絵を描く気力が出ない…モチベーションを保つための理論があるんだって

絵を描くモチベーションが無くなってしまった。自分には才能がないのかも…。やる気を出したいのに出なくて絵が描けない。

と焦ってしまう人向け、【モチベーションを保つための理論に則って三つの欲求(存在欲求・関係欲求・成長欲求)を満たすための行動をしてみる。】という記事。

絵は毎日描くことが上達の秘訣、なんて分かっていてもなんだかやる気が出なくて、絵が描けないときっていうのはある。たぶんプロだってそういうときがある。

もちろんしがないインターネットお絵描きマンの自分も、過去に「モチベーションが上がらないしこれからも上がる気がしない。私のお絵描き人生、もうこのまま終わりなのでは?」ということが何度かある。でもそこで「やっぱり自分は才能がないから」とか「センスが足りないせいだ」とか悩んでも思考停止するだけで悪循環。

そうではなくて、理屈で考えて行動してみたらよかったよ、という記事。

モチベーションを保つための三つの要素を考えてみた

経営学に【ERG理論】というのがあるらしい

経営学にモチベーション上げのための【ERG理論】というのがあるそうだ。

組織が発展していくにはそれぞれの社員のモチベーションを高く保つ必要があるけど、そのためには、

  • E …Existence(存在の欲求。物質的に満たされて安心して存在できること)
  • R …Relatedness(関係の欲求。良い人間関係を築くこと)
  • G …Growth(成長の欲求。自分が成長できること)

これら三つが満たされる必要があるとのこと。

つまり、社員としては、十分な給与をもらえて(存在欲求満たされる)、職場の人間関係も良く(関係欲求満たされる)、ここで自分が成長できると感じる(成長欲求満たされる)ときに、モチベーションを高く保てるので組織の戦力となる、というもの。

どれか一つが欠けてもダメで、例えば「人間関係も良くて仕事もやりがいがあるけど給料が十分でなく生活が不安定」とかだとやっぱり転職を考えてしまう。

また「給料もいいしやりがいあるけど職場の人間がみんなギスギス」とか「給料もいいし人間関係も良好だけど、ここにいても成長できないかも……」とかでもモチベーションは保つのは難しくて、三つが揃っているのが理想なのだそうだ。

Twitterで絵を描く場合に置き換えてみる

絵でも似た要素があるかもと思ったので、Twitterで絵を描く場合に(むりやり)置き換えてみるとこんな感じ?

  • 不安なく絵を描けて、そこそこ見てもらえる(存在欲求)
  • フォロワーさんと良好な関係がある(関係欲求)
  • もっといい絵を描こうと思える(成長欲求)

たしかにこうして見れば、どれが欠けてもちょっとバランスが崩れるかもしれない。

というか、それぞれがそれぞれに影響を及ぼしあっている三つ巴という感じ。

だったら、自分がどこでボタンを掛け違えているのかを考えて、そこを修正すればいいんじゃないか。会社員と違って、全部自分で調整できるわけだから。

存在欲求を満たしてみる

存在欲求というのはつまり「不安なく、安心してそこにいたい」という気持ち。三つの中だといちばん基本になる原始的な欲求。たしかにこれが満たされていないとモチベーションどころではない。

絵を描く場合だと、自由に好きなものを描いても誰からも害されない、安心して絵を描ける環境、といったところだろうか。

いいねの数にこだわらないようにしてみる

Twitterで絵を描いてて不安なのって「反応がなさすぎて自分の絵に魅力がないんじゃないか」「今回の絵にいいねが少なかったけど、下手になったのかな……」みたいに感じてしまうようなケースがまずあると思う。

そういうときはTwitterの解析機能である【ツイートアクティビティ】を見てみると、インプレッションに対してどれくらいの反応をしてもらえているか分かる。数だけで見ると「今回いいねが少ない!」と感じても、単にインプレッション(見られた総数)が少ないだけ、ということも多い。

「いいねの数」が不安の原因になって、それがモチベーションを下げているとしたら、一度確認してみるといいのかも。

鍵アカウントにしてみた

他には、自分も経験があるけど、二次創作などデリケートなものの場合「描きたいけどどこかから批判されないか不安」みたいなこと。「描きたいけど怖い」という状態はアクセルとブレーキを同時に踏んでいるみたいなもので、自分の場合は少なからずモチベーションに影響する。

そこで二次創作は鍵アカウントで行うようにしたのだけど、これでかなり安心感が持てた。

というか鍵アカウントにしてみて初めて「今まで自分はだいぶ緊張してたんだな」というふうに気づいた。何十年来のオタクなので、誰でも見られる状態で二次創作をすることに知らず知らず不安を感じてしまっていたんだと思う。

当然RTはされないので見てもらえる数やいいねの数とかは減るのだけど、自分の場合それでモチベーションが減るかというとそうではなくて、安心して楽しく描けるので逆に投稿頻度が増えた。不思議なもので。「私はたくさんの人に見てもらいたいというよりは、とにかく安心して描きたいものを描きたかったんだなあ……」と、鍵アカウントにしてみてしみじみと分かった。

※「フォロワーがまだ少ないから鍵アカウントにしちゃうと誰にも見てもらえないんだけど……」という場合はpixivから来てもらってお仲間だけにフォローしてもらうとか。

関係欲求を満たしてみる

職場でもTwitterでもどこでも、良好な人間関係というのは、そりゃあ重要なことだ。「人は一人では生きていけない」というのはよく言われるけど、これは「助け合いが必要ですよ」という意味だけじゃなく「人は社会性の生き物だから、誰かのためにと思うと何倍も力が出る」という意味でもあると思う。

特定の誰かに伝えるために描いてみる

自分の考える【関係欲求】の満たしかたは「フォロワーさんに積極的に絡もう、リプしまくろう」とかではない。

いつもいいねをくれるあの人に伝えるために(勝手に)描く、というの。これ、かなり満たされる。

「あの人、こういう絵を描くといつも見てくれていいねをくれるよな。じゃあこんなのも好きなんじゃないかな、どう? 分かってくれるかな? 伝えたい、伝わったらいいな」みたいな感じで自分は描くことがある。

絵を描くのってコミュニケーション(伝えること)だから、伝えたい誰かがいるのといないのとでは大きくモチベーションが変わってくるし、伝えたい相手を想定することで驚くほど気持ちよく絵を描ける。

※「伝えたい!」と思って描くこと自体に大きな意義と大きな自己満足とがあるので、結果として「あの人」がいいねをくれなくてもいい。

いいねをすると満たされる

自分はけっこうファボ魔というか、「それ好き」と思うと絵以外でもバンバンいいねしてしまうんだけど、これもコミュニケーション(伝えること)の一つだと考えている。

たかが指先一つのいいねではあるけど「それ好きです、ってことを伝えられた!」と自分は感じられる。こんなことでも、関係欲求って満たされる気がしている。

成長欲求を満たしてみる

人っていくら恵まれた環境でも「このままここにいたら成長できない」と思うとそこから出たくなるのだそう。いいねがそこそこついてフォロワーさんとも仲良くて、でもモチベーションが上がらない……という人だっているだろう。

「私はなにをぜいたくなことを言ってるんだ!」とか思わずに、そういう場合は成長欲求を満たしてみるといいのかも。

インプットしてみる

やる気が出なくて気が進まないと「あースランプだ、きっと自分には才能もセンスもないからだ……このまま描けなくなってしまうのかも」みたいに不安でいっぱいになってしまうけど、モチベーションが上がらないってそんなにたいした話じゃなくて、

「単に出すものが無くなっちゃった」

ってことが多いと思う。

自分は「飽きたなー」という感覚が来たらインプットが枯渇したサインだと思うことにした。

「モチベーションが下がった! やる気が出ない!」と思うから「こんな自分はダメなのでは!?」と焦ってしまうわけで、

「ちょっと飽きてきたなー」と考えれば「そりゃ同じようなことをこれだけ描いてりゃ飽きるだろう」ってちょっと気が楽になる。「じゃあ何か他の面白いことを見つけに行こう」となる。

まわりを見ていても"前のジャンルでは生ける屍みたいになってた人が新しいジャンルにハマって毎日ガンガン描き始めた"なんてことはよくある。

ゲーム実況動画でも、"前のシリーズ失踪した人が3年ぶりに帰ってきて精力的に動画を上げ出した"ってこともよく見る。

出し続けて空っぽになった人が、何かを吸収して帰ってきて、再び出し始めた。

つまり、アウトプットし続けたので、インプットが足りなくなった。だからしばらくインプットのために時間をかけた、それだけの話なんだと思う。

「絵を描くためにインプットしなきゃ」みたいに思うとこじれるので、絵と関係ないもの。映画、小説、あとは神社仏閣を見たり。

映画とか小説も、普段の自分が見ないような、普段の自分のジャンルにかすりもしないようなところを行く。直近で言うと前回の枯渇時、私はアマプラで『メンタリスト』を全部一気に見た。

何がどうインプットになったのか気分転換になったのか分からないけど、その後スランプ状態からは抜けました。

※上で「プロだってやる気が出ないときはあるだろう」と書きましたが、プロの場合はインプットや気分転換も仕事のうちと考えて、安定したモチベーションを維持するよう日頃から心がけているのかもしれません。

自分の画力を上げる行動をしてみる

モチベーションの低下が、自分の画力が原因の場合もある。

描きたい気持ちはあるのに手がついていかなくてイライラ、「私なんでこんな絵が下手なのー! こんな画力じゃ絵なんか描けないよ! もう絵を描くの嫌だ……」というケース。

自分のまわりには「あーモチベがやばい!」とか言い出すと同時にデッサン会やワークショップなどに行ったり、作品を添削してもらったりして自分に喝を入れるといった、アクティブな人が多い。これは無意識で成長欲求の不満を察知して、それを満たすための行動なのかも。

(ただ、今のご時世だとワークショップは難しいので、オンライン講座やネットサロンなどが代わりになるのかなと思う。)

添削してもらうというのも、はっきり言ってもらうと逆にやる気が出るような前のめりな人にはすごくいいみたい。

自分の場合はそこまでアクティブではなく、心も折れやすいし人となるべく接したくないので、そういう力不足を感じる時期はスケッチ本などの書籍を模写する練習をしていた。

デッサン会やネットサロンとは違って生身の講師はいないけど、絵が上手い人が私のために描いてくれたお手本(書籍の作例)が目の前にあるわけだから、それを見て描く。自習ですね。

自力で発想がわかないときでも、見て描く、真似して描く、という練習ならできる。

しかも、私ちゃんとやってるぞ感・サボってないぞ感もある。

あと最近だと、なぞって描くという練習にちょっと新たな方向性を感じた。

スランプのときって自分の体も気持ちも固くなっていて、なんの発想もわいてこなくて、自力で描こうとしてもドツボにハマる。そしてもっと内側にこもってしまう、自信も余裕もゼロになる……。

枯渇ぐあいが重度のときに、練習ドリル的な教材は無になれてよかったです。

それでもダメならちょっと離れてみる

給料も少ないし人間関係ギスギスだし成長も望めない職場の場合、「こんな会社やめよっと」となると思う。リカバリーのしようがないし、どうしようもないし。

絵も袋小路に入ってしまったら「ちょっとやめてみる」ことができる。

自分も「絵なんかもう一生描かないぜ」と思ったことは何度かあり、実際全く描かない時期も数ヶ月から数年に及ぶこともあった。

一度は高校を卒業して、美大ではない普通の大学に入ったとき。「あーもうこれで一生絵なんか描かなくていいんだ」と音楽サークルに入ったりスポーツ観戦をしまくったり、バイトに明け暮れて過ごした。

しかしその後、同人活動へと舞い戻り、また絵を描くことに。

もう一度は同人活動に挫折を感じ始めた20代後半、描いても描いても全く反応がもらえず(かんこな期)「やーめた!」と思って旅行しまくったり、断捨離にハマって掃除ばっかりしていた。あ、シナリオ学校にも行った。

しかしその後、知り合った人からデザインの仕事を紹介してもらって、また絵を描くことに。

どちらのときも、いったん絵から離れて違う世界を見て、違う世界で生きてみたことで、生きる気力が回復したんだと思う。

若い人ほど「絵を描かない時間が惜しい」「サボったら周りに置いていかれる」と感じてしまうと思うけど、そんなことはない。心が滅する前にどこかで回復したほうが、予後がいい。

「こういう例もあるんだな」と気楽に考えられるといいかなと思ったので、自分の例を上げてみた。

モチベーションが下がったときやらないようにしていること

逆に、これやっちゃうとドツボだなと経験上感じたことについて。

SNSで愚痴るとよけいに刷り込まれてしまうのでしない

口に出してしまうことで「私スランプなんだ……」「描けないんだ……」と刷り込みを強化してしまうっていうのはあると思うので、調子が悪くても幻のままにしておくようにしている。

熱っぽいとき体温計で数字を見ちゃうとよけい具合悪くなるから敢えて測らない、みたいなもので。(※本当に熱っぽい場合はちゃんと測って対処しましょう)

どうしてもSNSで言いたい場合、言葉選びが上手だなと感じたのは、

「あー、いったん出し切った気がするからちょっと充電しよう」

「新しいものをインプットしたいから、何か元気の出るおすすめ漫画教えてください」

みたいな言い方。

自分のガス抜きにもなりつつ、更新頻度が落ちますが心配しないでねということをまわりにうっすらお知らせしつつ、おすすめ漫画も教えてもらえるかもしれない。まわりにいやな感じも与えない。「あー、そんなときもあるよね」と軽く受け止めてもらいやすい。

SNSに張り付くとしんどいのでしない

SNSって心が元気なときでも嫉妬や焦りのトリガーになる。

モチベーションが落ちているときに見るとよけいに効いてしまう。

「こういう絵柄が流行ってるんだ」「私もこういうのを描けばいいねが伸びるかも」などとおかしな迷走を始めたり。(したことがあります)。

アプリを消したり、消さなくてもいいから、何重かの入れ子にしたりスワイプしないとタップできないところに置いたりして、起動するまでに一手間増やす。これは意外とバカにできない効果があります。

もしくは別の息抜きアカウントでイラスト以外の交流をする。

理屈で考えてみて、それでもダメなら離れてみる

やる気が落ちたときは、モチベーションを維持するための三つの欲求(存在欲求・関係欲求・成長欲求)のうち、欠けがあればそこを補う。というふうに行動ができる。

自分が自分なりに考えてやってみてきたことをまとめると、こんな感じ。

  • 安心して描ける環境を作る(いいねの数にとらわれない・必要なら鍵アカウントにするなど)
  • 関係性を意識する(誰かに伝えることを想定して絵を描く・いいねで「好き」を伝えるなど)
  • 成長のために行動を起こす(インプットに充てる・画力を上げる取り組みをするなど)

それでもダメならたぶん問題はその段階じゃないので、SNSを含めてちょっと絵から離れてみる。

モチベーションを精神論で考えてしまうからしんどいんだと思う。

自分はけっこう年いってるので「やる気がないのは気の緩み! 気の持ちようでなんとかしろ」みたいな世代の教育を受けてきて、今思うとまるで非合理的でよろしくなかった。

若い世代でも「モチベーションが上がらないのは自分がダメだから」みたいに考えてしまう人がいるのかもしれないけど、非合理的でしんどいだけだし、よろしくないと思う。

まずは理屈をつけて、悩むのではなく考えて、合理的に行動してみることで、絵以外でもむやみに悩んだり苦しんだりしなくなってきました。

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