自分の絵柄ができてきたよ」くらいの人には、ひょっとしたら適用できるんじゃないか。と思って考えたことをまとめてみました。