絵って独学でも学べるの?上手くなれるの?
という人向け【自分に合った教材を選べば独学でも絵は学べる。①目的がはっきりせず受け身で始めたい人向けオンライン講座②自分の指針があるなら無料で利用できるサイト③マイペースで模写して学べる書籍④ひとりよがりにならないための添削サービス】についての記事。
自分はいちおう高校の美術科受験と美大受験を経験しているので厳密に言うと独学ではないのだけど、中学のときは少しデッサンを習った程度だし美大受験もいいかげんで結局進学はしなかったし、大した美術教育を受けたわけではない。
あんな嫌々やったちょっぴりのカリキュラムより、好きなアニメや漫画の二次創作やファンアートのためにしゃかりきになって長年取り組んだあれやこれやのほうがよほど実になったと感じている。
なので、独学でやってみて自分のためになったなと感じていることについて書いてみる。
【独学】と【自己流】の違い
「絵を学ぶのは独学じゃダメなの?」ってよくある疑問だけど、では独学じゃない方法ってなんだろう。美大やデザイン系の専門学校に通うことなのか、デッサン会に行きまくることなのか。たしかにどれも絵を描くために良い環境ではあるけど、美大や専門学校に入りさえすれば自動的に絵が上手くなるわけではない。デッサン会に行ったところで、手取り足取り教えてくれるわけでもない。
結局は教材をや作例を自分で見て手を動かして学ぶということだし、それができなければ時間やお金をかけても私のように無駄になる。
逆に言えば、教材さえあれば自分で見て手を動かして学ぶことができる=【独学】が可能、ということでもある。
ただ「なんの教材も使わず誰のアドバイスも受けず自分の好きに描きまくって上手くなりたい」というようなのは【独学】ではなく【自己流】であって、それで上達するかどうかで言えば時間がかかるかもしれない。
絵なんて好きに描けばいいので自己流だろうがどうでもいいのだけど、「なるべく効率よく上手くなりたい」「人目を惹く絵を描きたい」という場合は自分の気質やレベル、状態に合った教材があるといいのだと思う。
絵を独学で学ぶための教材
独学で絵を学ぶならそれはもうさまざまな教材があるけれど、自分の気質やレベルに合った教材となると選ぶのが難しい。あれこれ手を出してみて「これ自分に合ってるな」と感じるものや続けやすいものを選ぶしかない。
無料で簡単に試せるものも多いので、とにかくフットワーク軽くホイホイ試してみるのってすごくいい。合わなければ簡単に乗り換えていい。「教材選びに失敗したくないからあれこれ迷ってる……」みたいなお悩みをたまに聞くけど、適当に雑に選んで取っ替え引っ替えしていいと思うんですよね。(散財しない程度に無料お試しを利用するなりして。)
とりあえず受け身で始められるオンライン講座
よくある「絵が上手くなりたいけど何から始めたらいいのか分からない」という人の場合、明確に「このモチーフを描きたい!」「こんな絵を描きたい!」みたいなものは特にないのだと思う。明確なビジョンがある人は迷う間もなく描き始めているだろうから。
「何となく絵を描いてみたい、でも何から始めたらいいのか分からない」でも全然よくて、そういう場合は「何となく受け身で始められるオンライン講座」を利用するという手がある。
たとえばpixivの提供する無料のお絵描き動画講座『sensei』というサービス。
簡単な顔の描き方からポーズの付け方、背景まで順序立てて一通り教えてくれて、講座を修了する頃には何となく格好のつくイラストが描けるようになっている、というもの。
基礎編は無料。pixivのプレミアム会員登録で実践編の動画も全て視聴できるようになる。プレミアム会員は月額550円だから半年で3000円ちょっと。コストパフォーマンスで言えば、下手な書籍を一冊買うより断然リーズナブルだと言える。
『sensei』の良い点だと思うのは、一通り系統立てて学ぶことができるということ。独学だとついつい好きなことや得意なことばかりやってしまって、苦手なことを放置しがち。(バストアップだけ描いて身体を描かないとか、背景がいつまで経っても描けないとか、そこで行き詰まって挫折する。)
その点カリキュラムが組まれている教材だと苦手なこともしっかり通れる。
絵を学べるおすすめのサイト
「人体の構造をしっかり把握して、説得力のある人間を描きたい」というように絵を学ぶ上で自分の指針がある場合は、講座的なサイトを利用することもできる。
自分がお世話になったのは『人を描くのって楽しいね』という有名な老舗サイト。
クリスタ(CLIP STUDIO PAINT)の会社セルシスが運営する『イラスト・マンガ描き方ナビ』では、主にデジタルイラストの描き方について講座が充実している。「こういう塗り方してみたいんだけど、どうやって塗ればいいのかな?」みたいに知りたいことがはっきりしている人は、サイト内を検索すればたいていのことは書かれている。
有料のお絵描きオンライン講座『パルミー』というサービスもある。無料講座だけでもかなりの量があるので、初心者だったらまずは十分かもしれない。
デッサン本やクロッキー本の模写をする
「デジタルイラストを描きたいわけではなくて、別にSNSとかにも投稿したくない、マイペースでコツコツ絵を学びたい」というなら書籍のほうが落ち着いて取り組みやすいかもしれない。
デッサン本やクロッキー本は買って眺めるだけでは全く意味がなく、「とにかく全部模写してみましょう」というのはよく言われる練習方法。なので選び方としては「これならすみからすみまで模写してみたい!」と思える、好みの作例の書籍を選ぶのがいちばんいい気がする。
自分がいいなと感じて気に入って使っているのはこのあたり。
まずおなじみのルーミス『やさしい人物画』。20年前くらいに出会って、たびたび思い出したように模写している。美術解剖学の要素もあるので、何度模写しても新しく発見があったり覚え間違いに気づいたりできるのがいい。
『人物を描く基本 使える美術解剖図』は、pixivの「アナログ部屋」代表・三澤寛志氏によるもの。美術解剖学を含めた作例がたいへん好みで、こちらも信頼して使っている。
クロッキー本は『人物クロッキーの基本』。線の勢いが好みで選んだもの。
クロッキーは人によってやるやらない・効果のあるなしの考え方が違うけど、自分はこの線の感じが好きで、真似して描いてみたりしている。
ひとりよがりにならないための添削サービス
絵の練習って「すごく上手くなったぞ! 最高傑作だ」と思っていてももう少し上達したらアラばっかり見えて……の繰り返し。どうしても自分では自分の絵のことが正確に見られないので、油断するとそこで上達が止まってしまう。
楽しく絵を描きたいだけなら上達が止まろうがいいのだけれど、「もっと上達したいのにどこが悪いか分からない」だと苦しいし、さらに「人に見せて評価されたい」みたいになってくるとそこからコトがこじれてきたりする。
「こんなに上手い絵なのになぜいいねがつかないんだ! いいねを増やすにはどうすれば……まずはフォロワーを金で買って……」みたいにこじらせてしまう前に、添削サービスなどで自分の絵を客観的に評価してもらうこともできる。
インプットをしていく
イラストを描く人々の中で揉まれていると、自分にはない表現に刺激を受けたり、ときには激しく嫉妬をしたりして、それが上達への力になることもある。学校なり集団の中で絵を描くのって、それがいちばん大きな意義なんじゃないかと思う。
一人で淡々と絵の練習をしているだけだと自分の表現から出ることができないので、もし上達したいということなら意識してインプットをしていくことって大切なのかも。
SNSでいろいろな作品を見たり、アニメやマンガに触れたりなど。自分の場合は特に「好きな作品の二次創作をしたい、ジャンルの上手い人の絵を見てたくさん吸収して、もっと上手く納得いく推しを描きたい」という気持ちがいちばん原動力になった。
必要なソフトの使い方を学ぶ
あと、デザインの専門学校だと有利になるのがAdobe製品など必要なソフトを学べるという点だと思う。
ソフト自体はそれこそ独学でも十分学べるし自分も本やネットで調べて習得したけれど、Adobe CC(Adobe Creative Cloud)も学生割引で安く使えるのが学生の最大のメリットとなる。
たとえば大手スクールのデジタルハリウッドAdobeマスター講座。受講すると学生・教職員個人向け割引価格でAdobe製品が使える。Adobe CCが1年分ついてきて39,980円。むしろAdobe CCを安く購入するために受講すればいいんじゃないかっていうくらいの価格。
絵を趣味で描くだけなら必要ないけれど、もし「イラストを仕事で描きたい」という場合はAdobe系ソフトのスキルは必要になってくる。
独学のデメリットもある
自分でやるべきことを取捨選択してやっていけそうにない……という人は、学校なりスクールなりで既存のカリキュラムに沿って学んだ方が確実なのかもしれない。
そこらへんのカリキュラムを自分で組んでやっていけさえすれば、絵は独学でも身につけられる。それでも、ある程度のデメリットはあるにはある。
くじけてしまう、あきらめてしまう
立派にカリキュラムを立てられても予定通りにいかないのが人間というもの。仕事や学業が忙しくなれば「何で私は絵なんか描いてるんだっけ?」となってあきらめてしまう人もいる。もともとやってもやらなくてもかまわないような優先順位の低いことって、生活に追われればどうしても後回しになる。
学校やスクールの場合だと「なにくそあきらめてたまるか、こっちは高いお金払ってんだよ〜!」という点でも踏みとどまれるのかもしれないけど、それがない独学の場合は自分で目標を立てるなりペースを変更するなりして調整する必要がある。
ひとりよがりになる
一人だけで取り組んでいると、自分が上手いと思ってしまう、というのはある。自分が中高生の頃まだネットもなく、絵を評価されると言えば地区の美術展くらいなものだった。出せば賞をもらえるような状況が長く続くと「自分はまあ絵は上手いんだろうな」というとんでもない傲慢さが心に巣食ってしまい、その後の挫折でどえらいダメージを負い続けることになった。
今はSNSで上手い人の絵を見まくれる時代だけど、「そんな絵柄は自分より劣っているから興味ない」「他人の絵なんか俺より下手くそだからどうでもいい」みたいに唯我独尊していると、のちのちのしっぺ返しで立ち直れないほど吹っ飛んでしまうんじゃないかと思います。
このダメージは一回吹っ飛んで終わりではなく、ターンが終わってもスリップダメージみたいにずっと自尊心が削られ続けるので、本人はダメージ受けてることにすら気づかずとんでもないところまで闇落ちしていることになる。残りHP1。中高生くらいならそれもまた学びだけど、年齢いってから食らうとへんなプライドもあってなかなか立ち直りにくい。
絵に限らず芸事の上達のためにはなるべく早く恥をかいて大海を知ることが肝要だと思うのだけど、一人で描いているとなかなか難しい。
コネがない
また、独学の場合はコネがない・作りにくいので、就職をするなり副業でイラストの仕事をもらうなりするには自力で実績を積まねばならない。
ただ、今はクラウドソーシングサービスなどで仕事も請けられる時代だし、そこまでのネックではないと思う。
独学でもやれること
学校やらスクールやらに通わずとも、やれることはたくさんある。
……みたいなことを、自分のできるところからあれこれいろいろやってみることになる。
「ええ〜、いっぱいありすぎてめんどくさい」「そんなの全部なんて無理無理、できないよ」と感じてしまう人のために、お金を出して学ぶイラストやデザインの学校があるんですよね……。