「絵の練習なんて続けても意味がない」←これは怠けるための心理の罠

絵なんか練習しても上手くならないかもしれないし、練習する意味あるの?

絵の練習なんてやっても無駄だから意味がない、続けられない

と思ってしまって、絵の練習を続けられない人向け【これは現状維持バイアスという心理の罠……と判断して、つい陥りそうになったら気づいてやめるようにしています】という記事。

「自分なんか才能もセンスもないんだし、絵の練習なんてしても意味ない……」みたいなことを、以前の自分は口癖のように言っていた。

今思うとこれって「私は才能ないんだし」「センスないし」というもっともらしい言い訳をつけてるけど、とにかく絵の練習をしたくないだけだった。

上手く描けないから練習がイヤになる、ということは確かにある。美大受験のために実技の練習をしていた頃は、受かるかどうか不安になったり行き詰まってしまって練習に関わるすべてが苦痛になることもあった。

でも自分の場合、絵を描くのがイヤというよりは「新しい習慣をつけるのがめんどうだし、せっかくがんばって無駄になるのがイヤ」みたいな心理が根底に大きくあった気がするのだ。

人には【現状維持バイアス】というものがある、というのを知って「そうか、私はずっとこれだったのかも」と思った。

ずるずると怠けてしまう理由は【現状維持バイアス】

【現状維持バイアス】というのは、今までと変わったことをして変化がもたらされるのを嫌う心理なのだそうだ。

脳にとって変化というのは大きなストレスになる。変化に対応するためには、脳がよけいに働かなければならないからだ。脳がいっぱい働いたらグルコースも消費するし、その分グルコースが補充されるかどうかも確約されていない。もし消費した分のグルコースが補充されなかったら、生命の危機に陥ってしまう。

生命(グルコース)をかけて取り組んだことが無駄になるのでは、おそろしい。見合った利益が約束されているのでなければ、とてもじゃないけどやりたくない。

だからなるべく今まで通り、変わったことをせず、現状維持を最良としてしまう。これは人間の本能的なものらしい。

自分の場合、絵の練習も同じだった。

「絵が上手くなりたい」という気持ちと「新しいことを始めてそこに費やす労力がもったいない、めんどくさい」「失敗したら自尊心が傷つけられてしまう、それは怖い」という気持ちを天秤にかけ、後者の「めんどくさい」「怖い」が勝ってしまっていた。

でも「労力を費やすのがもったいないしめんどくさい」とか「上手く描けなくてプライドが傷つくのが怖い」だと、言い訳としてちょっと弱く我ながらダサいので自分を納得させられない。

「どうせ私は才能ないんだし」「センスがないからどうせ練習しても無駄だし」とかならよりもっともらしいし、自己憐憫の気持ちよさも味わえてお得なのでついこっちを採用してしまっていた……気がするのだ。

でもこれって、無駄に自分を貶めてないか? と気づいたのでやめてみたという話です。

私はどうもそういうふうに思いがちなクセがあったらしく、学生の頃に「ダイエットしたい、でも私はどうせブスだから痩せても見た目良くならないかもしれないし、だとしたらがんばって痩せても無駄だし……」とぐちぐち言って友人に「じゃあ一回痩せてみれば? 痩せてみてやっぱブスだったわー、ダイエット無駄だったわー、ってなったら思いっきり食べてもう一回太ればいいよ。爆食いして激太りすんの楽しそうじゃん。太ってるの好きなんでしょ?」と全力の皮肉をこめて言われたことがある。

「言い訳ばかりして努力しないことは本当に愚かですね」ということがより分かりやすいエピソードだと思う。

現状維持バイアスの理由をこじつけるために、わざわざ自分の自尊心を自分で損なうような言い訳をする……これでは自分自身が気の毒だし、まったく前に進まない。

【現状維持バイアス】を乗り越える

じゃあその【現状維持バイアス】を克服? して何かを続けるにはどうするかというと、習慣化してそして新しい習慣のほうを「現状」にする。

絵の練習にせよダイエットにせよ、いろんなことに挫折し続けていろんなことに言い訳し続けて、それをなんとか乗り越えようとしてきた自分が今思うのは「習慣化するにはなるべく脳にストレスを与えず、しれーっと、騙し騙しやるのが良さそう」ということ。

「よーし今日からやるぞー! いざ!」みたいに始めちゃうとそのときは脳が興奮状態だからいいけど、醒めたとたん脳が「私は才能がないのに無駄では……?(要はめんどくさくなってやめたくなってきただけ)」と言い訳を探し始めるので、なるべく気持ちを盛り上げないで、ぬるっとしれっと始めるというか。

何も考えず自動的に始める

絵もダイエットも「やる時間とやることを決めてしまい、その時間になったら何も考えず自動的に始める」という戦法をとった。

「運動しなきゃ、あーやだな、こんなことしてほんとに痩せるのかな」と考えても意味がないので、決めた時間に自動で無になってジムに行く。

「絵の練習しなきゃ、あーでも無駄なんじゃないかな」と考えても意味がないので、決めた時間には無になってApple Pencilを手に取る。

ひとたび「いやだな」と思ってしまうと絶対に言い訳を探し始めてしまうので、そうなるとまた自分いじめみたいな言い訳を引っ張り出してきて無駄に自分を傷つけることになるので、言い訳回路を遮断するようにしていた。朝起きるのとか風呂に入るのもこの戦法にしている。

描くものを決めておく

回路を遮断して自動的にやるためには、描くものを決めておく必要がある。

自分がやっているのは、

  • カメラロールに模写したいものをためてお気に入り登録なりフォルダ分けなりしておく
  • デッサン本などを順番に模写する。ページにしおりをはさんでおく

みたいな感じ。ジムにちょっと通ったとき思ったけど、やることが細かく決まっているほうが自分は続けやすかった。

日頃、自分がやってみている工夫について書いている記事です

「自分は何をどう描きたいのか」をいったんハッキリさせてみる

「自分は何を描きたいのか」とか「何のために描きたいのか」というのもいったんハッキリさせておくと、かえって何も考えずに続けやすい気がする。(いったんハッキリさせるだけでよく、いつもそれを掲げている必要はない)

【現状維持バイアス】というのは「それをやったときに得られるメリット」と「それをやらなかったときの損失」を秤にかけて、後者に重きを置いてしまうために起こるからだ。

例えば「SNSでいいねを多くもらいたい」という動機で絵の練習をする場合、「苦労して練習してもなかなかいいね増えないな……このまましんどい思いして練習しても無駄なんじゃないか、やめよっかな」になりがち。

でも「大好きな推しをたくさん描きたい」「推しをより思い通りに描けるようになりたい」という動機があって絵の練習をするなら、損失は起きにくい。目的に他人が絡まないから心も乱されにくい。

「いいね欲しいから」という動機が悪いのではなく、長く練習を続けていく動機としては弱く、揺らぎやすいとは言えそう。それを踏まえた上で「3ヶ月練習していいねがこれくらいしか増えなかったらやめよう。別のことでいいねを稼ごう」みたいに目安として決めるのならドツボにハマることもない。いろいろやっていくうちに、損得なく楽しく打ち込める別のことが見つかるかもしれないし。

【現状維持バイアス】というものを知ってから、いつしか「どうせ私は……」と思うことがなくなっていた。何かの困難にぶつかったとき「あーこれ私今めんどくさいだけですね現状維持バイアスです」と気づくことで、言い訳に逃げることがなくなった。

根性論とか精神論が苦手な自分にとっては、理屈で整理したほうが性に合っていたのだと思う。

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