
「絵をけなされて、描く気力がなくなっちゃった」「エアリプで傷ついた。もう絵を描きたくない……」という人向け、【それでも負けずにやる気を出す方法】について。
SNSにイラストを載せていると、いやがらせや中傷のメッセージを受け取ったことがある……という人もいるんじゃないだろうか。
自分宛のハッキリとしたメッセージではなくても、エアリプに傷ついたり孤独感を感じたりして「もう絵を描く気力がなくなっちゃった」と心が折れたり。
そんなときに、気持ちを切り替えて再びモチベーションを上げていく方法について。
脳科学的に考えて、やる気が出ない原因とは?
以前、"毎日やる気を持続させて、絵の練習を続けやすくする方法"についての記事を書いた。
この記事で書いたとおり、やる気というのは、毎日のルーティンを決めたり、ちょっとしたごほうびを設定すると持続しやすい。
でも、いくらやる気を出そうとしても脳がストップをかけることがある。
がんばりたくても、それにまつわるいやな記憶があるときだ。
『動物のお医者さん』で、主人公のハスキー犬チョビが隣のニワトリに襲われて以来隣家との境界線を超えられなくなった、みたいな話があったけど、あんな感じ。
たとえ本人は覚えていなくても「この行動をすると、いやなことが起こった気がする」という記憶が、無意識のうちに脳にストップをかけるのだ。
「よく覚えてないけど、幼稚園のときに絵をバカにされた」とか「もう忘れてたけど、20年前のコミケでイチャモンをつけられた」みたいな、あわ〜い、いや〜な記憶が、無意識のうちに脳にストップをかけてしまっていることもある。
絵を描こうとすると、脳の中の快や不快を感じる【扁桃体】というのが過敏になり、ソワソワ、モヤモヤ、不安で落ち着かない気分になる。
そして「そうだそうだ、絵を描くとなんかいやなことが起こった気がする。このまま実行すると危険です!」と、やる気スイッチの【側坐核】がストップする。
それでもあなたは、「でも毎日描かなきゃ上手くなれないし、がんばらなきゃ……」とがんばろうとする。
これではブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるのと同じで、脳が空回りして疲れてしまうだろう。
もし「絵を描こうとするといやな気持ちになって手が止まってしまう」という場合は、脳がこの状態なのかもしれない。
脳科学的に考えて、この空回りを解消するには
「絵をけなされた記憶が蘇って、手が止まってしまう……」なんて人に向かって「それでも気にせず根性でがんばろう! 負けるな! だって絵が上手くなりたいんでしょ?」なんてことを言う人もいるけど、それは無理ってもの。
自分も心が折れやすいからよく分かる。そんなこと言われたらよけい折れる。
なので脳科学的に、無理のない方法でゆっくり立ち直ってやる気を回復させていく方法を採ろう。
状況と感情を書き出して整理する
まず、今の状況と、それによって起こった自分の感情について書き出してみる。
状況:◯◯さんがTwitterで「下手なくせにハッシュタグをつけるな」とエアリプしてた。直前に絵をアップしてたからきっと私のことだ。
感情:悲しい。◯◯さんにそんなふうに思われてショック。こわい。自分でもこんな下手な絵にタグをつけていいのかな、と迷っていた。やっぱりみんな私の絵を下手だと思ってたんだ……。私は下手なんだからタグをつけるべきじゃなかった。
みたいな感じで。
そして間違った思い込みをしていないかチェックしてみる。
まず、エアリプを絶対に自分のこととして受け止めてしまっている時点で思い込み。実際のところは本人にしか分からない。
あと「やっぱりみんな私の絵を下手だと思ってたんだ」という感情。
エアリプをしているのは一人だけで、「みんな」ではない。
一人に言われたことをみんなの意見のように受け取ってしまうのは、間違った思い込みと言える。
それに「下手だからタグをつけるべきじゃなかった」という『べき論』も、全く根拠がない思い込み。
こうやって書き出してみると、「自分でもこんな下手な絵にタグをつけていいものか……という引け目があったせいで、エアリプに過敏に反応してしまったんだな」というふうに整理できる。
他人の気持ちは分からないんだ、ということをいつも思い出すようにしよう。
人に優しく、親切にしてみる
ここからが脳の不思議を発揮する方法。
不安だったりモヤモヤした気持ちのときは、人に優しく、親切にしてみよう。
SNSだったら、人の作品に丁寧な感想を送ってみるとか、落ち込んでいる人に声をかけてみるとか。
なぜかと言うと、感情に振り回されているときって【扁桃体】が暴走してしまっているので、【扁桃体】を制御する【前頭前野】という部位を活性化させてあげればよいのだ。
それには【オキシトシン】が有効。
ということを、社会不安障害について研究している金井嘉宏先生という人が論文に書いている。
金井嘉宏『社交不安症の認知行動療法と神経科学』(←論文のPDF)
オキシトシンというのは、「疲れたときはハグがおすすめ、脳からなんちゃら物質が出て安らぐのでぜひハグをしよう」とかいって話題になったことがあるでしょう。あれがオキシトシンだ。
オキシトシンは、ハグだけじゃなくて人に優しくしても出る。
理屈は分からなくても「道を聞かれて教えてあげただけなのに、なんだか自分の気持ちが安らいだ……」とか「丁寧な感想を書いて送ったら、なんだか自分も癒された……」みたいな経験、あるんじゃないだろうか。
「不安やモヤモヤのせいで、最近ずっと他人にも素っ気なくしてたな……」と心当たりがあるなら、ちょっと態度を変えてみてもいいかもしれない。
絵と関係なく日頃から不安が強いような人は、こちらもおすすめ。
自然に触れたり、食生活を改善するのもよい
脳は生活習慣にも左右されるので、家の中でじっとモニターと向き合うのではなく自然に触れたり、散歩をするのもいい。
また、オキシトシンのもとはアミノ酸なので、タンパク質をしっかり摂ろう。
あとは睡眠。元プロ野球選手の落合博満氏もこう言い切っている。
「精神的なスランプからは、なかなか抜け出すことができない。
根本的な原因は、食事や睡眠のような基本的なことにあるのに、それ以外のところから原因を探してしまうからだ。」
『落合博満の超野球学』
頭の中のモヤモヤは脳のお仕事なので、心を傷めて悩むのはムダ。
しっかり食べて寝ることでしか改善しないのだ。
描けなくなった理由が分かれば悩みは解消する
「けなされてから絵が描けなくなっちゃった」で思考停止してしまうのはもったいないし、自分以外の誰かにやる気を邪魔されるのってばからしい。
どんなことがあって、自分はどう感じたかを整理することで、必要以上に「ショック」とか「悲しい……」という気分に浸るのを防げるはず。
つまらない思い込みでやる気を削がれないように、
- モヤモヤしたら状況と感情を整理する
- 間違った思い込みはすぐ訂正
- 人に親切にする
- しっかり食べてしっかり寝る
こういったことを普段から心がけてみるといいかもしれない。