もういい歳だけど絵を描き始めたい…でも、いまさら上手くなれるの?

絵を描いてみたいけど、私はもう○歳だし遅いよね……

絵って若い頃から描いていないと上手くなれないんでしょ? 今更描き始めてもムダじゃない?

と悩んでいる人向け【絵は何歳からでも始められるし、年齢を重ねた分早く上達しやすいこともあるのでは?】という記事。

当たり前だけど、何歳からでも絵は始められるし上達する。

自分のまわりにもたくさんいる。30代で推しのファンアートを描きたくて絵を始めた人もいるし、40代で初めて二次創作をして同人誌まで作っちゃった人もいるし、50代で作品を描きためて個展やグループに出品している人もいる。

そのほとんどが、「○歳で絵を始めたからまだイラスト歴△年なんです」なんて言わなきゃわからないくらいに上達している。昔っから普通に絵を描いてる人みたいに描いている。

※「30歳から絵を始めてプロのアニメーターになりたい」とかだとまた別なのでそれは私には分かりません。あくまでも趣味プラスアルファ程度の話です。

むしろ、年齢を重ねているからこそ、やりようによっては早く上達しやすいとさえ言えるかもしれない。

この記事では、

  • 年齢を重ねてから絵を始めるとなぜ上達しやすいか
  • どこらへんに気をつけたら効率がいいのか
  • プライドやコンプレックスに負けそうなときの考え方

こんな感じのことについて、自分の考え方を書いている。

年齢を重ねた分理解力が高いので上達が早い

「いやいや、歳とってからだと不利でしょ。だって年齢を重ねていくにつれ脳は衰えていくし……」と思っていたのだけど、年齢を重ねることで高まる機能があるのだそうだ。

歳をとると衰えるのは【流動性知能】……新しい情報に適応していく力

維持・強化されるのは【結晶性知能】……語彙力や判断力など経験がものを言う力

年を重ねると脳は衰えるだけなのか?
「年をとると脳は衰える一方である」、そうした先入観を持たれている人は少なくないでしょう。ただ、身体の健康のことと同様に、脳の健康についても飽くまで個人差がある話です。その上でのことにはなりますが、心理学研究における...

たしかに自分の場合でも、「新しい情報をパッと自分のものにしていく反射神経」みたいなものは、若い頃よりも衰えてきているようには感じている。ただそれは単なる反射神経であって、虫を捕食する爬虫類のように反射的にぺっと舌を伸ばしたけど「あっこれ虫じゃなくて枯葉だったわ、ペッペッ」みたいなこともたくさんあった気がするのだ。

今は何でもかんでも一瞬で舌を伸ばす瞬発力は無くなった分、ちょっと考えてから必要な分を必要なだけ取り入れることができるようになり、無駄も減ってきた。

年齢を重ねてから絵を始めるなら、こういった【結晶性知能】を上手く使っていくのがポイントになるのではないか。

【結晶性知能】を上手く使うために

上手い人に理屈を教わるのがいちばんの近道

なんでもそうだけど、いちばんの近道は上手い人に教わることだと思う。

どんなスポーツだってまずはプロのフォームを参考にするし、編み物などハンドクラフトでも基本を知らないことには形にならない。

なのに、これが絵となるとなぜか「他人に教わったら自分のオリジナリティが失われてしまう! 誰にも教わらず自分だけの表現を生み出すべき」とか思いがちで、なぜか自己流に固執してしまってドツボにハマる。打てないのに頑なにフォームを直さないバッターのように、心と身体を壊して脱落していってしまう。

若いうちだとまだまだ「俺が俺が」で尖っていたりして他人に教われなくても仕方ないのかな、みたいな部分ってある。はたまた単純に経験が少ないために理解力が低く、上手い人に教わっても、もったいないことにピンと来なかったり、自分のものにできないこともある。(というか自分が、美大受験のために指導を受けていた高校生の頃にそんな感じでした)

でもこちとら年配者は年齢を重ねた分、語彙力・理解力・判断力など【上手に人から教わる能力】がカンストしている。これを使わない手はない。

これはペン字などでもそうだと思う。子どもの頃にわけもわからず習わされたときは上達しなかったのに、大人になって理屈をちょいちょいっと教わっただけで「なるほど!」となってどんどん上達したりする。

オンライン講座で学ぶ

「上手い人に教わるって言ってもデッサン教室なんか通えないんだけど……」

今はオンライン講座や動画講座もたくさんあるし、どこでも【上手い人から教わる】ができる時代になった。

たとえばpixivの動画講座【sensei】というのがある。基礎編は無料なのでなんとなくふらっと始められる。(プレミアム会員になっている人は全講座がそのまま受講できる)

イラストの描き方を動画で学ぶ! - sensei by pixiv
pixivが運営するお絵かき学習サービス「sensei(センセイ)」。3分動画でお絵かき上達!いますぐ無料ではじめられます。
【sensei】を使って6ヶ月の練習スケジュールを立ててみた記事

それから、イラストのオンライン教室【パルミー】というサービスがある。

パルミーの講座が見放題!月謝制お申込み| お絵かき講座パルミー
パルミーの「月謝制」は講座が見放題のサービスです。人気イラストレーター・絵師の先生や専門学校講師からイラストのテクニックを学べます。キャラクターの描き方やクリスタの使い方までを網羅。ワコム社製最新ペンタブ Wacom Intuos S付プラ...

パルミーはたくさんの絵師が講座を受け持っている。リアル寄りのスケッチからお絵描きソフトの使い方まで幅広くて、自分の知りたいことを優先的にチョイスしていくことができる。無料講座だけでも見尽くせないくらいたくさんある。

書籍で学ぶ

動画だと自分のペースでできないという人は書籍を参考にすることもできる。ただ、書籍だと読んで(ぱらぱらっと見て)おしまいになりがちで、これではワークショップで上手い人が描いてくれている絵を「へ〜」っつって腕組みして眺めているだけみたいなもので、盛大なお金の無駄になってしまう。

書籍は「上手い人が自分のためにお手本を描いてくれている」ものであり、これは自分で真似して描いてみる、模写をしてみるという使い方をしないともったいないのかな、と感じる。

※焦ってしまって素直に教われない人は……

年齢を重ねると理解力が高まる、と書いたけど、それが裏目に出てしまう人もいるかもしれない。

【sensei】でも「まず輪郭と目鼻口を描いてみよう」という簡単な講座から始まるけど、

「私は始めたのが遅いんだからそんな幼稚なことしてられない! ばかにするな。もっと難しいことを知りたいんだよ」と基礎をすっ飛ばしてしまったり、

参考書籍をたくさん買い込んで、

「私はいい年なんだから、ハウツー本は読み慣れてる。絵の描き方なんかざっと読めば理解できる」と見くびって自己流になってしまったり。

結局これでは回り道になってしまう。すぐに行き詰まる。若い頃なら体力も気力もあるから多少の右往左往は平気だけど、年いってからの右往左往はしんどい。すぐいやになる。「どうせ私は年いってるし今さら絵なんか無理だったんだ!」になってしまう。

そういうときはおばあちゃんごっこ(概念)、おすすめです。

「どれどれ、わたしゃおばあちゃんだから何度も聞かないと忘れちゃうんだよ」

「おばあちゃんだから難しいことは分からないよ、もう一回最初からゆっくり言っとくれ」

なんか知らんけどあの"おばあちゃん独特の、いい感じの諦めと謙虚さ(でも謎の余裕に満ちあふれている)"みたいなのあるでしょう。概念のおばあちゃんというか。

きっとこの記事読んでるのせいぜい20代〜40代とかだと思うけど、【おばあちゃんメソッド】いいです……自信と余裕があふれてきて幸せになる。(男性のかたでも、おじいちゃんより概念のおばあちゃんになってみるのがいいかも?)

自分はこれを大昔に2ちゃんかどこかで知ったのだったかな……。この感覚が気に入っていて、思い出しては意識するようにしています。

※プライドが捨てきれなくて逆につらい人は……

「若い子があんなに上手いのに、自分はいい年して下手で恥ずかしい、みじめ」

という気持ちが湧いてくる人もいるかもしれない。

この感覚、実は年齢は関係ないのではという気がしている。だってこれどんなに若い人でも言っているから。

20代前半の子だって「あの絵師さん高校生なんだ……!? 若い子みんな上手くて焦る、私はいい年して全然下手なのに!」とか言ってないですか……?

高校生の子だって「私はいい年なのに全然描けなくて恥ずかしい!! 中学生でももっと上手い人いっぱいいるのに!」とか言ってないですか……?

もうこれ単なる"若さへのコンプレックス"であって、どうにかして理由をつけて焦りたい、自分がみじめな理由を見つけたいだけなのではないだろうか。(自分の場合はそうだった気がする、という話です)

「私も、もっと早くから絵を描いていればよかった」

と後悔する人もいるかもしれない。

でもこれを言ってもただのドツボ。当たり前だけど時間は戻せないので。こんなふうに取り戻し不可能な理由をつけることで「だってしょうがないじゃん、もうしょうがないじゃん、がんばってもしょうがないじゃん」とできない言い訳にしてしまうの、自分はついやりがち。

自分もそうなのだけど、そんなふうに後悔するくせがある人は、もし若い頃から恵まれた環境で絵を描いていたとしてもたぶんどうせ何かしら理由をつけて悩んでいたと思う。

この言い訳づくりの思考回路に気付いてから、やめてみています。「いやいや、それ言ってもしょうがないから。今が私のベストタイミングだから」と意識して切り替えるというか。

年齢を重ねた分、楽になって得なこと

年齢を重ねる上で良いことって、いい感じに割り切る諦めのよさが生まれ、競争意識が減り、経験が増えた分自分のできないところも知って謙虚になる、みたいな部分だと思う。これによって、絵を描く上でもかなり楽になった。

変なプライドを持たなくてすむ

自分は今まで長く(年月だけは長く)絵を描いてきたのだけど、最もタチの悪い敵は「変なプライド」だった。

「小学生の頃から描き始めてるんだから、私は上手く描けて当たり前」

「私は美大受験も経験してるし中学生からプロに習って描いてるんだからそこらへんの素人より上手く描けなきゃおかしい」

「私の絵の良さが素人にわかるもんか」

みたいに、中途半端に長く描いていたぶんプライドにとらわれて、ペンを持つ手も震えるし嫉妬やら焦りやらで絵を描くどころじゃなくなり、そうなると上達もしなくなり、精神もねじまがり、友達もいなくなった。これはとても苦しい。

「30代で生まれて初めて絵を描き始めた! なにこれ、楽しいー! あれも描いてみたい、これも描いてみたい!」という人に、画力でもどんどん抜かされてきた。

そう、私は「長いこと絵を描いてきたのに、年齢を重ねてから絵を始めた人にバンバン抜かされてきた人」なのです……。だからこそ言える。年齢を重ねても絵は始められるし上手くなる。

周回遅れで参加できる余裕

また、「描き始めたのが遅い」ではなく「周回遅れで参加している」というふうに考えるといいのかなと感じる。

まわりで巻き起こる苛烈な競争を横目に、「私は30代で絵を描き始めたんだから、今はまだまだ上手く描けなくて当たり前だもんね」と周回遅れでマイペースを保つことができる。一周多く回っている人に、ムキになってスパートをかけなくたっていい。

分析力やスケジューリング能力があるので効率がいい

以前「頭のいい人は絵も上達しやすいんじゃないか」という記事を書いた。

要は自分に足りないものを分析したり、逆算してスケジューリングできる能力があると絵の練習も捗りそうだよねといういう話。

年齢を重ねて社会人としての経験も積んでいると、自然とこの能力も磨かれていると思う。

むやみやたらな10時間より効率のいい1時間のほうが身になること、年齢を重ねたわれわれはよーく身にしみて知っていますものね……。

年齢を重ねてから始めるデメリットがあるとすれば……

とは言え、年齢を重ねることでデメリットがないわけではない、とも思う。

肉体的に無理が効かない

自分の場合、年齢が上がることで体力と気力はやっぱり落ちた。

気力だけで無茶してもすぐ体にガタが来るし、その気力も無限ではない。仕事にも責任が増え、家庭のこともあったりして、絵のことだけを考えていればいいわけでもない。

さすれば、今こそ鍛え上げしスケジューリング能力を発揮するとき……。たとえば短時間で練習する工夫をしてみるなど、若い頃とはやり方を変えてみている。

デジタルで描いたことがなく、戸惑う

年をとると衰えるとされる【流動性知能】。新しいものに適応する能力が落ちると言うことは、デジタルで絵を描く場合ネックになるかもしれない。

自分は今までイラレ、フォトショ、お絵かき掲示板、SAI、コミスタ、クリスタ、メディバンなどといろいろなソフトを渡り歩かざるを得なかったのだけど、若い頃よりも適応力は落ちている気がする。(最近特に「便利な機能があるのは知ってるけど、いいや、めんどくさいから手動で処理しよう……」みたいになりがちです。)

もし「今から初めて絵を描く、しかもデジタルで描く」という人の場合、やはり最初は戸惑うかもしれない。若い人だと驚きの適応力であっという間にできちゃったりするので、そういうの見るとつい焦ってしまうのだけども。

そういうときこそ【もうおばあちゃんだからメソッド】で余裕をかまし、まずは無理せずコピー用紙でゆうゆうと気軽に描き始めるんでもいいじゃないか……。「気が向いたらデジタルも少しずつやってみようかねえ」みたいな感じ。

絶対にデジタルで描くべき! などということはないのだし。

デジタルとアナログ、どっちにもそれぞれ長所と短所がある
コピー用紙は気軽に描き始めやすいと思います

ジャンルの年齢層が若すぎて入っていけない

「ジャンルの年齢層が若くてついていけない」って、20代の人でも言ってたりするよね……。

「自分は歳行ってるしな……こんなおばさんがすみません」みたいな引け目からか、

「いい年して絵を描くなんて今さらだよね、まわりが若すぎて無理……」

「もう○歳なのに絵を描き始めちゃって恥ずかしい、全然下手で」

など、言い訳というか自虐というか、ついこういうことを自分もいっぱいSNSで言ってしまっていたのだけど、でもこれって自分で壁を作ってしまっているというか、わざわざ相手に先入観を植えつけてしまっていることになる。

そうするとジャンルでも仲良くなれる相手が絞られてしまう。

たとえば「もう私は30代のおばさんだから全然絵が上手くならなくてー」と言うことで、年下の人にとってみれば「おばさんの自虐めんどくさいな」になるし、年上の人にとってみれば「30代でおばさんとか言ってるけど、私あなたより年上なんですけど?」になる。

当然ジャンルでつながりもできにくく、同世代だけが同類相憐れむで集まってしまって「私たちおばさんだから仕方ないよね」で思考停止かつ上達停止してしまう。(これは全て自分の経験です)

SNSだから年齢なんて言わなきゃ分からない。世代で区切らず、ひとりの人として存在すればいいんだと今は考えている。

黙って始めちゃえばこっちのもんですよ

10000時間の法則というのがあって、なんでも習熟するには10000時間かかるらしい。

若い頃から絵を描いていると、確かに単純に時間数は多いだろう。年齢を重ねてから絵を始めるとそこらへんの積み重ねがないから不安になるのかもしれない。

ただ、若い頃のガムシャラでやみくもな何百時間は無駄なことも多い。

【結晶性知能】を生かして効率的に学べば、全然ひっくり返せないことじゃないと思う。

年齢を重ねてから絵を始めるなら、

  • 素直に上級者から教わるのがいちばんの近道
  • プライドは早めにポイすると自分がラク
  • 自分に何が足りないか分析しスケジューリングすると時間のハンデをくつがえせるかも

このあたりを意識するといやになりにくいのかもな、と思っている。

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